Project CBD is made possible by the support of our partners.

この記事は、デボラ・マルカ博士の著書『Medical Cannabis: Pearls for Clinical Practice』より、Taylor & Francis Group の出版社の一つである CRC Press の許諾を得て転載しています。Copyright © 2022, Deborah Malka MD PhD.

大麻は 19世紀から喘息の治療薬として使われており、喘息の患者にとって効果的な薬であることを示すと同時にそのリスクも指摘されてきました1。一般的に、喘息患者が喫煙することは勧められませんが、大麻の喫煙は思ったよりも害がないとうことがわかっています。

2006年に 1,200名を対象に行われた症例対照研究は、大麻を大量に喫煙しても、肺がんやその他の気道・消化器のがんの発症にはつながらないことを示しました2。このことは、その後『International Journal of Cancer』誌に掲載された論文によっても裏付けられています。この論文は、「我々が行った統合分析の結果からは、習慣的または長期的な大麻の喫煙ががんの発症リスク増大につながるというエビデンスはほとんど得られなかった」と結論しています3

科学的文献のレビューによれば、短期的な大麻の喫煙には気管支拡張作用があります。1970年代には、運動誘発性の喘息と肺の過拡張を逆転させることが示されています4。長期的な大麻の喫煙は閉塞性肺疾患を思わせる呼吸器症状の増加に関連があるとする初期の報告は、後に、その根拠がないことがわかっています5

大麻が急性喘息とアレルギー発作の一因である可能性を考慮することは重要です。大麻の使用が、喘息その他のアレルギー性疾患症状の発症と医療機関での受診患者の増加に関連していることを示す論文は複数あります6。ただしこれは喫煙という形での使用に限ったことであり、それ以外の摂取方法との関連は示されていません。

呼吸を楽にする

テトラヒドロカンナビノール(THC)は昔から、気管拡張に効果的であることが知られています。たとえば 1978年には、100〜200 μg(マイクログラム)という低用量の THC を吸入器で気化吸入するという実験が行われています。その結果、投与後約 60 分後に気管拡張効果が最大になり、少なくとも3時間は効果が持続すると同時に、肺機能の1秒量(FEV)は投与後6時間以上にわたって増加しました。7

大麻を大量に喫煙しても、肺がんやその他の気道・消化器のがんの発症にはつながりません。

大麻と喘息に関する研究のほとんどは、主に気管拡張作用にフォーカスしたものですが、中には同時に気管支炎症の軽減が報告されているものもあります89。カンナビノイドの抗炎症作用がよく知られたものであることを考えればこれは驚くにはあたりません。最近行われた大規模な調査によれば、大麻の喫煙は、1秒量と努力肺活量(FVC)を低減させることはなく、むしろ FVC の増加と関連していました。その原因は定かではありませんが、大麻には強い気管支拡張作用と抗炎症作用があるということが関係しているのかもしれません10

『British Journal of Pharmacology』誌に 2014年に掲載された論文は、この作用がエンドカンナビノイド・システムを介したものであることを立証しています。CB1 受容体が活性化すると気管支運動を阻害するのです11。また CB2 受容体は感覚神経を介して神経性炎症が起きる機序に関与していると考えられているため、大麻がアレルギー性喘息の治療に奏効する可能性があります。12

THCとCBD

THC とカンナビジオール(CBD)はともに、抗炎症作用と筋肉弛緩作用があります。ただし、CBD にはさまざまな健康効果があるにもかかわらず、CBD には気管支拡張作用はありません。動物を使って複数種のカンナビノイドが肺機能に与える作用を調べた実験では、大きな違いが見られました。たとえばテトラヒドロカンナビバリン(THCV)は、人為的に起こした気管収縮作用を阻害しましたが、CBD は阻害しませんでした。また THCCBD よりも鎮咳効果に優れていました。CBDTHC を組み合わせて摂ると、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺の膨張を軽減させ気管を拡げるのに役立つ可能性があると示唆する研究者もいます。13

THC は CBD よりも鎮咳効果に優れていました。

何であれ、気管支に疾患を持つ人にとって喫煙にはリスクが伴います。煙草の喫煙者と大麻の喫煙者を調べた調査では、大麻だけを喫煙する人は何も喫煙しない人と比べて COPD および呼吸器症状は増えませんが、煙草と大麻の両方を喫煙する人は何も喫煙しない人よりも COPD と呼吸器症状発症のリスクが高まりました。14

摂取方法としてベポライジング(気化吸入)の方が好ましいのは、有害な煙を肺に入れることなく、直接的に肺に治療効果を与えるからです。ベポライザーの使用に伴うリスクを特定しようと試みたいくつかの研究はどれも、何らかの健康効果を示しています15。1975年のある論文は、高用量(20 mg)の THC をネブライザーで吸入すると喘息患者にとっては有害な刺激になることを示しています16 が、逆に、気化された大麻が持つ強い気道機能増進作用は、進行した COPD の成人患者には無害だったとする研究もあります(ここでも高用量が投与されています)。また別の研究では、THC 含有量の高い大麻 35 mg を気化吸入したところ、進行した COPD 患者の気道機能、労作時の息切れ、運動に対する耐久力に対して治療効果も有害作用もありませんでした。17

