統合失調症は、考えたり、感じたり、明快な行動をとったりする能力 を奪う精神疾患です。精神病エピソードを引き起こすことがあり、治療 は通常、生涯続くもので、有害な副作用のある抗精神病薬が使われます。
2012 年に『Translational Psychiatry』誌に掲載された論文は、CBD アイソレートが、統合失調症の治療において抗精神病医薬品と同等の効 果があり、副作用ははるかに少ないことを示しています 1。
この研究では、ドイツのコロン大学のマーカス・リーヴェカが率いる 研究チームが、統合失調症による精神病エピソードで入院した患者 39 人を対象とした臨床試験を行い、被験者のうち 19 人にはアミスルプリ ドという抗精神病薬が、残りの 20 人には CBD が与えられました。4 週間後、どちらのグループでも症状は大きく改善し、精神疾患の症状については両者の間に差はありませんでしたが、CBD を摂取したグループ はアミスルプリドを摂取したグループに比べ、体重増加や運動障害といった有害な副作用が少ないという結果でした。著者らは、「これらの結果は、カンナビノイドは精神病の症状に対して、標準的抗精神病薬であるアミスルプリドと同程度の効果を持つことを示唆している」と結論しています。
CBD の抗精神病作用は、体内のアナンダミド(脳内でTHCと同じ受容体に作用する内因性カンナビノイド)の量を増加させることに よるもののようです。興味深いことに、カリフォルニア州立大学アーバ イン校でカンナビノイド研究センター長を務めるダニエル・ピオメッリ 博士が行った以前の研究では、統合失調症の患者の体内アナンダミド量 は、精神疾患のない健常な人と比べて平均 2 倍でした2 。このため、 統合失調症の人というのは自身が作り出す内因性カンナビノイドの量が多すぎてハイな状態なのではないか、と考えた科学者もいました。でも実際には、ストレスをやわらげて精神病の症状を軽くするために脳がアナンダミド量 を増加させるようなのです。圧倒的多数のエビデンスが、統合失調症の人はアナンダミドの量が多いほど症状は軽いということを示しています。
脳のスキャンからわかること
もっと最近では 2020 年に、ロンドンのキングス・カレッジの研究者らが、精神病患者 13 人に CBD または偽薬を与え、記憶テストを受けさせながら fMRI スキャンを行って脳の活動をモニターし、その結果を、精神疾患のない 16 人が同じテストを受けている間のスキャン画像と比較しました。偽薬を与えられた患者は、記憶に関与する前頭葉と内側側 頭葉の活動が健常な人のそれとは異なっていました。患者が CBD を一回摂取すると、その部分における脳の活動は健常な人に近づきました。
「我々の研究からは、CBD が脳のどの部分に作用するかについての重要な洞察が得られる。精神病と診断された患者で CBD を摂取した人の脳をスキャンしたのはこの研究が初めてであり、サンプル数は少ないものの、CBD が、精神病患者の脳において特異な活動が見られるまさにその部分を作用標的としていることを示したという点で説得力がある」と、この論文の筆頭著者であるサグニク・バッタチャルヤ博士は述べています 3。
重要なのは、大麻の安全性について考えるときに、その最大の健康被害として懸念され、問題視されてきたのが、精神病発症リスクの高い人が大麻を使用すると精神病の原因になるという考え方であるということです。これは今日まで証明されていません。そして、2012 年に 『Schizophrenia Bulletin』誌に掲載されたメタアナリシスが、統合失調症の患者の中で大麻を使用している人は、使用していない人よりも認知能力において優れていることを示しているという点は注目に値します 4。
リーダーズ・ダイジェストと Project CBD による『CBDエッセンシャルガイド』より抜粋
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参照文献
- F M Leweke et al., “Cannabidiol Enhances Anandamide Signaling and Alleviates Psychotic Symptoms of Schizophrenia,” Translational Psychiatry 2, no. 3 (March 2012): e94.
- Jonathan Knight, “Doping Down,” New Scientist 2188 (May 29, 1999).
- “New Insight into How Cannabidiol Takes Effect in the Brains of People with Psychosis,” Science Daily (January 29, 2020).
- Murat Yücel et al., “The Impact of Cannabis Use on Cognitive Functioning in Patients with Schizophrenia: A Meta-Analysis of Existing Findings and New Data in a First-Episode Sample, Schizophrenia Bulletin 38, no. 2 (March 2012): 316–30.