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CBD は耳鳴りを止めることができるのか? ——アンケート調査の結果から、新しい治療法の可能性が見えてきます。

最近のことですが、夜遊びから帰宅した妻は、片方の耳に耳鳴りがあり、聞こえも悪くなっていました。スピーカーに近すぎるところにいたせいであることは間違いありませんでした。妻は自分の不注意さに腹を立て、その症状が続くのではないかと心配して、その後数日間、耳の回復を助けるために睡眠時間を増やし、ついでに CBD も1〜2回分多めに摂りました。

耳鳴りは、実はあらゆる年齢層の多くの人が抱える慢性的な症状で、妻のように、小さなクラブで 80年代のカバーバンドを大音響で聴いたかどうかとはまったく関係がありません。耳鳴り症状を起こす危険因子には、脳震盪、喫煙、ある種の医薬品、耳の感染症、高血圧、不安、うつ、そして最も一般的な加齢による難聴など、さまざまな身体的・心理的状況が挙げられます。

また耳鳴りの症状は、単に耳の中で音が聞こえるだけではありません。正確に言うと耳鳴りというのは、外部からの刺激とは無関係に神経系の内部から発生する音を知覚することを言います。耳鳴りは、唸るような音、甲高い音、カチカチ言う音など、さまざまな音となって現れます。それがどんな音であっても、耳鳴りは往々にして、睡眠障害、集中力の低下、気分の落ち込みなど、さまざまな症状を伴います。推定の数字にはばらつきがありますが、おそらくアメリカだけでも数千万人の人が慢性的な耳鳴りに悩まされています。

その後の数日で妻の耳鳴りは次第に弱まり、聴力も回復しました。CBD を摂ったことが助けになったかどうかはわかりませんが、耳鳴りがある人を対象に最近行われたアンケート調査の結果によれば、耳鳴りの治療のために CBD を使っているか、少なくとも関心を持っているのは、妻だけではないようです。

聴覚その他の問題

このアンケート調査の結果は 2023年 2月号の『Journal of Otolaryngology – Head & Neck Surgery』誌に掲載 1されたもので、カナダのオンタリオ州にある耳鼻咽喉科のクリニックの外来患者の中から無作為に選ばれた、耳鳴りのある成人患者 45人を対象に、医療大麻に対するイメージと使用状況を調べています。

45人の回答者の年齢中央値は 55歳で、現在大麻を使用していると答えたのは 10人のみでした(19人は一度も使ったことがなく、16人は過去に使用経験あり)が、その 10人のうち 8人が、大麻の使用によって、耳鳴りの音、あるいは耳鳴りに伴う症状の一部が改善されたと報告しています。改善した症状の内訳は、睡眠障害が 7人、疼痛が 7人、気分が 6人、身体機能が 4人、めまいが 3人でした。耳鳴りの特徴である聴覚症状そのものが大麻で改善したと答えたのは 10人中 3人のみでした。

耳鳴りは、唸るような音、甲高い音、カチカチ言う音など、さまざまな音となって現れます。

ただ、慢性的な耳鳴りのしつこさを示すかのように、試してみたいと答える患者はもっと多く、45人中 2人を除く全員が大麻を使うことを考えてもよいと答えました。改善したい症状の内訳は、睡眠障害が 29人、気分が 27人、機能障害が25人、痛みが 9人でした。注目すべきは、45人中 41人が聴覚の症状の改善のために大麻を使ってみたいと答えたことです——これは耳鳴りの患者にとっての最大の悩みであると同時に、大麻を現在使用中の 10人によれば、大麻で改善される率が一番低い症状です。

興味深く、また患者にとっては残念なことですが、2020年と 2019年に行われたレビュー 2 でも、大麻が慢性の耳鳴りを改善できると考えるに足るエビデンスは存在しないという結論でした。

CBDと耳鳴り——割れる結果

2020年 12月に『Laryngoscope Investigative Otolaryngology』に掲載されたレビュー論文 3 は、エール大学とその近くにあるコネチカット大学の研究チームによるもので、この問題に正面から取り組んでいます。論文のタイトルは「Does cannabis alleviate tinnitus? A review of the current literature(大麻は耳鳴りを軽減させるか? 現存する科学文献の検証)」というものでした。

「動物実験からは、カンナビノイド受容体が聴覚信号の調節に関与している可能性が高いことがわかっているが、動物実験からも臨床研究からも、大麻が耳鳴りを軽減させることを裏付ける有力なエビデンスは存在しない」とこの論文は結論しています。

