『Salon』誌に掲載されて話題になったエッセイの中で、小説家アン・ラモット(Anne Lamott)は、50歳を過ぎた女性の性欲についてこう言っています—「この先二度とセックスしなくても困る人は一人もいない、たとえ結婚生活がうまくいっていても。女性たちは、男性がしたがるからするだけ。相手に喜んでもらえるし、しばらくの間は親密になれる気がする — でも何よりも、『することリスト』の項目を一つ『完了』にできるのが嬉しいの。これで1〜2週間、もしかしたら1か月はお役御免、というわけ。女性はセックスなんかどうでもいいの。こんなことお伝えするのは辛いけど」
このエッセイが掲載されてからというもの、何週間も、ラモットのところには男性からも女性からも熱いフィードバックが寄せられました。ご立腹の人もいましたし、同意してくれる人もいました。コメントの多くはその中間のどこかでした。そうしたフィードバックが興味深かったのは、その多様さもさることながら、それがこの問題の複雑さを浮き彫りにしたからでした。人生の黄金時代のホットなセックス — それは現実にあり得るのでしょうか、それとも単なる幻想なのでしょうか?
セックスの灯火が消えるとき
閉経周辺期と閉経後に起きる身体の変化に直面した女性たちの多くが性生活を店じまいしたとしても不思議はありません。次々に襲う更年期障害の症状は、セクシーとは程遠いものです。エストロゲン(女性のデリケートな下半身の潤いと敏感さを維持するだけでなく、気分を安定させ、眠ることで気分をスッキリさせ、脳を明敏に保つ役割もあります)やテストステロン(情愛に火を点け、燃やし続けることに関連しています)などの性ホルモンも減少します — こうしたことのすべてが重なって、女性たちは、何か重要なものが欠落しているのにもかかわらず必死でこれまで通りにコトを進めようとしているような、そんな気がするのです。
若かりし頃は、色欲に駆られて服を脱ぎ捨て、情熱に身を委ねることもあったかもしれません。でも今ではそんな性的衝動は、あるのかないのかわからないほどに薄れてしまっています。みずみずしく、はち切れんばかりだった花は、弱々しく不毛な壁の花となってしまいました。あるのが当然と長い間思っていた(そしてその価値が本当にはわかっていなかった)欲情は、荷物をまとめて出ていってしまったのです。
それだけでも哀しいこの状況に追い撃ちをかけるように、DSM-V(精神障害の診断と統計マニュアル 第5版)はセックスに興味を示さない女性に「女性性的興奮障害」という怪しげな病名をつけますが、だからどうすればいいのかは教えてくれません。従来の治療では SSRI などの抗うつ剤が処方されることが多いのですが、こうした薬を使うと、オーガズムを迎えるのがより難しく、あるいは不可能になることがあります。もっとも薬によっては、そもそもセックスなんて二度としたくなくなるものもあるかもしれません。
ホルモン療法が役に立つ人もいますが、これは万能薬ではありませんし、誰にでも効くものでもありません。性欲回復のために処方されるブレメラノチドという薬が奏効する場合もありますが、この薬はまた同時に、血圧を上げたり、高い確率で吐き気(色気ゼロ)や皮膚の色素過剰を引き起こしたりします。潤滑剤やクリームを使えば皮膚に潤いを補いふっくらさせることはできますが、カサカサに乾ききった欲望の泉を蘇らせるにはどうすればいいのでしょうか?
