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大麻の医療利用に関する最古の記録は、「桑と麻の国」と呼ばれた紀元前 2700年の古代中国に遡ります。麻はやがて、炎帝神農による世界で初めての薬局方『神農本草経』に収蔵されました。伝統中国医学の父とされる伝説的な神農は、お茶を飲むという習慣を人々に知らしめたことでも知られています。

神農本草経の中で麻蕡(大麻)は、「不死をもたらす至上の薬」の一つとされています。「長期にわたって服用すれば霊と通じ、体が軽くなる(久服スレバ神明トナリ、身ヲ軽クス)」と書かれており、長命と健康をもたらすとされたのです。ただしあまり大量に摂りすぎると「鬼が見える」(多食スレバ人ヲシテ鬼ヲ見セ)とも書かれています。神農本草経が大麻の使用を勧めている病気は100を超え、痛風、リウマチ、マラリア、便秘、脚気、放心などが含まれます。また手術の際には大麻と酒を混ぜたものが麻酔薬として用いられました。

時は変わって19世紀のアメリカ

大麻は、さまざまな国で豊かな歴史を持っており、アメリカ合衆国も例外ではありません。1854年には、アメリカの薬局方の中で、大麻のティンクチャーが、うつ病、神経痛、出血、疼痛、筋けいれんほか幅広い疾患の治療に推奨されています。

その6年後、オハイオ州の医師会は大麻に関して肯定的な報告書を発表し、てんかん、乳児けいれん、月経困難症、ヒステリー、精神錯乱、躁病、まひ、百日咳、喘息、神経リウマチ、慢性気管支炎、強直性けいれんを含む数多くの疾患の治療に有効であるとしています。

トッド・ミクリヤ博士は、大麻が奏効する疾患は300種類近いと結論しました。

1996年、カリフォルニア州における医療大麻合法化活動の推進に重要な役割を果たしたトッド・ミクリヤ博士は、大麻で治療が可能な慢性疾患の詳細な一覧を作りました。何千人という患者を診た自身の経験と、他の医師たちから提供された情報に基づき、ミクリヤ博士は大麻が奏効する疾患は300種類近いと結論しています。

そんなことが一体なぜあり得るのでしょう? 大麻草という一つのハーブがそれほど多くの疾患に効く、と言われたら、怪しいと思うべきではないのでしょうか?

ガマの油か、本当の薬か

まさかと思うかもしれませんが、大麻が持つこのような幅広い治療効果には、しっかりとした科学的な根拠があるのです。大麻草の主要成分である、カンナビジオール(CBD)と陶酔作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)という二つの化合物は、人間の体内にある化合物、内因性カンナビノイドの働きを模倣し、補完します。この内因性(エンド)カンナビノイドは、科学者が「エンドカンナビノイド・システム」と呼ぶものの一部です。体中に広く拡がっているこの神経伝達のネットワークは、私たちの日々の経験に大きな影響を与えるさまざまな生理機能を調節しています。

エンドカンナビノイド・システムが正常に機能していないと、健康に支障をきたします。ほとんどあらゆる疾患においてエンドカンナビノイド・システムの調節が狂っているということが、科学的研究で明確になっています。アメリカ国立衛生研究所の第一線の研究者、パル・パッヒャー(Pal Pacher)とジョージ・クノス(George Kunos)によれば、「エンドカンナビノイド・システムの働きを調節することで、肥満とメタボリック症候群、糖尿病と糖尿病性合併症、神経変性疾患、炎症性疾患、心臓血管疾患、肝臓疾患、消化器疾患、皮膚疾患、疼痛、精神疾患、悪液質、がん、抗癌剤治療による悪心と嘔吐を含む、人間のありとあらゆる病気に治療効果を発揮する可能性があるといいます。

エンドカンナビノイド・システムを調節し、エンドカンナビノイド・トーンを改善することで、CBDとTHCはさまざまな疾患の進行を遅らせ、ときには止めることができるのです。ところが連邦政府は、人間が何千年も前から知っている、大麻草は医療的な価値がある植物であるという事実を認めようとはしないのです。

