巷にはヘンプ由来 CBD の製品が溢れています — ヘルスフードの店、ガソリンスタンド、薬局、大麻用器具の店、美容室….. どこもかしこも CBD 製品を売っています。2018年の農業法改定によって、CBD は、それがいわゆる「マリファナ」ではなく「ヘンプ」から抽出されたものであれば、全米で合法化されています。ヘンプの法的な定義とは、昔からネガティブなイメージを植え付けられてきた「ハイになる」成分、テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が 0.3% 以下である大麻草のことです。
ただし、それがたとえヘンプの中でも一番ヘンプな品種 — 昔はよく「ドープじゃなくてロープ」用のヘンプなどと呼んだものですが — であっても、ごく微量とは言えいくらかの THC を含んでいるのが一般的です。では、ヘンプから抽出された THC はその後どうなるのでしょうか? CBD しか含まない製品が存在するということは、製品に使われなかった THC が廃棄物として残る、ということです。
ヘンプの原材料から抽出されたオイルは、さらに精製されて CBD 製品の成分として使われます。多くの CBD 製品企業は、精神作用のある THC をまったく含まない製品の販売を選び、THC の含有を避けています。つまり、フルスペクトラム・オイルから THC を除去して、主成分の CBD とヘンプに含まれるその他の成分は含むけれども THC は含まない「ブロード・スペクトラム」のディスティレートを作るのです。あるいは、ヘンプから抽出されたオイルの中から CBD のみを分離し、純粋な CBD のアイソレートを作る場合もあります。
いずれにしても、製品に使われずに余った THC が、廃棄物として残るわけです。
あるマサチューセッツ州の製造会社は、この余った THC を、原材料のヘンプの供給元に送り返そうとしましたが、州境を超えて THC を輸送することは法律で禁じられていることがわかりました。
THC という有害廃棄物
Project CBD は、コロラド州にある CBD オイルの製造会社 Panacea Life Sciences に、残った THC をどのように処理しているのか尋ねました。「違法薬物だから、使いようがないんですよ」と Panacea の管理担当ネイサン・バーマンは言います。「だから廃棄物を回収して廃棄処理してくれる会社と契約しています」
コロラド州の大手 CBD 抽出会社で、法律論争の只中にいる Folium Biosciences からは、もう少し詳しい情報が得られました。コロラドスプリングスにあるこの会社のマーケティング・ディレクター、リズ・ウィルキンソンは、「契約している有害物を扱う会社が毎週金曜日に来て、THC を回収し、ある化学薬品と混ぜて、THC とはまったく違う、基本的に使い物にならないものに変えるんです。それを他所に運んで廃棄してくれます」と言います。
その有害廃棄物処理会社の名前は? と訊くと、「認定された有害廃棄物処理会社です。守秘義務契約を結んでいるので名前は言えません」ということでした。
THC と混ぜる化学薬品とは、ブタンガスやヘキサンに似た可燃性の炭化水素であるペンタンではないか、と Panacea は言います。
コロラド州では嗜好大麻が合法で、きちんと管理された成人用の嗜好大麻市場があるというのは皮肉なことです。でも、コロラド州を含む合法州のほとんどでは、ヘンプ由来の CBD 製品と嗜好用大麻の間には厳しい境界線が引かれています。つまり、ヘンプ由来の THC「廃棄物」を、嗜好大麻市場に持ち込むことはできないのです。
オレゴン州の例外
オレゴン州には一部例外が設けられていて、濃度5%までの THC「廃棄物」に限り、Oregon Liquor Control Commission (OLCC) の管理のもとで合法大麻市場に販売して良いことになっています。これは 2018年、オレゴン州法 Health Bill 4089 で認められました。
特別に THC に対する感受性が強い人ならそれだけでハイになることもあるかもしれませんが、5%というのは大した含有量ではありません。でも、「フルスペクトラム」の製品から得られる、より高い治療効果が期待できる「アントラージュ効果」を求める人は、CBD 製品に THC を組み合わせることが可能です。そしてオレゴン州では、こうやってさまざまな比率で CBDと THC を組み合わせた製品が、認可されたディスペンサリーで販売されています。
「5%という上限が引き上げられることを願っている人は多いです。もっとも、OLCC が管轄する大麻市場では栽培できる大麻草の数に上限が設けられていますが、ヘンプにはそれがありませんけどね」。ポートランドにある法律事務所 EARTH Law でヘンプと大麻を専門に扱う弁護士、コートニー・モランは言います。
つまりオレゴン州でさえ、限られた例外があるだけで、ヘンプ産業と大麻産業は法律で隔てられているのです。
けれどもここで、避けようのない問いが浮かび上がります。THC「廃棄物」の一部が合法大麻市場や闇市場に非合法的に流れることはないのでしょうか?