大麻には、その抗けいれん作用を介して耳鳴りを抑制できる可能性がある

実際には、動物実験からのエビデンスの中には、カンナビノイドの投与によってむしろ耳鳴りが発生あるいは悪化する可能性を示すものがあります。合成 CB1 作動薬 WIN55, 212-2 と CP55,940 を投与した 2010年の研究 4 でも、THC と CBD を 1:1 の比率で投与した 2011年の追跡実験 5 でもそういう結果でした。

臨床研究について言えば、レビュー論文の著者らは過去 2010年と 2019年に行われたアンケート調査、1975年に行われた臨床試験、そして 2006年の症例報告を検証しています。それらの総合的な結果は、よく言っても「よくわからない」というものでした。

こうした結果とは裏腹に、カンナビノイドが耳鳴りの治療に有効であると考える生物学的根拠がある、と論文の著者らは述べています。蝸牛神経核におけるカンナビノイド受容体の発現数が、耳鳴りの症状によって異なっている可能性を示す動物実験があるのです。さらに、耳鳴りの病態生理学的説明として最も広く受け入れられている仮説は「神経細胞の興奮性の亢進」——これはてんかん患者にも見られる現象であると著者らは指摘しています——であることから、「大麻には、その抗けいれん作用を介して耳鳴りを抑制できる可能性がある」と論文は述べています。

カンナビノイド受容体が聴覚に与える影響

最後に、2020年 11月に『Frontiers in Neurology』誌に掲載されたレビュー論文 6 は、この問題をより複雑で微妙なものにしています。論文では賢明にも、大麻が耳鳴りを悪化させる可能性があるとした動物実験が、CB1 作動薬にのみ注目している点を指摘しています。その結果、たとえば次のような作用標的が考察に含まれていません。

  • 免疫機能に影響し、「神経系の病理学的反応を理解するのに必須であることが認識されつつある」CB2 受容体
  • 視覚、味覚、嗅覚、触覚、そして聴覚を含む生理機能を媒介する TRP イオンチャネルなど、カンナビノイドの「二次的な」作用標的

これまでのところ得られているエビデンスは、その内容が分かれ、はっきりした結論が出ていませんが、そもそも研究が足りているとは言えないのが現状です。CB1 作動薬以外のカンナビノイドを使った動物実験は大きな可能性を秘めていますし、よりしっかりした臨床試験が(それどころかどんな臨床試験でも)行われれば、この火急かつ多くの人々を悩ませる問題に対する新たな理解を得るのに役立つことでしょう。


Project CBD の寄稿者 Nate Seltenrich は、Bridging the Gap というコラムの筆者であり、サンフランシスコのベイエリアに住むフリーランスの科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。


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参照文献

  1. Mavedatnia, Dorsa et al. “Cannabis use amongst tinnitus patients: consumption patterns and attitudes.” Journal of otolaryngology – head & neck surgery vol. 52,1 19. 24 Feb. 2023, doi:10.1186/s40463-022-00603-8
  2. Zheng, Yiwen, and Paul F Smith. “Cannabinoid drugs: will they relieve or exacerbate tinnitus?.” Current opinion in neurology vol. 32,1 (2019): 131-136. doi:10.1097/WCO.0000000000000631
  3. Narwani, Vishal et al. “Does cannabis alleviate tinnitus? A review of the current literature.” Laryngoscope investigative otolaryngology vol. 5,6 1147-1155. 30 Oct. 2020, doi:10.1002/lio2.479
  4. Zheng, Yiwen et al. “The effects of the synthetic cannabinoid receptor agonists, WIN55,212-2 and CP55,940, on salicylate-induced tinnitus in rats.” Hearing research vol. 268,1-2 (2010): 145-50. doi:10.1016/j.heares.2010.05.015
  5. Zheng, Y et al. “Acoustic trauma that can cause tinnitus impairs impulsive control but not performance accuracy in the 5-choice serial reaction time task in rats.” Neuroscience vol. 180 (2011): 75-84. doi:10.1016/j.neuroscience.2011.02.040
  6. Perin, Paola et al. “Cannabinoids, Inner Ear, Hearing, and Tinnitus: A Neuroimmunological Perspective.” Frontiers in neurology vol. 11 505995. 23 Nov. 2020, doi:10.3389/fneur.2020.505995

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