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ほんの数年前まで、手に入る大麻成分入りの塗り薬やスキンケア製品と言えば、誰かがキッチンで手作りした、油っぽくて緑色のドロッとしたもので、ボングの水のような怪しい匂いがしたものでした。2019年の今、もうそんなことはありません。

170億ドル市場とされる現在の「高級化粧品」業界では、カンナビスを調合したスキンケア製品が、カタツムリ粘液の流行以降最も熱いトレンドとなっています。そして、そんな中でもてはやされ、大人気なのが、陶酔作用のないカンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)です。ロレアルやグープなどの一流企業の重役が高給の職を辞し、カンナビス・スキンケアのスタートアップ企業と手を組んでいるのはCBDがあるからです。

CBDは、2018年の農業法が可決されてヘンプが規制物質法の対象から除外され、Cannabis Sativaという植物の中でテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が少ない(0.3%以下)ものの栽培・製造・流通が合法化されると、突如として起業家たちの注目の的となりました。最近では、CBDを調合に加えたスキンケア製品が巷に溢れ、ヴォーグ、ヴァニティ・フェアフォーブスなどもさかんにCBDを褒めそやしています。グウィネス・パルトローやマーサ・スチュアートも大のCBDファンです。ボブ・マーリィの娘が自分のカンナビス入りスキンケア製品ブランドを持っているのは驚くにあたりませんが、アマゾンや、セフォラ、CVS、ウォルマートなどの店頭でも、CBD入りの化粧水、マッサージオイル、リップクリームなどを買うことができます。

製造者、販売業者、投資家は、こぞってこのCBDブームにあやかろうとしていますが、食品医薬品局(FDA)は躊躇し、急激に高まるCBD人気にどう対処すればよいのか検討中です。法規制の不透明さや、経口摂取するサプリとしてのCBDにFDAが前向きでないことを考えると、CBD市場に新たに参入しようとする人にとって、肌に塗るものの方が安全と言えます。FDAは、CBD入りの食品や飲料と比べ、CBD入りの局所薬(トピカル)についてはその安全性に対する懸念がはるかに低いようです。全般的に言って、化粧品やデオドラント製品に関するFDAの規制は恥ずかしいほど手ぬるく、発がん物質、環境ホルモン、その他公衆衛生にとって重大な脅威となる有害物質が広く使われています。

ですから、CBD入りの乳液や入浴剤を購入する前に、ラベルに表記された原材料リストをしっかり確認することが大切です。単にCBDが入っているからと言って、それが必ず高品質な製品であると思ってはいけません。

巧妙な広告キャンペーンがCBDを肌にとっての奇跡の成分と呼び、その医療効果が痛みを緩和し、吹き出物を抑え、ニキビをなくすと謳っています。一番魅力的な(そして儲かる)CBDの謳い文句は、肌の老化を防ぎ美しくする、というものです。でも、こうした大げさな広告を裏付けるものはあるのでしょうか? CBDは本当に、肌を護り、癒やし、若返らせることができるのでしょうか?

皮膚という10キロの臓器

人間の皮膚は非常に複雑で数々の機能を持つ、体を外界から護る防護壁です。また、人間の臓器の中で一番重く、体重の約7分の1、平均すると3.5キロから10キロの間で、表面積は1.6平方メートルほどあります。

皮膚には3つの層があります。一番外側の層は表皮と呼ばれ、常に生まれ変わり続けるケラチノサイト(角質細胞)でできていて、強固かつ柔軟性があります。いわば要塞の壁のようなもので、体を外からの攻撃——日焼けや刺激物、侵入してくる病原菌、虫刺され、やけど、刺し傷、切り傷、擦り傷、その他さまざまな外傷から護ります。

表皮の下には、複雑に絡まりあった神経と毛細血管を包む真皮があります。体の感覚細胞(圧力、熱さ、冷たさ、接触、振動、痛みなどを感知する細胞)のほとんどや、汗腺、毛根、皮脂腺もここにあります。真皮はまた、表皮を支え、若々しくて弾力のある肌を作る、コラーゲンとエラスチンが産生されるところでもあります。若さを保たなければいけない、という人々の強迫観念につけこんで、かつては輝くようだった肌の見た目を取り戻すと謳う、人をたぶらかすような広告に、高齢者は特に弱いものです。

さらにその下に、皮膚と体を結びつける皮下組織があります。主に脂質、結合組織、水からできていて、気温の上下から体を護り、骨や関節の緩衝材となります。ビタミンDその他、重要なホルモンは皮下組織で産生されます。