“一大変化”
セックスにあまり魅力を感じなくなる女性は多いものの、だからと言ってまだ完全にセックスを諦めたくはない — でも、「一大変化」と呼ばれることの多い更年期障害については、口にするのを嫌がる人が未だに多く、あまり話題になりません。こんなふうに身体に裏切られることは「恥ずかしい」という風潮があるのです。歳を取るということ、それに伴うさまざまな頭痛の種、きまり悪さ、不便さ — 自分に魅力がなくなるのではないかという思いもあります。
『The Menopause Manifesto』の著者であるジェニファー・ギュンター博士は、最近ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された意見記事の中で、歴史的にいかに「女性の価値が、視野の狭い、女性軽視的な価値基準によって、子どもを産む能力とその延長としての女性性によって計られてきた」かについて述べています。「女性たちは、閉経に関するさまざまな事実について苦労して学び、自らの健康と正気を保つために闘わなければなりませんでした。本来、女性の身体が歳を取ることに伴う懸念について口にするのは、特に勇敢なことではなく当たり前のことであるべきです」
さらに、『What Fresh Hell is This: Perimenopause, Menopause, Other Indignities, and You』の著者であり、ノンバイナリーの作家であると同時に性に関するエデュケーターでもあるヘザー・コリーナは、この厳しい現実についてこう言っています —「更年期は人を孤独にしかねません。シスジェンダー [訳注:生まれついた性別と自覚が一致しており、その性別に従って生きる人のこと] でなければ特にそれは顕著で、ストレスに次ぐストレスです」
セックスしたいと思いたい
更年期の女性の多くにとって、一番困った症状は性欲の低下です。マサチューセッツ州に住む 58歳のコンサルタント、マデリーンは、この問題をこんなふうに端的に表現しています —「夫はとてもハンサムで素晴らしい人だし、肉体的に魅力を感じるのに、もうセックスはしたくない、というのは奇妙な感じです。セックスしたい、と思いたいのに! 夫とはもう2年セックスしていません。夫は 63歳で、彼自身性欲の衰えを感じているので、私たちの夫婦仲がこのせいで悪くなることはないけれど、私たちは二人とも、性生活を完全に終わりにしたくはないと思っています!」
ニューヨーク出身で現在はプエルトリコに暮らすライター、サラ・ラトリフは、34歳のときに子宮を摘出し、若くして閉経しました。閉経までの10年間は、「まさに地獄」だったとサラは言います。ホットフラッシュ、乳房の痛み、片頭痛その他の症状はやがてやわらぎましたが、消えない症状が一つありました。性欲が顕著に減退したのです。
「いろんな感情を味わったわ。一番大きかったのが罪悪感。正直に言うけど、まず、結婚生活に重大な影響がありました。夫と私が結婚したとき、二人の間に誰を割り込ませることもすまいと約束したのに、今、更年期が私たちの間に割って入っているのよ。夫に対する気持ちとは関係ないの。私は、25年前に出会ったときと同じように夫を愛しているのに」
サラは、慢性の腰痛の緩和のために大麻を使ってうまくいき、その過程であることに気づいて驚きました。特定の品種の大麻を吸うと欲望を感じるのです。まるで、思ってもいなかったところで貴重な金脈を掘り当てたかのようでした。「わかったのは、私にはまだ性欲があるということ。ただし、それを目覚めさせるには以前とは違う過程が必要なの。それがわかってとても驚いたわ」
セックスの女神
私自身はと言えば、更年期とそれに伴う性欲の減退は、まるで悲しみの段階をいくつも真っ逆さまに落ちていくかのようでした。ずっとマンションの最上階に住み、長年にわたってありとあらゆる官能の悦びを味わい尽くしてきたのに、突如として私は、各階の床を次々と突き抜けて落ちていったのです — そのたびに部屋は前よりも少しずつ豪華さとセクシーさが減っていき、最後には、窓もなければ何の悦びもない地下室に着地して、そこから逃れる術はないかのようでした。
最初のうち私は、自分が更年期であることを頑なに信じず、それまでと同じように生活しようとしました。これまでいつでもそこにあった、私にとって欠かすことのできない悦びを、この、いわゆる「変化」のせいで楽しむことができなくなるなど、断じてあってはならないことでした。克服してみせるわ、と私は自分に言い聞かせました。身体は心に従うものよ。ところが私の身体は、脳の働きを含め、何一つとして以前と同じように働いてくれなかったのです。頭では良い気持ちになりたいのに、身体はそんなことはどうでもよくて、事実、セックスするという概念に反旗を翻しているかのように、身体の色々なところに不都合が出るのです。私は昔のような、自由気ままな遊び心、気楽さと楽しさと悦びの探求を恋しく思いましたが、とうとう、もうこれ以上無視できない事実に直面せざるを得ませんでした。無造作に性を楽しむ若い日々は終わったのです。そしてその認識とともに、とてつもない悲しみが私を襲いました。そのときはまだ、私にはまだ感じられる悦びが残っていて、ただその形が変わっただけだということを理解していなかったのです。
