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今や毎年秋のネットワーキング・イベントとして恒例になったインターナショナル・アソシエーション・フォー・カンナビノイド・メディスン(IACMの学術会議が、10月31日から11月2日までの3日間、ベルリンで開かれました。優れた科学者、医師、教育者、そしてビジネス界の人々が集うこの会議で、今年大きな話題だったのは、高齢者と、加齢に伴う疾病に対する医療大麻の利用でした。

大麻は高齢者が使っても安全?

世界中で、今最も医療大麻の使用者が増加しているのは高齢者層です。医療大麻は高齢者が使っても安全なのでしょうか? そこにはどんな恩恵があるのでしょうか?

その質問に答えたのは、医師の監督のもとに医療大麻を使っている高齢者について調査したイスラエルの研究者たちでした。イリヤ・レズニック(Ilya Reznik)博士は、イスラエルの高齢者用医療機関で 184名の患者を対象とした前向き観察研究を行いました。患者の 83% が 75歳以上でした。1 2 3 4

この研究では、医療大麻の使用を始める前にそれぞれの患者について包括的な検査を行い、6か月後に追跡評価を行いました。調査に参加した患者の中に、これ以前に大麻を使った経験がある人は一人もいませんでした。患者の殆どは慢性疼痛(77%)の他、睡眠障害がんに関連した症状、気分障害パーキンソン病など、加齢に伴う症状がありました。

大部分(66%)の患者には、オイルを舌下に垂らすという方法で医療大麻を投与し、約半数が一日3度摂取しました。

研究の目的は、医療大麻の効能、および認知機能や心臓血管系に生じる副作用の頻度や危険性、また姿勢が不安定になったりそれ以外の問題が生じないかを評価することでした。ほとんどの場合、副作用は比較的軽微で、副作用が見られたのは参加者の 1/3 ほどでした。副作用には、目まい(12%)、眠気(11%)、口渇などが含まれました。

最も重要なのは、6か月後の追跡評価で、医療大麻を使っている人の 1/3 が、オピオイド系その他の鎮痛薬や抗炎症薬の使用をやめることができていたという点です。

高齢者のための医療大麻プロトコル

イスラエルの高齢者専門医でレズニック博士とともに調査を行ったアディー・ロン(Addie Ron)博士は、プレゼンテーションの中で、この高齢者前向き観察研究の資金を提供したソロカ大学研究所およびクリニックのためにチームがデザイン・実践し、成功を収めたプロトコルの詳細を紹介しました。

医療大麻の服用を始める前にまず、高齢の患者一人ひとりについてリスク便益分析が行われました。多剤併用、神経系の機能が弱まっていること、心血管系リスク、薬物動態変数などを考慮して、慎重な方法をとることが推奨されました。

「害をなすなかれ」という原則に基づき、医療大麻の用量については、「少なく始めてゆっくり増やす」というアプローチが取られ、7日毎に5ミリグラムずつ、期待した効果が得られるまで増やしていくというプロトコルを採用しました。具体的には次のような用量の指示が患者に与えられました。

  • 1日目〜3日目:THC 5ミリグラム + CBD 5ミリグラム
  • 4日目〜6日目:THC 10ミリグラム + CBD 10ミリグラム
  • 7日目〜14日目:THC 15ミリグラム + CBD 15ミリグラム

それぞれの患者について、副作用と効果の有無を綿密に記録しました。望んだような効果が現れたら用量はそれ以上増やさず、そこで固定しました。

ほとんどの患者は、大麻オイルを舌下投与する方法を選び、すべての人で良い結果が見られました。CBDTHC の併用に関しては、0.75ミリグラムから 1.5ミリグラム程度の、陶酔作用を起こさない低用量の THC を一日2度摂取しても問題はなく、体機能の改善、体重増加、認知機能の改善、便秘の軽減、可動性の改善が見られました。[4]

医療大麻とアルツハイマー病

世界中でアルツハイマー病と診断されている人は 3,500万人にのぼり、この神経変性疾患の治療には、革新的なアプローチが緊急に求められています。医療大麻は認知症の患者を救えるのでしょうか?

