Project CBD is made possible by the support of our partners.

近年の医療大麻の歴史における決定的な瞬間は、2013年、CNN の医療レポーターであるサンジェイ・グプタが、カンナビジオール(CBD)が持つ奇跡的とも言える抗けいれん作用によって、コロラドに住む5歳の少女シャーロット・フィギーの生活がどのように変容したかを報告したときに訪れました。17 種類の抗てんかん薬を使っても止められなかったシャーロットのてんかん大発作が、CBD を豊富に含む大麻オイルによってほぼゼロになったのです。

突如として、「大麻に治療効果があるか」という議論は意味を失い、医療大麻を使う新たな正当性が生まれました — ただし、7年後の今でもアメリカ連邦政府はその事実に追いついていませんが。

これも運命のめぐり合わせなのでしょう — シャーロットと献身的な彼女の両親が幸運だったのは、先見性に満ちたアドバイスを与えて彼らを陰で支えたヒーローがいたことです。自称「保守的な」一人の医師がシャーロットに、高 CBD / 低 THC の大麻を勧めなければ、医療大麻をめぐる環境には今でも、もっとずっと敵が多かったかもしれません。

それがアラン・シャックルフォード(Alan Shackelford)医師です。

医師教育

後にシャーロットの主治医になるに至るシャックルフォード医師の、医師としての経歴は、大学生時代、ドイツのハイデルブルグ大学で学ぶことを選んだことに始まりました。そこでは、科学的な研究と臨床医としての仕事の両方に関心のあった彼を満足させる教育が受けられたからです。

「ハイデルブルグ大学ではたくさんの研究に携わりました。泌尿器系の免疫反応を、腎臓、および膀胱と尿道について研究し、動物実験や基礎実験もしましたし、臨床研究もしました。医大時代に、主筆または共著者として発表した論文は5本あります」とシャックルフォード医師は言います。

アメリカに戻ると若きシャックルフォード医師は、ハーバード大学医学部の栄養学研究員として、食物中の脂肪を操作することが免疫学的にどんな影響を与えるかについて、また、疾患の発生と進行、治療と治癒に関して人の行動が与える影響についても研究しました。

Project CBD が、その頃彼はすでに医療について、よりホリスティックな考え方をしていたのかと尋ねると、その頃はまだ、標準的な医学に忠実だったという答えが返ってきました。

「その頃の私はまだ非常に保守的でしたが、単に標準的な教科書に書かれているやり方以外にも物事に対処する方法があることは知っていました。つまり偏見はなく、病気を治すより良い方法を常に模索していました。より良い方法というのは必ずあるものですし、すでに私たちがやっていることをより改善してくれる、新しくて画期的な治療法が存在するんです」

ボストンで3つめの特別研究のポジションを終えると、シャックルフォード医師はコロラド州デンバーに移り、職業医学の分野に携わりました。大麻の医療利用はコロラド州ではまだ合法化されておらず、彼も医療大麻については知りませんでした。

「真偽のほどのわからない体験談によれば、食欲を刺激したり、疼痛を緩和したり、吐き気を抑えるといった効果がある可能性はありましたが、私は関心がありませんでした」と博士は認めます。

2000年代になると、コロラド州は全米で7つめの医療大麻の合法州となり、初めは時間がかかりましたが、やがてシャックルフォード医師のところにも医療大麻を求める患者がぽつぽつとやって来るようになりました。

「人々は医療大麻を求め始めました。主治医に、医療大麻を試したい、と言うようになったんです。ある日私の患者の1人が、『効果があるかどうか試してみたい』と言いました。私は興味を持ちましたが、同時にためらいました — 文献を探しましたがほとんど見つからなかったからです」

最初の患者が医療大麻によってオピオイド系の薬をやめたのを見ると、シャックルフォード医師の関心はさらに高まりましたが、医療大麻を人間の患者に使用することに関する医療文献が全体として欠如していることに驚きました。根っからの研究者であるシャックルフォード博士は、当時存在していた科学文献を洗いざらい調べることにしました。

