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口腔内を健康に保つことは、人間の総合的な衛生と健康には欠かせません。口の中が非衛生的だと、虫歯、歯周病、歯肉感染などが起こり、治療せず放っておけば全身性炎症にもつながりかねません。最近になって、カンナビジオール(CBD)その他のカンナビノイドを含有したさまざまなデンタルケア製品が発売されています。このところ、怪しげな効果を謳うとんでもない製品(たとえば CBD を浸み込ませた枕やスポーツウェアなど)が次々と発売されていますが、こと口腔衛生に関して言えば、CBD 入りの製品は実際に役に立つかもしれません。

医療大麻についての話をするときに、口腔衛生が話題に上ることはこれまであまりありませんでした。けれども最新のデータによれば、カンナビノイドは将来、歯科衛生の分野では定番になるかもしれません。CBD その他の植物性カンナビノイドに、歯科医療に有用な抗菌作用があるという研究の結果には、複数の歯磨き粉メーカーが着目しており[1]、コルゲート社はすでに、CBD入りの歯磨きやマウスウォッシュの製造会社を買収しています。

コルゲートは大麻にはかなわない

ベルギーの研究者らによって2020年に発表された論文は、歯垢の中の細菌集落の数を減少させるのに、Oral B やコルゲートといった著名な合成口腔衛生製品よりもカンナビノイドの方が効果があるということを示唆しています。このことを実証するために著者らは、健康な成人60名を集め、歯肉の健康度を示す DPSI(Dutch peridontal scoring index)という基準に従って6つのグループに分けました[2]。

カンナビノイドは将来、歯科衛生の分野で活躍するかもしれません。

研究では、歯と歯の隙間にできた歯垢を集め、2つのペトリ皿に分けて培養しました。それぞれのペトリ皿は4つの部分に分割され、それぞれの部分の寒天平板の表面に、カンナビノイド(12.5%)、または歯磨き粉(不希釈)がマイクロアプリケーターで塗布されました。ペトリ皿 A には、4種類の植物性カンナビノイド — CBD、カンナビクロメン(CBC)、カンナビノール(CBN)、そしてカンナビゲロール(CBG)を使い、ペトリ皿 B には、カンナビゲロール酸(CBGA)、Oral B、コルゲート、Cannabite F(ザクロと海藻を配合した歯磨き粉)が使用されました。その結果、コルゲート、Oral B、Cannabite F を塗布した検体では細菌集落の数が多く、カンナビノイドを加えた検体のすべてで細菌集落の数がずっと少なかったのです。

同じ研究者のチームが行ったその後の研究では、CBDCBG を1%以下含有しアルコールやフッ素を含まないマウスウォッシュは、歯垢を減らすのに、0.2% 濃度のクロルヘキシジン入りマウスウォッシュと同等の効果がありました。歯科医療において、歯垢の除去にはクロルヘキシジンが絶対であるとされている現在、これは非常に興味深くかつ重要な発見です。この2つめの実験では前述の研究と類似した試験デザインが用いられ、72名の健康な成人を DPSI のスコアに従ってグループ分けした後、それぞれの被験者の歯と歯の隙間から歯垢を集めました。そして、部分分けされた培養皿で細菌が繁殖した範囲の広さを計測して、それぞれの製品の効果を比較しました[3]。

その結果、カンナビノイドを含む液には望ましい効果があり、慢性的に使うと歯が汚くなる傾向がある従来のクロルヘキシジン入りマウスウォッシュよりも、その効果は高いかもしれないということがわかりました。

注意すべきこと

この2つの研究結果では、CBD その他の植物性カンナビノイドが歯垢の形成を防ぐのに役立つ可能性が強調され、カンナビノイドが歯科医療に果たし得る大きな役割を示唆しています。ただし、これらはあくまでも試験管内での実験であって、CBD 入りの歯科衛生製品の長期的な安全性と効果を完全に理解するためには、人を対象にした研究と臨床試験が必要であることに留意しなければなりません。さらに、これらの研究結果を他の研究チームが再現することが欠かせません — この論文の著者らには、研究の結果に関する経済的な利害関係があり、中でも Stahl は、カンナビノイド入り歯科衛生製品の製造に携わる CannIBite 社の創業者ですからなおさらです。


カイル・ボイヤー(Kyle Boyar)は、神経生物学、微生物学、分析化学に造詣のある大麻研究者。現在は TagLeaf 社の製品研究ディレクターであり、また American Chemical Society’s Cannabis Chemistry Subdivision (CANN) において、副代表および受賞者選定委員会の議長を務めている。


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参照文献

  1. カンナビノイドおよび大麻草抽出物は、ファーマコフォア(薬理作用団)として機能するオリベトール核を通じて抗菌作用を発揮することがわかっている。ファーマコフォアとは、ある化合物の分子構造の中で、トリガーあるいはターゲットに対するある特定の生物学的あるいは薬理学的作用を引き起こす部分を指す。
  2. Stahl V, Vasudevan K. Comparison of Efficacy of Cannabinoids versus Commercial Oral Care Products in Reducing Bacterial Content from Dental Plaque: A Preliminary Observation. Cureus. 2020 Jan 29;12(1):e6809. doi: 10.7759/cureus.6809. PMID: 32038896; PMCID: PMC6991146.
  3. Vasudevan, K., Stahl, V. Cannabinoids infused mouthwash products are as effective as chlorhexidine on inhibition of total-culturable bacterial content in dental plaque samples. J Cannabis Res 2, 20 (2020). https://doi.org/10.1186/s42238-020-00027-z

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