スペインのマドリッドにあるコンプルテンセ大学でハビエル・フェルナンデス・ルイス(Javier Fernandez-Ruiz)博士が率いる研究チームは、アルツハイマー病におけるエンドカンナビノイド・システムの役割を調べています。IACM のカンファレンスでフェルナンデス・ルイス博士は、健康な脳の神経細胞の保護、レスキュー、置換に関与するカンナビノイド受容体が、アルツハイマー病の患者では正常に調節されなくなると報告しました。[5]

たとえばドネペジルのように、処方薬の中には、記憶や認知力に関与する重要な神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する、アセチルコリンエステラーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害するものがあります。カンナビノイド、中でも THC にはこれに似た働きがあり、アセチルコリンエステラーゼを阻害することがわかっています。さらに、カンナビノイドにはそれ以外にも、食欲増進、体重増加、不安や攻撃性の軽減といった有益な作用があります。[6]

イスラエルの別の研究チームは、医療大麻製品の製造企業 Tikkun Olam 社の協力を得て、高 CBD 品種の大麻草全草から製造されたオイルをアルツハイマー病に起因する興奮(進行した認知症の患者に多い症状)の対処に使用する際の安全性と効果を検証するための、第 II 相無作為化二重盲検対照比較試験を行いました。[6]

平均年齢 79歳の患者 64名が、16週間(タイトレーション 6 週間、一定の用量での評価期間 10週間)の治験に参加しました。週に一度の検査では、次の点が重点的に評価されました。

  • 生命兆候
  • 体温
  • 身体検査
  • 血圧
  • 脈拍
  • 身長/体重
  • 行動障害(コーエン・マンスフィールド agitation 評価票に基づく)
  • NPI
  • 臨床全般印象度の重症度/興奮・攻撃性
  • ミニメンタルステート検査
  • 気分(GDS の質問表に基づく)
  • 安全性テスト
  • 併用中の薬
  • 有害事象


臨床試験の結果、大きな有害事象はなく、CBD オイルを投与された患者の 72%で認知症に起因する興奮が軽減されました(偽薬を投与された集団では 30%でした)。論文の著者は、高 CBD オイルは安全な治療薬として、興奮をはじめとする認知症患者の行動に現れる症状を軽減できると結論しています。

結論

IACM 2019 で報告された研究や臨床事例は、医療大麻製剤、中でも THC の量が CBD よりも少なく、摂取方法が舌下投与であるものは、非常に安全であるということを裏付けています。また、医療大麻が、加齢に伴う正常あるいは病的な肉体の衰退を軽減することで、高齢者の生活の質を改善する一助になる可能性も指摘しています。つまり、高齢者の認知機能と運動機能を改善し、体重を増加させ、便秘を軽減し、全体としての肉体機能を高めるのです。


Project CBD の寄稿者 Viola Brugnatelli は、cannabiscienza.it のサイエンス・ディレクターであり、イタリアのパドゥア大学で医療大麻による治療を教えている。Project CBD は、医療大麻に関する医学的研究を毎週サマリーとして数か国語で発信する IACM のアメリカにおける大使である。


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参照文献

  1. Reznik, I., (2019). The medical use of cannabis in elderly. In Cannabinoid. Berlin, 1/11/19. Berlin: IACM. 14.
  2. Minerbi A., Hauser W., Fitzcharles M. A., (2019). Medical cannabis for older patients. Drugs & Aging., 36:39-51
  3. Abuhasira R, Schneider L. B., Mechoulam R., et al. (2018). Epidemiological characteristics, safety and efficacy of medical cannabis in the elderly. Our J Intern med., 49:44-50
  4. Ron, A., (2019). Medical cannabis for older patients – treatment protocol and initial results. In Cannabinoid. Berlin, 1/11/19. Berlin: IACM. 25
  5. Fernandez-Ruiz, J., (2019). Towards a cannabinoid-based neuroprotective therapy for neurodegenerative disorders. In Cannabinoid. Berlin, 2/11/19. Berlin: IACM. 18
  6. Bar-Lev Schleider, L., (2019). A Phase II randomised double-blind placebo-controlled trial to investigate the efficacy and safety of avidekel oil for the treatment of patients with agitation related to dementia. In Cannabinoid. Berlin, 2/11/19. Berlin: IACM. 26

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