著名なセックス・コーチであり、『The CBD Solution: Sex: How Cannabis, CBD, and Other Plant Allies Can Improve Your Everyday Life(CBDによる解決法:セックス — 大麻、CBD、その他の植物による日常生活の改善法)』の著書であり、自分を CannaSexual と呼ぶアシュレー・マンタ は、性生活を変容させるための寝室での大麻の使い方について指導しています。大麻によって性の扉を再び開く、というのは、長いこと性生活がなく何でも試したいと思っている女性にとっては特に魅力的です。アシュレーは、どんな人でも、年齢、性的指向、性自認にかかわらず、あらゆる性的な悦びを体験する権利を求めるべきであり、大麻はそのための強力な味方であると主張します。
「大麻は、不眠症、痛み、ホットフラッシュや寝汗など、更年期がもたらす生理現象の一部を緩和させます。エンドカンナビノイド・システムがしっかりサポートされてバランス良い状態にあると、身体の調子を整えるのに役立ちますし、同時に、イライラや不安感を抑えて更年期の感情面での問題も改善し、ユーザーはより穏やかな気持で今に集中できるようになるのです」
大麻とセックス:科学的背景
大麻草が、不安な気持ちをやわらげ、気持ちをリラックスさせ、痛みを軽減するだけでなく、同時に性欲を高め、性感や興奮を高めるのはなぜなのでしょうか? それは科学的にはまだ十分に解明されていません。その生物学的メカニズムを決定的に指し示す研究はほとんど行われていませんが、エンドカンナビノイド・システム、オピオイド神経系、セロトニン神経系が関与する、喜びと報酬経路の調節と関連しているものと考えられています。
チェコ共和国で2017年に行われた研究によると、大麻は、性的な刺激に関与する脳の部位を活性化させます。また、同じく2017年に『Current Sexual Health Reports』誌に掲載されたレビュー論文は、大麻には、性機能に対して二方向性の効果(二相効果)があると述べています — つまり、低用量では性感と興奮を強めるのに対し、高用量ではそれとは逆の効果があったのです。
もっと最近のレビュー論文は、動物実験と臨床試験を対象に行われ、『Effects of Cannabinoids on Female Sexual Function(女性の性機能に対するカンナビノイドの影響)』と題された2020年のレビュー論文と同様にこれを裏付けています。こうしたさまざまな論文から伺われるのは、性の喜びを高めるためには低用量の方が効果的であるということですが、その立証にはさらなる研究が必要です。
セックスの喜びと大麻
少しばかりの大麻の助けを借りて自分の情熱に火をつけるために、従兄弟の誰かが大麻を持っている誰かを知っている誰かを知っている必要があった(しかも選択肢は限られていて、欲しい物が手に入るとは限らなかった)時代は過去のものになりました。今では合法市場にあるさまざまな製品と大麻品種から好きなものを選ぶことができ、初心者は圧倒されてどこから手を付けていいかわからないほどです。
性生活のために大麻を使うのは初めてという人は、その目的のために作られた外部薬から始めてみるといい、とアシュレーは言います。CBD だけが含まれているものも、THC が混ざっているものもあります。カンナビノイドが膣粘膜から体内に浸透して性感度や興奮度を高めることを示す科学的エビデンスはありませんが、そう主張する体験談は豊富にありますし、製品の種類も、オイル、潤滑剤、クリームなどさまざまです。これらを使った官能的なマッサージは、続くご馳走を前にしてのオードブルだと考えればよいでしょう。
より顕著な効果を求める場合は、乾燥大麻をべーピングまたは喫煙するとよいでしょう。インターネットで少々検索すれば、Love Potion #1、Purple Panty Dropper、Voodoo その他、その目的に推奨される品種がたくさん見つかります。どれも、(良い意味で)悪名高き品種です。私のお気に入りは、昔からある Purple Kush という品種。身体がフワっとするような、ゾクゾクするような感覚と、さあパーティーを始めましょう!と言いたくなる高揚感を感じるのです。当然ながら、私の夫も Purple Kush の大ファンです。
性生活の刺激のために大麻を使い始める際に一番大事なことは、少量から始めるということです。多く摂りすぎると、下着も脱がないうちにソファーで眠ってしまうことになりかねません。また、中には大麻を摂取すると粘膜が特に乾燥する女性もおり、その中には乾燥していては絶対に困る場所も含まれています — その場合は、潤滑剤を少々使えば問題は解決します。
大麻と、性の解放の新しい形
大麻は、閉経周辺期と閉経後の女性やノンバイナリーの人々の、歳を取るとともに起きる身体の変調に対する感じ方を変化させる、とアシュレーは言います。意図を持って使えば、この緑色の女神は、新しい物の見方ができるようになるのを手伝ってくれるのです。「大麻は、私たちの文化に蔓延する、美というものに関する父権的で高齢者差別的な考え方を見直すのに役立つのです」
「私たちには、非現実的な、マスコミが作り上げた美の基準を頭の中から追い払い、その代わりに、私たちに安心感を与え、一緒にいて居心地良く、自分は特別な存在だと思わせてくれる人と一緒にいる時間を大切にする、という選択肢があります。大麻は、快感を高めることによって、私たちのセクシュアリティには賞味期限はないのだということを思い出させてくれるのです。セクシュアリティは、時間とともに変化することはあっても常に私たちの中にあり、そこにアクセスする方法は無限です」