COPD の症状のある患者では、大麻の気化吸入が息切れと運動パフォーマンスを改善させる可能性があります。この分野についてはさらに研究が行われるべきです。症状はあるものの進行度は低い COPD 患者を含む、より幅広い人口を対象としたより大規模な無作為化臨床試験が必要です。18

大麻にはまた、品種によってそれぞれ特定のテルペンが含まれており、カンナビノイドが持つ効果以外にも健康に有益な作用があります。たとえば α-ピネンは気管拡張に、また β-ミルセンは筋肉弛緩に役立ちます。適切なテルペンを含む大麻草の花穂を気化吸入することで、最も高い効果が得られるでしょう。

症例報告より

患者A:すでに医療大麻を1年間使用している 36歳男性の喘息患者は、「サティバ」系のハイブリッド品種を一日2回気化吸入することでアドエア(Advair)の摂取をやめることができたと報告しました。この患者はまだシングレア(Singulair)を毎日摂っており、たまにアルブテノールを吸入していました。アドエアより大麻を好むのは自然療法を支持しているからだそうです。大麻を使い始める1年前に煙草をやめているので、アドエアの必要性が低下したのは肺機能が改善したからかもしれません。テルペンの作用がより知られるようになったので、最後に診察に来たときに、α-ピネンを多く含有する品種を探すようアドバイスしました。

大事なこと:この患者がアドエアの使用をやめられたのは大麻がそれに取って代わったためと考える人がいるかもしれませんが、彼の症状が改善したのは煙草の喫煙をやめたためである可能性が高いでしょう。大麻の気化吸入がこの変化にどの程度寄与しているかは明らかではありません。ほとんどの喘息患者においては、少量の大麻を一日に2回気化吸入することが医薬品と同等の効果を発揮するというのは一般的ではありません。

患者B:重篤な喘息持ちであり、脊柱側彎症と成人発症型糖尿病によるひどい背部痛がある 72歳の女性患者で、大麻の使用は初めて。処方された薬は、喘息のためのシングレア、スピリーバ(Spiriva)、アルカプタ(Arcapta)、パルミコート(Pulmocort)、アルフォルモテロール酒石酸塩吸入液(Brovana)の他に糖尿病の治療薬も含まれましたが、鎮痛薬は処方されていませんでした。骨髄内注射をしても背部痛に効果はありませんでした。背骨の湾曲のため、過去5年間、歩くのには杖を必要とし、それが肩の痛みを引き起こしていました。この患者は CBDTHC の含有比が 1:1 のティンクチャーを毎晩、時折日中にも 10 mg ずつ摂取し始めたところ、摂っている薬に変化はありませんが、背部痛が軽減されました。彼女はこの用量を数年間摂取し続け、また関節の痛みには外部薬も使い始めました。喘息の薬には変化はありません。

大事なこと:この患者にはひどい疼痛がありましたが、すでに問題のある呼吸器への有害な作用があるオピオイド薬の使用は避けたがっていました。大麻は患者の進行した喘息に悪影響を与えることなく痛みを軽減させました。残念ながら喘息は改善しませんでしたが、大麻をこのように喫煙以外の方法で使うことで喘息の悪化も見られませんでした。

患者C:不眠症、高血圧、COPD に悩む 74歳の女性。医療大麻患者として過去数年間にわたって大麻を使用しています。煙草の喫煙者でしたが、5年前にやめています。スピリーバ、モメタゾン(Asmanex)、ネブライザーなど、複数の吸入器を使用していました。大麻のティンクチャーあるいはエディブル製品を、5 mg ずつ一日2回使用するようアドバイスしたところ、トラゾドン(Trazodone)とディオバン(Diovan)の使用をやめることができました。降圧剤は息苦しさの一因となるので、やめられて楽になったとのことです。

大事なこと:これは、COPD の患者に大麻草が役立つ一例です。COPD の患者の場合、肺の機能については大麻によるポジティブな効果もネガティブな効果もあまり期待できません。この患者は降圧剤と不眠症の薬をやめることはできましたが、COPD の薬は変わりませんでした。ただし、リラックスでき、睡眠が改善されたことで、生活の質は向上しました。

医療大麻を使った治療:まとめ

呼吸器疾患に対して大麻を使用する場合、その摂取方法は慎重に選ばなければなりません。ティンクチャーやエディブル製品には危険性はありませんが、そうした患者には、カビ、残留殺虫剤や残留溶剤がないことが証明されている大麻草全草を気化吸入することが最も効果的である可能性があります。稀ですが、主に喘息の治療のために大麻を使っているという患者には、α-ピネンの含有量が豊富な品種の花穂を気化吸入するようアドバイスします。実際にディスペンサリーで香りを嗅いで、松のような香りがするものを選んでください、と患者に言うのです。

