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カンナビノイドに関する研究には、驚くほど幅広いテーマがあります。カンナビノイドの研究は、内因性、植物性、合成のカンナビノイドとその受容体をハブとして、ちょうど自転車の車輪のスポークのように、四方八方に広がっているのです。

ただし、完璧に調整された自転車の車輪と違って、スポークの中の何本かは他よりも重要です。たとえばカンナビノイドと炎症の関係のように、より多くのエビデンスがある分野もあれば、患者や、学術界の外にいる活動家がより注目を注いできた分野もあります。緑内障、悪心、不眠症という「古典的」な医療大麻の適応疾患もその例です。

医療大麻が広く知られるきっかけとなったこの三つの疾患については、近年の研究によって、昔から主張されてきた大麻の医療効果が裏付けられていますが、まだわからないことも多々あります。ここでは、この特に重要なスポークに関する新しい論文をいくつかご紹介しましょう。

緑内障

緑内障は、世界中で 7,000万人の患者がおり、失明につながることのある深刻な疾患です。

ワシントン DC の大麻合法化活動家ロバート・ランドールによる働きかけと、1976年の訴訟での勝訴のおかげで、大麻が眼圧を下げ一時的な症状改善に役立つことは以前から知られています。事実、緑内障は、1970年代後半からアメリカ政府が医療大麻を提供し始めたひと握りの患者(ランドールもその一人)の、最初の適応疾患でした。

でも、それから半世紀近く経った現在、大麻が分子レベルでどのように作用するのかは未だに不明であり、大麻を使った緑内障の治療薬の開発はうまくいっていません。2022年 3月に『Planta Medica』誌に掲載された論文1では、ドイツのドルトムント工科大学の研究者らが、新しい医薬品の開発を目指し、近年明らかになった知見を検証しています。その中には、さまざまなカンナビノイドによる眼圧への影響の比較(THCCBN の方が CBD よりも効果が高く、CBD はマウスを使ったある実験では逆に眼圧を上げました)や、人間の目における、CB1CB2 受容体、TRPV チャネルその他カンナビノイドの作用標的の分布などが含まれています。

論文にはまた、今後必要な研究課題が列挙されており、これまでの研究はマウス、ブタ、ウサギを対象としたものがほとんどであるため、人間を対象とした臨床試験が必要であること、目の病態生理におけるより大きな意味でのエンドカンナビノイド・システムが果たす役割についてのよりよい理解、そして、水に溶けにくいカンナビノイドを目薬として使用するためのフォーミュレーションの開発などが挙げられています。

悪心

医療大麻が最もよく使われる、昔から知られている適応疾患に悪心があります。大麻草は何千年も前から悪心の治療に使われており、抗がん剤治療の過酷な副作用を抑える効果やエイズ患者に対する効果が、1990年代の医療大麻合法化運動を成功させる重要な要因となりました。ですが、ここでもやはりさらなる研究が必要である、と、『Journal of Clinical Gastroenterology』誌に 2022年 4月に掲載された論文2の中でニューメキシコ大学の研究者は述べています。市販されている一般的な医療大麻製品の効果をリアルタイムで計測した研究はほとんどない、と論文には書かれています。

そこで彼らは、大麻ユーザーが自分の大麻使用歴を記録し最適化するのを助ける、Releaf というスマートフォンアプリで集めた3年分以上のデータを分析しました。2016年 6月から 2019年 7月までの間に、悪心を抑えることを意図して大麻を吸った人は 886人、記録された喫煙回数は 2,220回でした。この記録には、ベースラインと、時間経過に伴う吐き気の変化が含まれており、研究者は時間を遡って症状の変化を評価することが可能でした。さらに重要なのは、症状の改善の度合いと、製品あるいは品種との間にどんな関係があるかを調べることができたということです。

これらのユーザーの 96% 以上が、大麻使用後1時間のうちに症状の改善を感じており、使用後5分で効果が表れた人も少なくありませんでした。「製品の形状では、乾燥大麻とコンセントレート製品が、同程度の、最も高い効果を示した」「インディカ種とラベル表記されたものは、サティバ種あるいはハイブリッドと表記されているものよりも効果が低く、パイプやベポライザーよりもジョイントを吸う方が効果が高かった」と論文は述べています。

乾燥大麻を使用した場合は、THC 含有量が多く CBD 含有量が少ないものの方が概して高い効果を発揮しました。緑内障に続きこれもまた、THC には顕著な精神作用のみならず、一部の生理作用については CBD よりも高い医療効果があるということを示す例です。

不眠症

不眠症もまた、昔から大麻の医療利用を牽引してきた適応症です。最近、アメリカとカナダの約 27,000人の成人を対象とした調査では、4分の1以上の人が大麻を医療目的で使用しており、そのうちの 46% が使用の理由として睡眠障害を挙げていました。これは上位二つの疾患、疼痛(53%)と不安神経症(52%)に次ぐ数字です3

でも、大麻は本当に不眠症に効くのでしょうか? 学術誌『Chest』に掲載された、オーストラリアの研究者らによる新しいレビュー論文は、「エンドカンナビノイド・システムが概日周期の睡眠・覚醒サイクルの調節に関わっていることを示すエビデンスが急増している」ものの、「睡眠障害を持つ患者に対する効果を裏付ける、しっかりと設計された研究は少ない」と述べています。カンナビノイドが実際に不眠症や睡眠時無呼吸症候群に奏効することを示した研究も多少はありますが、そのほとんどはこれまでのところ、被験者数が少なく、厳しくコントロールされた研究デザインがなく、バイアスが掛かっている可能性が高い、とも書かれています。

結局、何が言えるのでしょうか?「睡眠障害に対する医療大麻の使用については、現時点ではその関心と理解にエビデンスが追いついていないが、カンナビノイドの治療可能性については引き続き研究すべき強い理由がある」——こうして車輪は回り続けるのです。


Nate Seltenrich は、サンフランシスコのベイエリアに住む科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。

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参照文献

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