シャーロットの幸運

「ペイジ・フィギーから電話が来るちょっと前に私はたまたま、1980年にミシューラム博士が発表した『健常な成人とてんかん患者に対する日常的なカンナビジオール投与』と題された論文を読んでいました。それで、シャーロットに一日に 300回もの大発作があると聞いたとき、もちろんその論文のことを思い出したんです。論文には、8人中7人のてんかん発作を減らすのに CBD が奏効したと明確に書かれていました」

2012年には、CBD を含む大麻品種は一般的に、医療効果の宝庫というよりも、ストーナーたちをがっかりさせるもの、と思われていました。

「これもまた幸運でしたが、私はコロラド州に、CBD の含有量が非常に多く THC の含有量が比較的少ない品種があるということを耳にしていました。それもまたパズルのピースの一つでした。色々なことが、なんというか、正しいときに正しい場所に揃ったわけなんです。私には、この幼い少女と彼女の家族に対し、私がそれまでに学んだ知識を使ってできることをする義務がありました — 高 CBD の大麻の存在を知っていることや、ラファエル・ミシューラム博士の論文を読んだことを含めてね」

「実に正確さを欠いていましたよ」とシャックルフォード医師は認めます。「体重1キロあたり3ミリグラムを摂らせたいんだが、抽出物の中に CBD がどれくらい含まれているかを測る方法がない、と私は言いました。ペイジは高 CBD の大麻をコロラドスプリングスの自宅に持ち帰りました。それをオイルに浸出させてシャーロットに飲ませたところ、シャーロットの発作が丸1週間止まったんです。その後、時折発作が起こることはありましたが、一日 300回あった発作が、最初の1週間は一度も起こらなかったんですよ。圧倒的な結果です。それで私には、CBD がものすごく重要なものであることがわかったんです」 

アメリカで研究を阻むもの

サンジェイ・グプタが CNN のドキュメンタリー番組のためにシャックルフォード医師にインタビューしたとき、シャックルフォード医師はすでに、イスラエルで大麻の抗けいれん作用について研究する可能性について模索中で、ミシューラム博士と、イスラエルの医療大麻プログラムの統括者とも会って話をしていました。でも、CNN で2013年に『WEED』という番組が放映されたとき、彼は自分の研究が向かうべき方向性を確信したのです。

「シャーロットと同じ苦しみを味わっている子どもを持つ世界中の親からの電話が引きも切りませんでした」と当時を思い出してシャックルフォード医師は言います。「もちろんそれはその子どもにとってトラウマですが、多くの場合、そのことが家族に与える影響も大きく、悲劇的なのです。電話をしてくる人たちの多くは、子どもたちを助けたくて必死でした。そしてそのことがますます私に、この先これについて研究し、完璧なものにし、世界中の子どもたちがこれを使えるようにしなくては、と痛烈に思わせたんです」

ところが、多くの大麻研究者の例に漏れず、シャックルフォード医師の研究の計画は、大麻の医療利用研究に対する出資に反対する政府機関の偏見によって妨害されました。アメリカでは大麻草の医療利用に関する研究が基本的にできないため、シャックルフォード医師は、大麻草の医療効果を研究するための最善のオプションはイスラエルに行くことであると結論しました。

「イスラエルは、1960年代後半〜1970年代前半から、大麻の研究に対してとてもオープンでした」とシャックルフォード医師は言います。「イスラエルでも、面倒な手順や手続きが必要なのは同じですが、アメリカには踏むべき手続きさえ存在しません。現在はいくらかありますが、当時は試すことさえ不可能でした。大麻についてよりよく理解し、より効果のある、嗜好のためではなくて医療のための大麻製剤を作るために必要な研究を行いたければ、私はイスラエルに行く必要があったのです。今でもそれは同じです」

医療大麻市場をにらんで

ペイジ・フィギーが娘のシャーロットのために、シャックルフォード医師が見つけた高 CBD の大麻草から CBD オイルを抽出してから8年、世界には今、シャーロットの名前をとって名付けられたシャーロッツ・ウェブを含むたくさんの CBD 製品が溢れています。