ただし、大麻が誰にでも魔法のように効くわけではない、とヘザー・コリーナは注意を促します。「不安感が増すようなら使ってはいけないことは明らかですよね。仕事をクビになってももちろんダメ。あなたの神経系や、他の処方薬との相性が悪かったり、大麻を使った感じがとにかく好きでなかったり、使うべきでない理由は色々あります」
「でも、大麻と相性が良い人なら、是非使うといいと思います。自分の身体の筋肉や神経や感情をリラックスさせてくれるものなら、つまらない、自分で自分を卑下するような思考から解放されるのを手伝ってくれるかもしれません。たとえば、自意識に縛られず自分の身体の中を自由に動き、普段なら怖くて試せない性的な行動を試す助けになるかもしれません」
もっと自由に
私の場合、大麻を吸うと落ち着いて、自分が今感じていることにより注意を向けることができるようになり、同時にその感覚がより高まり、鋭敏になります。大麻なしでは、セックスという「行動」をしているだけなのです — アン・ラモットの言うように、ただ夫のご機嫌をとるためにだけ、というわけではありませんが、ものすごく夫に首ったけかというとそうでもないのも事実です。でも大麻があると、私の周囲の世界は消え去り、私はキラキラしたシャンペンの泡の中に滑り込みます。私の皮膚はとても敏感になり、神経終末がすべて気をつけをして刺激を待ち構えているかのようです。
夫にはその違いがたしかにわかるようで、私がベポライザーを使い始めると文字通り走ってきて手伝ってくれます。大麻は私に自由気ままな奔放さを再び与えてくれるだけでなく、同時に、悦びを分かち合う時間、つながり、そして平安に対する深い感謝の気持ちを与えてくれるのです。今という時代だからこそ、この薬草が役に立つ人はたくさんいるはずです。
サラ・ラトリフも同意見です。「更年期の私にとっては、何よりも催淫効果があるのは、コントロールを手放す、ということなの。ハイになると私は状況をコントロールする必要がなくなって、すごく自由になれるのよ」
いつになっても成長と学ぶことを止めないアシュレー・マンタは最近、ペギー・クラインプラッツ(Peggy Kleinplatz)博士の画期的な著書『Magnificent Sex』を読み返しています。「素晴らしいセックスをしていると言う何千組ものカップルを15年間にわたって調査した経験から、クラインプラッツは、彼らに共通する主な8つの要素を特定しています。その中には、オーガズムも、体位も、特定の技も含まれません。8つの要素というのは、そこにしっかりと存在することだったり、身体性だったり、弱さを見せることだったり、共感を伴うコミュニケーションだったり…..。誰でも、いくつになっても、それを実践しようとしさえすればできることばかりです。そして大麻はそのすべてに役立つのです! だから、今すぐ大麻を吸いながらこの本を読み、欲望というものについて勉強し直すことをお勧めするわ!」
塾年以降の美味しいセックスに関して読もうと思っている本はこれで4冊になり、Purple Kush もたっぷりあります — 夫よ、覚悟なさいませ。
Project CBD の寄稿者メリンダ・ミスラカ(Melinda Misuraca)は、以前は昔ながらの方法で、高CBDの大麻を栽培していた。High Times、Alternet、その他さまざまな媒体に寄稿している。
写真提供:Melati Citrawireja.
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参照文献
- Androvicova, R., Horacek, J., Tintera, J. et al. Individual prolactin reactivity modulates response of nucleus accumbens to erotic stimuli during acute cannabis intoxication: an fMRI pilot study. Psychopharmacology 234, 1933–1943 (2017).
- Balon, R. Cannabis and Sexuality. Curr Sex Health Rep 9, (2017) 99–103
- Graziottin, Alessandra, and Sandra R. Leiblum. Biological and Psychosocial Pathophysiology of Female Sexual Dysfunction During the Menopausal Transition. The Journal of Sexual Medicine 2 (2005): 133–145
- Pfaus JG. Pathways of sexual desire. J Sex Med. 2009 Jun; 6(6):1506-1533
- Mostafa, Taymour et al. “Female Sexual Dysfunction among Menopausal Women.” Human Andrology 5.2 (2015): 23–27