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Cannabis Textiles』は、一見目立たない地味な本で、演出が施された洒落た写真もなければ、先住民族の文化を大げさに賛美する文章もありません。でもそのシンプルさは、この本の内面的な美しさを映し出しているのです。この本には、消えつつある手技、つまり、伝統的なヘンプの栽培と布の生産の歴史が記録されています。

スコーグルンドの本は主に、ヨーロッパとアジアの先住民に伝わるヘンプ文化にフォーカスしています。ヘンプに対する彼女の情熱に火が点いたのは、1970年代に、ボロース大学の Swedish School of Textiles やスウェーデンのウプサラ地方で、修士論文のための研究をしていたときでした。そのとき彼女は、ヘンプを使った伝統的な手技についての記録がひどく少ないことに気づいたのです。

「ヘンプは麻薬と密接に結び付いていて、スウェーデンでは [2003年まで] 禁止されていたので、ヘンプについて話すことさえほとんどタブーだったの」とスコーグルンドは言います。

スコーグルンドは自分でもヘンプ糸を紡ぐようになり、その一方でヘンプの布作りが言及されている歴史的な記録を探し続けました。DNA や顕微鏡を使った鑑定によって、博物館や保管庫に保存された古いテキスタイルの繊維を調べた結果、すべてが、あるいはその一部がヘンプでできているものが多数見つかりました。

靱皮繊維植物

医師ウィリアム・オショネシーが、精神作用のある大麻草をインドから西欧に持ち帰った 1842 年よりはるか以前、一般にヘンプと呼ばれる大麻草の一種は、ヨーロッパや東アジアの人々の家庭菜園で栽培され、「城や僧院、豪邸や素朴な農場」の近くにもあった、とスコーグルンドは書いています。ヘンプは靱皮繊維植物であり、種子や薬効を求めた栽培も行われましたが、主な栽培の目的は繊維でした。他の靱皮繊維植物、たとえば亜麻やホップの繊維がヘンプの繊維に混ぜられることもありました。

スコーグルンドの本には、古くは新石器時代の中国から、ヘンプの布がどのようにして作られ、長い間ヨーロッパやアジアで、日常着として、あるいは宗教儀礼、結婚式、葬儀などの儀式のために用いられてきたかが詳細に述べられています。中世ヨーロッパではヘンプの家内工業が盛んであり、職業としてそれを行うギルド(組合)の監督を受けることもしばしばでした。

「布を作るというのは植物を学ぶということなのよ」とスコーグルンドは言います。「そして、園芸の歴史と織物の歴史という、分野にまたがる研究にもとづいているの」。彼女によれば、ヘンプ織物という工芸は、家庭内で、特に女性の手で行われる仕事が重要ではないと考えられ、しっかりとした記録が残されなかった数々の例の一つです。僧侶その他の有力な男性たちは「人間の歴史を記録しはしたが、家庭内で行われる織物については何の知識もなかった。彼らは、経済や、彼ら自身が作りたいものに集中したのである」とスコーグルンドは書いています。彼女は、少なくともヘンプの繊維に関しては、その過ちを正そうとしているのです。

100の工程

中世のイタリアでは、ヘンプの布は quello dello cento operioni、「100 の工程のもの」と呼ばれていました。それを作るために多くの工程が必要だったことをよく表す名前です。ヘンプを育て、収穫し、乾燥させ、水に浸し、腐食させ、叩き、整形し、梳き、紡ぎ、織り、染める、という工程に関するスコーグルンドのわかりやすい描写を読むと、どういうわけか心が落ち着きます。工程の一つひとつは素朴でシンプル。21世紀の脱工業化社会ではめったにお目にかかれない、人間と植物の間にある複雑で親密な関係の一部です。

ヘンプ繊維で織った布はどれも重くてゴワゴワしている、と一般的には思われがちですが、実際には、手織りの麻布の中には、とても薄く、織り目が細かくて手触りがやわらかいものもあります。その品質の決め手となるのは、作り手の知識と技術です。スコーグルンドによれば、ヨーロッパでは、高品質の麻布を作るためにはヘンプの若い雄株だけが使われます。それらは、日当たりの良い安全な場所——それが家庭菜園であることもしばしばでした——で、ヘンプがひょろっと細いまま育ち、茎が柔軟で、最高級の繊維が採れるような条件下で栽培されました。もっと背が高くて葉の密度も高い雌株は種子を採るために栽培され、その硬い繊維は、ロープ、袋、帆布、敷物、タープ、サドルバッグなどを作るのに使われました。「キャンバス」という言葉は、フランス語で「大麻布」という意味の canvasse から来ています。

