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大麻 はなぜ 1960年代にあれほどの人気となったのでしょうか。そして今、それ以上に人気があるのはなぜなのでしょうか?

かつて使用者は社会経済的な弱者に限られ、社会から疎まれたメキシコ人やアフリカ系アメリカ人が吸っていた違法な雑草。それが人種の垣根を飛び越え、白人の中産階級の若者の間で人気になったのは、俗に「60年代」と呼ばれる社会的騒乱の時代でした。

鋸歯状のマリファナの葉が抵抗のシンボルとなり、反権威主義的アイデンティティの象徴となった 1960年代、大麻は文化戦争の一勢力として初めてその姿を現し、その闘いは今も続いています。人々はすべてを疑い、アメリカを根本から揺さぶるほどの熱狂の中でさまざまなことが試されました。マリファナは、そうした「社会実験」に不可欠でした。

でも、なぜマリファナだったのでしょう? そして、なぜ 1960年代に?

1960年代半ば以降、大麻がこれほどまでに多くの人を惹きつけ続けるのか、その理由は一つではありません。どういうわけか、さんざん悪者にされたこの「ハーブ」は、矛盾に満ちた世界で「不条理な大人になる」ことに抵抗した若いアメリカ人のニーズに応えたのです。

トラウマな出来事

1962年の秋、冷戦下の米国と敵国ソビエト連邦のにらみ合いに世界は固唾を呑みました。歴史家のアーサー・シュレシンジャーは、キューバ危機は史上最も危険な瞬間だったと後述しています。これがきっかけとなって核戦争が勃発し、人類の絶滅を引き起こす可能性があったのです。何もかもが、自滅的でまったくばかげた状況のように見えましたが、この「相互確証破壊」という考え方のおぞましい不合理性こそが、現代社会における超大国としての信頼性を生んでいました。こうした不安に満ちた時代に成人した人々は、「失われた世代」であっただけでなく、「最後の世代」になったかもしれなかったのです。

ジョン・ケネディ大統領は、キューバのミサイル危機の13か月後に暗殺されました。これらの衝撃的な出来事はこの国の精神状態に深い傷を残しました。 ケネディー暗殺後1年以内に、トラウマ的な記憶の抹消を助けるハーブ、マリファナが、アメリカで最も優秀な大学生を含む白人中産階級の若者の間で飛躍的に人気を博したのは、偶然ではありません。そして、いったん外に出てしまったランプの魔人を元に戻す方法などありませんでした。

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腹黒い麻薬の売人や社会規範から逸脱した若者が登場する、人を怖がらせるのが目的の作り話は巷に溢れていましたが、運命的とも言える初めてのマリファナ体験は若者の破滅を引き起こしはしませんでしたし、若者たちを哀れな麻薬中毒者や精神異常者、カウチポテトに変えたりもしませんでした。多くの場合、マリファナは彼らをリラックスさせ、笑わせ、食欲を刺激したのです。そして、それはまた彼らの猜疑心に火を点けました—「政府の役人がマリファナについて嘘を言っているということは、他にも何か嘘をついているのでは? マリファナ禁止が露骨な虚偽に基づいているなら、他の政策も同様に、恣意的で気まぐれで根拠がないのでは?」

当然のことながら、1960年代半ばのマリファナ喫煙者は往々にして、反体制的な姿勢を持っていました。政治全般に対する疑問が生じたのはマリファナの化学組成のせいではなく、反論の余地のない自分の実体験と、ニッケルバッグ(5ドル相当の大麻をいれた袋)を所持しただけで5年の刑期を義務付ける連邦法に代表される、政府による狂気じみた反マリファナ神話との間の隔たりのせいでした。

「ポット」にとって極めて重要な年

マリファナが「禁じられた物質」であることは、その魅力の一部でもありました。でもそれだけでは、マリファナの人気が 1964年以来衰えていない理由は説明できません。1964年とは、アメリカの白人たちが「ポット」を初めて知り、「マリファナ」 という言葉が一般的になった年です。この予想外の展開は、「クスリが郊外を侵食」とか「大学のドラッグ風景」 といった見出しの当時のニュース記事に表れています。雑誌が「薬物乱用」と呼んだのは、ほぼ例外なく、若者がマリファナを吸ったという意味でした。

1964年はまた、リンドン・ジョンソン大統領の「麻薬および薬物乱用に関する諮問委員会」がアメリカ国内の「気分を変容させる薬」についての報告書を発表した年でもありました。委員会は、「精神を変容させる薬を一切服用しない、というのは、最も稀で最も異常な行動である。ほとんどの成人アメリカ人は薬物の使用者であり、多くの人は多種多様な薬物を頻繁に使用している」と述べています。

医師は日常的に、バリウム、クロルジアゼポキシド、メプロバメート、およびその他の依存性の高い催眠薬や鎮静剤(俗語では「ドール」と呼ばれます)や、ママとパパが一日の生活をこなし、夜眠りにつくのを助けるための、 アッパー系の薬やダイエットピルを処方していました。これらの薬はしばしば誤用されましたし、アルコールの飲みすぎはさらにありふれた風景でした。