それどころか食品医薬品局(FDA)は、大麻草から単離された一部の成分の医療効果のみを認めています。単一分子CBDおよび単一分子THCはともに、FDAに承認された医薬品です。それなのに、CBDTHC を自然に含む大麻草そのものは、未だに非合法であり、「医療効果のない危険薬物」であるスケジュールIに分類されています。

単一分子なら大丈夫という詭弁

要するにFDAは、植物を薬と認める気はないのです。そして、大麻草はFDAが承認した治療薬ではないために、大麻草由来の製品の製造者は、その製品の医学的効果を謳えば法を犯すことになります。そのため大麻企業は非常に難しい立場に置かれています—その製品の効果に言及することなく製品を販売しなければならないのです。

大麻草に含まれる成分の一つ一つを単体で医薬品化することの肩を持つ一方で連邦政府は、大麻草全草や、すべての成分を含むその抽出物が持つ医療効果の裏付けとなり得る臨床試験の実施を妨害してきました。大麻を非合法にしておきたい人々は、人為的に作られたこの、臨床的に意味を持つ研究の不足を盾に、大麻草が実際に病気を改善するという証拠が足りない、と主張するのです。

大麻草の成分は複数の分子経路を通じて多様な作用を発揮し、現実に、大麻草が多くの疾患に効くということを示す証拠も存在します。

けれども、基礎実験はたくさん行われており、それらの結果は、大麻成分がどのようにして複数の分子経路を通じてさまざまな作用をもたらすのかを説明しています。また、医療大麻が合法である州で医師やディスペンサリーが時間をかけて積み上げてきた事例証拠も豊富です。最も信頼できる臨床試験とされる二重盲検無作為化比較試験の基準を満たさないからと言って、現実社会に存在するエビデンスを無視すべきではありません。臨床試験は必ずしも現実を反映するとは限らないのです。

究極の臨床試験は、大手製薬会社による、ある一つの主要評価項目に絞った単一分子製剤を評価するにはぴったりかもしれません。でも、医療大麻とはそういうものではないのです。二重盲検無作為化比較試験は重要ですが、たくさんの成分と無数の作用を持つ複雑な植物の医療的価値を明らかにするためには、それが唯一の方法ではないし、最良の方法でもないかもしれません。

力を合わせて

CBDと医療大麻への関心が急激に高まるなか、Project CBD は、患者、ケアギバー、医療従事者、過去の文献、そして国立医学図書館のオンライン書庫である Pub Med 上の査読を経た研究論文など、さまざまな情報源から疾患別のデータを集めています。そして、次に挙げる分野に関連した実用的な情報を収集し、発信するための継続的な作業を行っています。

  • それぞれの疾患カテゴリーにおいてエンドカンナビノイド・システムがどのような調節不全を起こしているか
  • 各疾患に最も適した大麻製剤はどういうものか
  • CBDTHC の含有比と用量のガイダンス
  • それぞれの疾患に適したテルペン、使ってはいけないテルペンはどういうものか
  • 医療大麻と補完的に働くその他の統合医療的アプローチにはどんなものがあるか

PubMed から抜粋した論文の多くは、単一分子カンナビノイド、動物モデル、ときにヒト細胞株を用いた基礎実験がほとんどです。すべての哺乳動物は大麻成分に反応する細胞受容体を持っていますが、動物実験から得られたデータはそのまま人間に当てはまるとは限りません

イギリスの GW製薬は、エピディオレックス(難治性てんかんの治療に使われる純粋な CBD)とサティベックス(全草から抽出され、CBDTHC を豊富に含む舌下スプレーで、主に筋痙性と神経性疼痛の緩和に使われる)の臨床試験に成功しました。この試験結果の要約は Project CBD のウェブサイトの「疾患」セクションでも紹介しています。さらに Project CBD は、合成 CBD と全草抽出の大麻製剤を使ってイスラエル、ブラジル、欧州の数か国で行われている臨床試験の結果を追いかけています。

あなたも、CBD や医療大麻を使った経験を私たちに教えて下さい。どんな製剤が役に立ち、どんな製剤は役に立ちませんでしたか? 医療大麻という大衆参加型の実験は現在進行中です。そしてあなたの協力と情報提供を必要としています。こちらのインタラクティブ・アンケートフォームに答えてあなたの経験をフィードバックを聞かせてください—あなたが学んだことが、他の人の役に立つかもしれません。


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