スコールグンドは、収穫されたヘンプの茎を、通常は畑に寝かせておくか、あるいは湖、池、川などのきれいな水に2週間ほど浸けて腐らせ、それによって自然発生する嫌気性細菌が、茎の木質の中心部と繊維を分離させる工程についても説明しています。分離したヘンプの繊維は次に、乾燥し、日光に晒し、木槌またはナイフで叩いてバラバラにし、梳き櫛で梳いて整え、最後にもう一度、紛れ込んでいる茎の断片その他のゴミを取り除いてから、撚り合わせて粗紡にし、大抵はドロップ・スピンドルを使って糸に紡ぎます。出来上がったヘンプ糸は伝統的に、足踏み織機、水平織機、あるいは腰機で織って布にしました。

木綿と合成繊維の台頭

ヘンプはほとんどどんな気候でも育ちますが、川の流域の肥沃な土地、中でも石灰質の土地で特に元気に育ちます。成長が早く、水も窒素もそんなに必要としないヘンプは、土壌から汚染物質を取り除くのを助け、二酸化炭素を吸収します。ヘンプの布は染みがついたり腐ったりしにくく、天然の抗菌作用と紫外線防護作用があり、また生分解されて土に戻ります。

ヘンプはまた、現在食糧以外の用途で栽培される農作物としては世界で最も広く栽培されている綿と比べ、より強靭で耐久性に富んでいます。歴史的に奴隷によって栽培されてきた綿花は、大量の水、化学肥料、殺虫剤を必要とし、社会的にも環境的にも壊滅的なダメージを与えてきました。それとは対照的にヘンプには、環境に優しい数々の性質があり、気候危機との闘いにおける人間の貴重な味方です。

1793年にニューイングランドで綿繰り機が発明されるまで、アメリカでは女性たちが「spinning bee」と呼ばれる糸紡ぎの集まりを開いて麻糸を紡ぎ、革命軍の兵士のために服を作ったものでした。このような、文句のつけようのないほどの愛国心に溢れた伝統があるにもかかわらず、産業用ヘンプはアメリカ政府が始めた麻薬撲滅戦争の巻き添えとなりました。2018年にアメリカのヘンプ栽培を再び合法化する農業法が制定されてからは、麻布をはじめ、ヘンプの繊維を使ったその他の製品に対する関心が再び高まっています。ところがアメリカとヨーロッパでは、CBD を抽出するためのヘンプ栽培に比べ、ヘンプの繊維製品は軽視されています。また、現在アジアで大量生産されているヘンプ製の衣料は、人工的にヘンプを腐敗させ、有害な化学薬品に浸けて作られています。

人間は大昔から、植物や動物から採れる繊維で身体を包んできました。ところが今、多くの人が、文字通り石油化学製品を着ています。Changing Markets Foundation の 2022年の報告書によれば、現在使われている布(ポリエステル、アクリル、ナイロン、スパンデックスその他)の 69% は化石燃料から合成されています。

そしてこうした布地の多くは、不当労働によって「ファストファッション」の服に仕立てられ、それらから人工のマイクロファイバーが剥がれ落ちて、私たちの血管に入り込み、体内に溜まり、さらに地球の隅々にまで広がっていきます。石油から作られた布から剥がれ落ちる繊維は、環境を汚染し、人体に有毒で酸化ストレスや炎症の原因となるマイクロプラスチックの大部分を占めるのです。

『Cannabis Textiles in Hemp Garden Cultures』は、まるで夢を見ているような、「化石燃料製の布」の流行に対する、スローファッションという解毒剤と言えるかもしれません。

生き続ける伝統

工場で生産された綿布と合成繊維の台頭とともに、アメリカの麻布の生産は 20世紀でほぼ姿を消しました。現在では、伝統的な麻布は、タイ、ベトナム、中国、トルコ、ルーマニアの僻地に住む女性たちの手によってのみ生産されています。スコールグンドはそのすべてを訪れて取材しました。

スコールグンドは今も麻布の研究を続けています。現在彼女は、アイスランドの古い教会で見つかった、ヘンプの糸で織られた宗教関連の織物を分析中で、ストロンチウム同位体を使った試験によってその起源を特定する予定です。それにしても、好奇心の強い彼女の趣味が高じて手織りの麻の服を作ろうとしているということはさて置き、これほど手のかかる古い工芸を大切にすべき理由などあるのでしょうか?

スコールグンドの本は、さりげなく、その答えのヒントを教えてくれます。庭で育てた麻の繊維で布を織るという、ゆったりした、具体的かつ意識的な行為に生命を吹き込むことで、目に見えないもの——藁を金に変える手工芸の魅力と、自然、創造性、長く使えることを大切にする考え方によって測られる日用品の価値——を見せてくれているのです。この本は、伝統的な麻の文化へのほろ苦い哀歌であると同時に、プラスチックに毒されたこの世界で、麻という驚異的な植物がそのさまざまな魔法を発揮するのための場所を作ることはできるのか、と私たちに問いかけます。

Cannabis Textiles in Hemp Garden Cultures は こちらから購入できます。


Project CBD の寄稿者メリンダ・ミスラカ(Melinda Misuraca)は、以前は昔ながらの方法で、高CBDの大麻を栽培していた。High Times、Alternet、その他さまざまな媒体に寄稿している。

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