ところが、医師という立場からすると、医療大麻を使うことを患者に推薦したからと言って、高品質で品質が一定の医療大麻製品が患者の手に入るという保証はありません。シャックルフォード医師はこの点を非常に不満に思っています。

そこでシャックルフォード医師は、Shackelford Pharma という会社をカナダで創業しました。ただし、研究のほとんどはイスラエルで行われています。「私の名前を会社につけることには乗り気ではありませんでした。私に注目を集めたくなかったんです。重要なのは、私たちの研究が役に立てる患者でした。でも私の反対は却下されてしまってね。Shackelford Pharma はすでに操業中で、何年もの間考えてきたゴールのすべてを達成するでしょう」

「私は、三叉神経痛やニューロパシーに見られるような神経性の疼痛について研究したいんです。一般的に言って疼痛というのは非常に興味深いし、安全で信頼に足る疼痛の治療法は存在しません。オピオイド薬がもたらした危機的状況や、毎年 10万人以上の、主に高齢なアメリカ人が副作用によって病院に担ぎ込まれる非ステロイド系抗炎症薬関連の問題を見てもそれがわかります。つまり、我々がかなり安全だと思っている薬は実は安全ではなく、その点について改善できれば — 大麻を使って疼痛を効果的かつ非常に安全に治療できれば — それだけで大変な進歩です。そうしたすべての可能性について考えているんです」

「Pharma」という名前から、シャックルフォード医師はカンナビノイドの単一分子あるいは合成カンナビノイドの医療品化について研究しているのだと思う人もいるかもしれませんが、大麻草全草を無視しようとしているわけではありません。シャックルフォード医師が目指しているのは、てんかん、疼痛、その他の疾患の治療において、個々のカンナビノイド、またさまざまな品種の大麻草全草が果たす役割を慎重に評価し、より効果的な治療法を開発することです。

「大麻草全草も、単離された個々のカンナビノイドも研究します、それぞれに固有のベネフィットがありますからね」とシャックルフォード医師は言い、「大麻草全草の研究を放棄する気はまったくありませんよ。非常に面白いし、今はとてもエキサイティングな時代だと思いますね」と付け加えます。

大麻がもたらす希望

シャックルフォード医師は、デンバーの医院で診ていた患者たちを放棄したわけでもなく、今も診療を続けています。

「大麻が治療法の選択肢となったこと — 代替療法ではなく、最初から治療法の一つとして選択が可能になったことは私に、本当に厄介で私たち全員を悩ませている医療問題には、実はこれまでとは違う解決法が、実際に使える解決法があるのではないか、という希望と自信を与えてくれました。だから私は医療の未来について以前よりずっと希望を持っていますし、人として希望を感じていますよ」

「個人的には、患者が元気になり、仕事に戻り、家族のために収入を得られるようになるのを目にするのはたとえようもなく嬉しいことです。私にとってそれは信じられないような、心から感動的なことで、自分がその変化をもたらしたのだと感じられるんですよ。そして私たちの誰もが人として、また医師ならばなおさら願うべき一番大切なことは、人々の生活に変化をもたらすことです。私が偏見を持たなかったこと、少なくとも大麻をオプションの一つとして試すのをためらわなかったことで、この世界をより良い場所にできたのかもしれない、と考えると、この上なく謙虚な、ありがたいという思いがこみ上げますよ。素敵なことじゃないですか」

COVID-19の犠牲になったシャーロット・フィギーの思い出に捧ぐ

アラン・シャックルフォード博士のインタビューの全編は、ポッドキャスト Cannabis Voices でお聴きいただけます。


Project CBD の寄稿者メアリー・バイルズ(Mary Biles)は、ホリスティックヘルスに造詣の深いジャーナリスト、ブロガー、エデュケーター。『The CBD Book: The Essential Guide to CBD Oil』の著者であり、ポッドキャスト「Cannabis Voices」のホストでもある。ウェブサイトはこちら


当サイトの著作権は Project CBD にあります。許可なく転載を禁じます。


Project CBD is made possible by the support of our partners.

More from this category