法に隠れて
大麻業界の関係者の中には、何かがおかしい、と感じている人もいます。シアトルに住み、CBD製品の製造のほか高 CBD 品種のシードバンクを構築している LeBlanc CNE のジェリー・ホワイティングもその一人です。
「THC の流入のしかたは2つあります」とホワイティングは言います。「一つは、ヘンプ栽培のライセンスを使って本当はヘンプとは呼べない大麻品種を栽培している場合。検査官は基準を満たさないので作物を燃やせ、と言いますが、それを現場で確認するわけではありませんから、作物は闇市場に流れます。二つ目は、CBD アイソレートまたはディスティレートを作る場合。抽出会社の中には、残った材料をビジネスにするところがあります。表の入口があれば、裏の出口がある。CBD を抽出する技術のある化学者なら、THC だって抽出できるわけですから」
つまり、CBD 抽出後に残った材料から THC を分離して売れば儲かるのです — 非合法ですが。
「廃棄されずに残るものはありますよ」とホワイティングは言います。「そして非合法のベープ市場に流れるんです。THC のかさ増しのためにビタミンEを混ぜることもある、製造できるカートリッジを 20個、30個増やすためにね」
ビタミンEアセテートは、全米で 60人以上の死者を出した、ベーピングと関連した肺疾患を引き起こした原因であるとされる混ぜ物の一つです。これは単にビタミンEをオイルにしたもので、経口摂取したり皮膚に塗ったりするのは完全に合法ですし、むしろ体に良いものですが、疾病管理予防センターによれば、加熱して吸入すると危険です。
管理の制度に不備があるために、無責任な業者によって THC が不法に転用されるのは避けられない結果である、とホワイティングは考えています。「栽培したものや実験室で作ったものは、それが合法だろうが違法だろうが買い手がつく。記録に残らない売買だから税金もかからない。そうやって完結した裏のエコシステムが存在するんですよ」
誰でもわかる解決方法
Project CBD が ヘンプ由来 CBD 業界のさまざまな関係者に、使われずに残った THC はどうするのか、と尋ねると、実にさまざまな曖昧な返答が返ってきました。興味深い噂もいくつか耳にしました。
たとえばテネシー州のある会社は、こうした違法な THC が、精神作用が少なく鎮静作用があるとされるカンナビノール(CBN)に変換されることがある、と仄めかしました。大麻草は古くなると THC が CBN に分解されて効力が弱まりますが、中には、睡眠を助けると謳う製品に CBN を加えたがる企業もあるのです。
このような不正行為が起こるのは、11州 [訳注:2020年 2月時点] とワシントンDC 以外では嗜好大麻が未だに非合法であることが動機となっていることを忘れてはなりません。連邦レベルで大麻が合法化され、州をまたいだ取引制度が整備されない限り、THC を横流ししたいという誘惑はなくならないでしょう。
ビル・ワインバーグ(Bill Weinberg)は、人権問題、環境、薬物政策の分野で30年の実績と受賞歴を持つジャーナリスト。High Times 誌のニュースエディターを務めたこともあり、現在は CounterVortex.org と Global Ganja Report というウェブサイトを運営している。
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