肺疾患のある患者には、ディスペンサリーで花穂の香りを嗅いで松のような香りのするものを選ぶように言います。

ベープペンは避けるべきです——なぜなら、ベープペンに使われるオイルはテルペンが欠落しているものが多いですし、残留石油化学薬品を含まない製品ばかりではないからです。最近は、大麻や特定のテルペンを定量吸入できる新型の吸入器もあります。α-ピネンを含むものは気管拡張作用があるので喘息の治療には効果があります。一回の吸入で 6.5〜7 mg の THC と1〜2 mg のテルペンを摂取できる吸入器も販売されています。エアロゾル化された吸入器がより普及すれば、私はそれを喘息治療の第一選択肢とするでしょう。

大麻は、一般的には COPD の治療には使われませんが、COPD 患者に害を及ぼすことはなく、実は患者の努力肺活量が改善される可能性もあることを知っておくのは有用です。中には、大麻、とりわけ β-ミルセンを含む品種が持つ筋肉弛緩作用が、胸壁および横隔膜のけいれんを軽減させる場合もあります。通常は、気管拡張作用があるのは高 THC の大麻とされていますが、CBD を含む製品もまた、筋肉を弛緩させ炎症を軽減させる作用がアトピー性の呼吸器疾患に有用です。


デボラ・マルカ(Deborah Malka), MD, PhD は、米国統合ホリスティック医学会認定のホリスティック医師。自身のクリニックを開業する以前にコロンビア大学で人類遺伝学の博士号を取得し、伝統医学と自然療法の両方を修め、ニューメキシコ大学医学部とサンタフェ・カレッジ・オブ・ナチュラル・メディスンで学位を取得している。過去 15年間にわたって大麻による治療を専門とし、3万人以上の患者を治療している。

当サイトの著作権は Project CBD にあります。許可なく転載を禁じます。


参照文献

  1. Loflin M, Earleywine M. No smoke, no fire: what the initial literature suggests regarding vapourized cannabis and respiratory risk. Can J Respir Ther. 2015;51(1):7–9.
  2. Tashkin DP. Effects of marijuana smoking on the lung. Ann Am Thorac Soc. 2013;10(3):239–247.
  3. Zhang LR, Morgenstern H, Greenland S, et al. Cannabis smoking and lung cancer risk: pooled analysis in the International Lung Cancer Consortium. Int J Cancer. 2015;136(4): 894–903.
  4. Tashkin DP, Shapiro BJ, Lee YE, Harper CE. Effects of smoked marijuana in experimentally induced asthma. Am Rev Respir Dis. 1975;112(3):377–386.
  5. Tetrault JM, Crothers K, Moore BA, et al. Effects of marijuana smoking on pulmonary function and respiratory complications: a systematic review. Arch Intern Med. 2007;167:221–228.
  6. Chatkin JM, Zani-Silva L, Ferreira I, Zamel N. Cannabis-associated asthma and allergies. Clin Rev Allergy Immunol. 2019;56:196–206.
  7. Williams SJ, Hartley JP, Graham JD. Bronchodilator effect of delta1-tetrahydrocannabinol administered by aerosol of asthmatic patients. Thorax. 1976;31(6):720–723.
  8. Hartley JP, Nogrady SG, Seaton A. Bronchodilator effect of delta1-tetrahydrocannabinol. Br J Clin Pharmacol. 1978;5(6):523–525.
  9. Turcotte C, Blanchet M, Laviolette M, Flamand N. Impact of cannabis, cannabinoids, and endocannabinoids in the lungs. Front Pharmacol. 2016;7:317.
  10. Ribeiro L, Ind PW. Marijuana and the lung: hysteria or cause for concern? Breathe. 2018;14:196–205.
  11. Grassin-Delyle S, Naline E, Buenestado A, et al. Cannabinoids inhibit cholinergic contraction in human airways through prejunctional CB1 receptors. Br J Pharmacol. 2014;171:2767–2777.
  12. Bozkurt TE. Endocannabinoid system in the airways. Molecules. 2019;24(24):4626.
  13. Makwana R, Venkatasamy R, Spina D, Page C. The effect of phytocannabinoids on airway hyper-responsiveness, airway inflammation, and coughs. Pharmacol Exp Ther. 2015;353:169–180.
  14. Tan WC, Lo C, Jong A, et al. Marijuana and chronic obstructive lung disease: a population-based study. CMAJ. 2009;180(8):814–820.
  15. Loflin M, Earleywine M. No smoke, no fire: what the initial literature suggests regarding vapourized cannabis and respiratory risk. Can J Respir Ther. 2015;51(1):7–9.
  16. Tashkin DP, Shapiro BJ, Lee YE, Harper CE. Effects of smoked marijuana in experimentally induced asthma. Am Rev Respir Dis. 1975;112(3):377–386.
  17. Abdallah S, Smith BM, Ware MA, et al. Effect of vaporized cannabis on exertional breathlessness and exercise endurance in advanced chronic obstructive pulmonary disease. A randomized controlled trial. Ann Am Thorac Soc. 2018;15(10):1137–1138.
  18. Tashkin DP. Vaping cannabis and chronic obstructive pulmonary disease. Ann Am Thor Soc. 2018;15(10):1137–1145.