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医療大麻に関しては、日本は遅れています。

とても、とても遅れています。現在日本では医療大麻は使えません。ただし、法の抜け穴をくぐって日本に根を下ろし、急速に市場が拡大中のヘンプ由来 CBD 製品によって健康が改善されている人たちは存在します。

日本と大麻

日本における大麻利用の歴史は実は大変古く、その始まりは縄文時代(紀元前 10,000〜300 年)にさかのぼります。縄文時代の住居の遺跡から、大麻草の繊維と種が出土しているのです。

歴史を通じて日本では大麻が広く栽培され、生活の中で重要な役割を果たしていました。繊維で衣服をつくり、縄を編んでさまざまに使い、紙を漉き、種を食べ、油を搾ったのです。麻の畑は全国に広がっていました。

実用的な用途だけではありません。日本の土着宗教である神道においては、麻は神聖な植物とされ、現在に至るまで、さまざまな儀式に麻が用いられています。

大麻は薬としても珍重されていました。薬局方に収蔵され、喘息の治療、痛み止め、睡眠を助けるなどの目的で処方されていたのです。大麻チンキ(ティンクチャー)や大麻煙草は広告が新聞に掲載されていました。

押し付けられた無知

第二次世界大戦で日本が敗戦国になるとそれが一変しました。勝った国アメリカが日本に、麻薬規制の一環として大麻草の全面禁止を強要しようとたのです。日本の麻農家たち——戦前には数万人いたと言われています——はこれに抗議し、日本政府が進駐軍と交渉した結果、大麻は麻薬取締法とは別の法律で規制され、また成熟した茎と種子は規制から外れることになりました。こうして 1948年に制定された大麻取締法が、以来 75年近くにわたって、一度も改訂されることなく日本における大麻使用を厳しく禁じてきたのです。

考えてもみてください。1948年の時点で、人をハイにするのは THC であるということを知っている人は世界中に一人もいませんでした。人間の体内にエンドカンナビノイド・システムがあることも誰も知りませんでした。大麻がなぜ、どのようにしてさまざまな疾患に医療効果を発揮するのか、その科学的根拠を知っている人はいなかったのです。

現在では、多くのことが科学的に解明されています。ところが、科学は進歩したにもかかわらず、私たちの考え方は進歩しませんでした。大麻取締法という強制された法律に、良かれ悪しかれ従順で権威を重んずる私たち日本人は、従い続けてきたのです。

ゆっくりと近づく変化の足音

でも、70年以上が経った今、私たちの我慢も限界に近づきつつあります。「世界のどこか、よそで」起こる大麻規制法の改訂や大麻に関する科学的新発見のニュースが、インターネットを通じて毎日のように届きます。今や地球は小さくなり、情報はたちまち伝わるのです。

2013年、ヘンプ由来 CBD 製品がポツポツと日本に輸入され始めました。大麻取締法の抜け道のおかげで、その製品が成熟したヘンプの茎から作られたものであると製造会社が宣誓し、THC が検出されない限り、CBD 製品は合法的に輸入し、使用することが可能です。この不条理な条件にもかかわらず、日本の CBD 市場は拡大を続け、ことに 2019 年以降は年々勢いを増して、新しい消費者を市場に呼び込んでいます。そしてその中には子どもも含まれます。

たとえば、2017年に医師・正高佑志と私とで創設した医療大麻啓発団体 Green Zone Japan は、大田原症候群を患う生後6か月の男の子が日本市場で手に入る CBD 製品を摂るお手伝いをしたことがあります。ニューヨーク大学のオリン・デヴィンスキー博士による著名な臨床試験の結果に基づき、治療効果が期待できる用量を摂取したところ、その子の発作はピタリと止まりました

この結果は、てんかんの子どもを持つ親たちやその主治医に関心と希望を与え、これがきっかけとなって起こった一連の動きが、2019年 3月、厚生労働省による国会での「大麻由来医薬品の臨床試験を認める」という答弁につながったのです。

臨床試験の被験薬となるのは、イギリスの GW 製薬が製造する CBD 製剤、エピディオレックスです。難治性小児てんかんの治療薬として、アメリカを含む多くの国で医薬品として承認されています。

臨床試験の実施のために設立された GW 製薬の日本法人は、臨床試験の許可を申請し、厚生労働省の許可を得ていますが、臨床試験はまだ開始されていません。

たしかにこれは、エピディオレックスという CBD アイソレートの臨床試験にすぎませんし、適応疾患と目されるのは現時点では難治性てんかんのみです。とは言え、大麻由来の物質に医療効果がある可能性を政府が認めたというのは、日本における医療大麻合法化にとっては大きな初めの一歩です。

日本の医療大麻の未来

では日本の医療大麻はここからどこに向かうのでしょう?

2021年 1月、厚生労働省は大麻取締法改正に向けた見直しの計画を発表しました。これは予想されたことではありました——なぜなら、エピディオレックスの臨床試験がうまくいけば、医療行為を含むあらゆる目的での大麻の使用を禁じる現行の大麻取締法は改正が必要だからです。そのために 12名のメンバーで組織された有識者会議は、8回の会合を経て報告書をまとめ、改訂を検討すべきいくつかの点を明らかにしました。その一つが大麻の医療利用の認可です。大麻取締法の改正は、2023年の通常国会で審議されるものと予想されています。

大麻草全草が、日本人にとってすでに馴染み深い「生薬」の枠組みの中で使えるようになって然るべきです。

良いニュースに聞こえます。でも、ことはそれほど単純ではありません。そもそも、「医療大麻」という言葉が何を指すかは人によって大きなばらつきがありますし、政府が何をもって「大麻の医療利用」と考えているかも定かではありません。

大麻を違法に(嗜好目的および医療目的で)使用している人の数が極めて少ない(2021年の大麻関連逮捕件数はわずか 5,400 を上回る程度 [訳注:アメリカの大麻関連逮捕件数はこの 100倍規模])日本では、医療大麻に関するさまざまな誤解が存在します。大麻を医療目的で使用する、という概念をそもそも理解できない人もいます。アメリカでは 37州で医療大麻が合法であると聞くと、それはすなわち医師が病院で大麻を患者に処方するというこだと勘違いする人も多いですし、医療大麻とはエピディオレックスのように医薬品と認められた製剤だけを意味すると思っている人もいます。さらに、日本人の多くは、アメリカの各州政府が運営する「医療大麻制度」と、政府による監督が行われていないヘンプ由来 CBD 製品市場の違いを知りません。

まずそのあたりの整理をして初めて、日本における医療大麻の未来をどのようなものにするべきか、という建設的な議論が可能になるでしょう。たとえば、大麻由来の医薬品に加えて、大麻草全草が、日本人にとってすでに馴染み深い「生薬」の枠組みの中で使えるようになれば素晴らしい、と私は思います。そしてそのためには、法律が変わらなければなりません。

日本にきちんとした医療大麻制度ができるまで、その道程は長いでしょう。でも私たちは今、その一歩目を踏み出そうとしています。


三木直子は書籍翻訳家であり、また大麻に関する科学的エビデンスに基づいた最新情報を日本の医療従事者及び一般の人々に伝える非営利型一般社団法人 Green Zone Japan の共同創設者。Project CBD の日本語版のための翻訳も担当している。


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