これら3つの層にあるさまざまな細胞は、互いに繋がり合い、繊細なバランスを保つ複雑な神経・免疫・内分泌のネットワークとしてともに働いています。このネットワークを調節しているのがエンドカンナビノイド・システム(ECS)です。エンドカンナビノイド・システムに含まれる内因性化合物は、すべての種類の皮膚細胞に発現しているカンナビノイド受容体(CB1とCB2)と結合し、ECS皮膚カンナビノイド信号伝達と呼ばれる恒常性維持作用を発揮します。これにより、健全な皮膚の再生と保護機能が促進されます。

皮膚の守り手

ECSはさまざまな生理機能を調節していますが、その中に細胞アポトーシス(細胞死)も含まれています。これは、古くなったり傷ついたりした細胞を体が排除し、新しい細胞と入れ替えるプロセスです。カンナビノイド受容体の信号伝達は、過剰な皮膚細胞の産生を遅らせ(それによってがんの発生の危険性を低減させ)、皮膚の感覚神経を沈静化させて痛みや炎症を抑えます。

ECSはまた、炎症性のサイトカインとケモカイン(免疫活性に関与する体内のタンパク質)の活性を調節し、皮膚の免疫反応を調節するT細胞の一種である制御性T細胞(Tレグ細胞)の働きを維持するのを助けます。

ハンガリーの科学者、タマス・バイロ(Tamas Biro)は、ECSが皮脂の産生に影響を与え、皮膚の防水壁を保持するために皮脂を増やしたり、ニキビを防ぐために皮脂を減らしたりするということを実証しました。

Experimental Dermatology』誌に最近掲載されたドイツの研究者の論文は、「カンナビノイド信号伝達の繊細なバランスが崩れると、アトピー性皮膚炎、刺激性・アレルギー性接触皮膚炎、ニキビ、脂漏症、乾癬、かゆみ、痛み、育毛障害、全身性硬化症、がんなど、さまざまな皮膚疾患を引き起こす可能性がある」と述べています。

論文にはさらに、肌の保護作用に異常が起こると傷が治るのが遅くなることがあり、「CB1およびCB2受容体が減少するとアレルギー性接触炎症が増進し、カンナビノイド受容体を活性化させると炎症が軽減した」とあります。

こうした基礎研究の結果を踏まえ、論文では、内因性カンナビノイドの分解を遅らせ(したがってその作用をより長く継続させ)、CB1およびCB2受容体を活性化させるような薬理学的な介入を行うことが、皮膚疾患の治療として可能なのでないかと示唆しています。

健康なお肌の敵

CBDの経皮吸収率は、THCの10倍です。

肌の見た目に最もネガティブな影響を与えるのは、長い年月をかけて蓄積される皮膚細胞のダメージです。たとえばシワや肌荒れはともに、日光に当たりすぎたり、飲酒、喫煙、食生活の貧しさなど、生活環境やライフスタイルが原因となることがあります。こうした後成的な要素に加え、熟年女性の肌にありがちな乾燥は、閉経後にホルモンの分泌が減少することと関連しています。こうした要素のすべてが、細胞のDNAの生物学的変化の原因となり、それが今度は、皮膚や体全体の遺伝子の機能や発現が変化するDNAのメチル化を引き起こすのです。

認めたくはありませんが、私たちの体は、歳を取るにつれて何もかもが遅くなり、効率も悪くります。私たちの肌が持っている、新しい細胞を作る能力も同じことです—日焼け止めも塗らずにビキニで毎夏を過ごしていた若い頃には当たり前のものと思っていた、健康な若々しい肌を作る能力が衰えるのです。

歳を取るにつれて、私たちの細胞機能は乱れ始めます。それが顔に表れるようになると本当にハッとします。加齢が体に及ぼす無慈悲な損害を指す科学用語さえあります—「炎症性老化」というのです。これは、高齢化に伴う、軽い炎症が継続的に起きている状態です。『Cosmetics』誌に2019年に掲載された記事には、さまざまな肌のトラブルをそうした炎症と関連付け、自然な抗炎症化合物が効くかもしれない、と書かれています。

歳を取れば避けようのない肌の衰えを遅らせようとして、とんでもないことをする人もいます。でも、顔にレーザーを当てたり、微小なポリメタクリル酸メチルの粒を注入したり、ダイヤモンド型のクリスタルで研磨したりする前に、皮膚の機能を蘇らせる、それ以外の選択肢を考えてみてください。