第二次世界大戦後のベビーブーマー世代は、大挙してマリファナを喫煙した最初の世代です。 1960年代には、マリファナを薬として考えている人はほとんどいませんでした。けれども、論争の的であるマリファナは、この激動の10年間、誰も知らない間にその癒やしの効果を発揮していたのかもしれません。

思春期の不安

60年代の若者にとって大麻は、猫にとってのマタタビのようなものでした。よく理解されていたわけではありませんが、 それでもマリファナは、漠然と存在する不安感や、現代生活の狂気じみた複雑さの中で生きるのを助けてくれるハーブとして効果があったのです。 ベトナム戦争中アメリカ陸軍衛生隊の隊長として従軍し、退役後、青年期のマリファナ使用開始とその後の使用パターンについて研究したトム・オコネル(Tom O’Connell)博士は、「青年期の不安症状を自己治療する必要性は、単純な若々しい快楽主義よりもはるかに重要です」と述べています。

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オコーネル博士によれば、薬物の反復摂取は通常、単なる娯楽よりも深刻な目的を伴います。博士は、若者たちがマリファナを受け入れたのは、「抗不安薬、気分安定薬、抗うつ薬などを大手製薬会社の稼ぎ頭にした」のと同じ感情的な問題を緩和させるためだったと主張します。

マリファナはベビーブーマー層によって、安全で効果的で医師の監督なく使える抗不安薬として利用されていましたが、目的のためには手段を選ばない大統領が始めた、虚偽だらけで大失敗の麻薬撲滅戦争における論点の核となりました。1970年代初頭にリチャード・ニクソンが発動した麻薬撲滅戦争は、ロナルド・レーガンと、彼とともに大統領執務室を引き継いだ者の手でますます熾烈になり、拡がっていきます。

皮肉なことにレーガン大統領は、1980年代に麻薬撲滅戦争を拡大し軍を介入させたことで、大麻が持つ医療効果の科学的根拠に意図せず光を当てることとなりました。レーガン政権は、数千万ドルを研究に注ぎ、マリファナが脳にダメージを与えることを証明しようとします。ところが、レーガン政権の出資で行われた一連の実験は、マリファナが脳の損傷を引き起こしたことを示すのではなく、大麻成分によって活性化されるとむしろ脳を保護しストレスを緩和する「エンドカンナビノイド・システム」の発見につながったのです。

この重要な科学的ブレークスルーは、医学のほぼすべての領域に大きな影響を与えるものです。それは人間の生物学的理解に新たな展望を開き、大麻がなぜこれほど多面的な薬草であるのか、そしてなぜそれが地球上で最も人気のある違法物質なのかを理解するのに大きく役立ちました。

ストレスの緩衝材

1960年代、緊張した10代の若者と不安な大人に好まれた、抗不安薬としてのマリファナ。その出現と長く続く人気の理由は、脳や全身に存在し、私たちのストレス適応能力を調節する受容体をマリファナがいかに「オンにする」かを明らかにした研究を見れば理解できます。細胞レベルで言うとストレスとは、身体に何らかの生理的要求が生じるあらゆる刺激に対する身体反応です。人がストレスを感じると、脳はコルチゾールやその他のステロイドホルモンを産生し、それが、脳と身体から天然のマリファナ様化合物を分泌させます。これらの内因性「カンナビノイド」は細胞受容体に結合し、ストレスホルモンの産生を阻害することによって生理学的ホメオスタシスを回復します。ハーブのアダプトゲンであるマリファナも、基本的にこれと同じことを行います。適度に摂取すれば、過活動の神経を落ち着かせ、筋肉をリラックスさせ、血圧を下げ、急性および心的外傷後のストレスを和らげことができるのです。

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日常生活においてストレスは避けられません。生来身体に備わるストレス反応(「闘争・闘争反応」)の活性化は、 生死に関わる緊急事態に対応するためには不可欠ですが、ストレスが多すぎると、病気に罹りやすくなり、長期的には身体にダメージを与えかねません。慢性的にストレスの高い状態でいることは、不安を高め、アルツハイマー型認知症の進行を早めます。感情的なストレスはがんの増殖を加速することもわかっています。ストレスは、脂肪や他の栄養素の消化のしかたにも影響を与えます。

ベビーブーマーに当てはまることは、ミレニアル世代や、その中間のすべての人々にも当てはまります。私たちは、有害なジャンクフード、電磁放射線、情報過多、および規制されていない何万種類もの化学汚染物質など、かつてなかったほどにさまざまな、身体を衰弱させるストレス要因の攻撃に晒されており、それらは代謝と心理的発達に甚大な被害を及ぼします。生き馬の目を抜くような競争のストレス、こじれた人間関係のストレス、極端な経済格差のストレス、終わらない戦争のストレス、 悪政によるストレス、環境破壊のストレスもあります。その累積的な影響は、糖尿病、自閉症、ADHD、高血圧、うつ病の蔓延に表れています。

何百万人もが喫煙を楽しむ「小さな花」、マリファナは、現代世界に暮らす人々がストレスに対処するのを助けてくれているのです。


Martin A. Lee は Project CBD のディレクターであり、『Smoke Signals: A Social History of Marijuana – Medical, Recreational and Scientific』の著者。処女作『Acid Dreams: The Complete Social History of LSD – the CIA, the Sixties and Beyond』は最近オーディオブックとして発売された。


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