もしかしたら、あなたが試せるボトル入りの希望があるかもしれません——大麻のおかげで。

CBDアイソレートかCBDオイルか

大麻草の成分を滲出させたスキンケア製品には長い歴史があります。スペインのコルドバ大学で免疫学の教鞭を執るエドアルド・ムニョス(Eduardo Muñoz)博士によれば、大麻から作る局所薬は、古代中国、エジプト、アラブ世界でさまざまな皮膚疾患の治療に使われていました。かつてアメリカや英国の女性たちが肌を美しくするために行っていた怪しげなこと、たとえばヒ素錠を飲んだり鉛を含有した塗料を顔に塗ったり、といった行為と違って、大麻入りの局所薬にはこれといった副作用がありません。

純粋なCBDは、基礎研究の皮膚炎モデルにおいて、抗炎症作用を示しています。でも、単一分子のCBDの効能は、CBD以外にも何百という大麻成分を含むフルスペクトラムの高CBDオイルと比べてどうなのでしょう?

イタリアのフィトセラピー・リサーチ(Phytotherapy Research)社が2019年に行った動物実験の結果は、大麻オイルの方が純粋なCBDよりも強い抗炎症作用を発揮し、CBD以外の成分が皮膚の炎症の誘因を阻害することを示しています。この研究チームは、大麻オイルは創傷治癒と皮膚炎に関与する複数の遺伝子の働きを抑制するが、CBDアイソレートの作用にはこれと同じ分子機序はない、と結論しました。

CBDは炎症を鎮めるわけですから、局所用のスキンケア製品の成分として有用である可能性は大いに考えられます。でもCBDは本当に、効果が現れるほど深くまで人間の皮膚に浸透するのでしょうか? ケンタッキー大学の研究者が最近行った動物実験の結果は、それが可能であることを示唆しています。

『European Journal of Pain』誌に掲載されたこの論文は、CBDを含有するジェルが、関節炎の動物モデルにおいて疼痛と炎症を大幅に軽減したと述べています。さらに、CBDはTHCよりもずっと浸透しやすいようです。『Journal of Pharmacy and Pharmacology』誌に2004年に掲載された論文によれば、CBD の経皮吸収率は THC の10倍です。(Δ9THC の吸収率は Δ8THC の吸収率と近似していました。)

そのフェイスクリームに100ドルの価値はあるか

ではCBD入りのスキンケア製品を買うべきでしょうか? 場合によります。豪華なラベルと高い値段の製品が、必ずしも謳い文句通りの効果を発揮するとは限りません。CBD製品は未だにFDAによって管理されておらず、『ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(Journal of the American Medical Association、JAMA)』誌のレポートによれば、調査対象となったCBD製品の多くは、ラベルに表示されたよりも少ないCBDしか含まれていませんでした。

CBD以外の原材料も大きく影響します。CBD入りスキンケア製品には、CBDTHC、その他大麻から抽出されるすべてのカンナビノイド、脂肪酸、テルペンなどを含むフルスペクトラムの大麻オイルが使われているものがあります。それらの成分が相乗的に働いて生まれるアントラージュ効果による効能は、CBD単独のものよりも高いのです。別の軟膏には、THCを除くブロードスペクトラムの大麻オイルが入っているかもしれません。あるいは、それよりも効き目の低い、合成または自然由来のCBDアイソレートを調合した製品もあるでしょう。

CBDやそれ以外のカンナビノイドが肌にどのように作用するかの研究は、ほとんどが基礎研究の段階であることは覚えておいてください。CBDが皮膚病に効くという体験談(や謳い文句)を実証する無作為化比較試験は、まだ行われていないのです。臨床研究が不足している現状では、1ミリリットルあたりに何ミリグラムのCBDが含まれるのがスキンケア製品として最適なのか、どれくらいの量をつかえばいいのかを正確に知ることは困難です。

ですから、もしもCBD製品を試すことにしたならば、まずご自分でリサーチしてください。信頼のおける製造者、できればオーガニック栽培された原料を使った大麻入り製品づくりの実績があるところから買うのがいいでしょう。可能なら、外部検査ラボによって、製品の品質が一定で、汚染されていないことがわかっていることを確認しましょう。


Project CBDの寄稿者 Melinda Misuraca は、以前は昔ながらの方法で高CBDの大麻品種を専門に栽培する大麻農家だった。Misuraca の記事は、High Times、Alternet、その他複数の媒体に掲載されている。


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