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医学における偉大な発見が常にそうであるように、それはまず、あるときカナダ人医師ヴィンセント・マイダ氏が、脂質によく溶ける大麻成分が下腿潰瘍を貫通し、その下にある大量のカンナビノイド受容体に届くということに気づいたことから始まりました。

マイダ医師ほど創傷のより良い治療法を見つけることに熱心な人はいません。マイダ医師が手掛ける事業の中には三次創傷クリニックがあり、トロントとその近郊の、最も治癒が困難な下腿潰瘍の患者を診ています。

「皮膚の創傷は、医療効果指標が最も低い分野です」とマイダ氏は言います。「ところが医療費は膨大です — 米国では年間 800 億ドルを超える金額が創傷の治療に使われています。そしてそのほとんどは役に立たず、何の効果もない馬鹿げた包帯に使われるんですよ」

断固として治ろうとしない脚の傷

自分自身が高齢であったり、70歳以上の人の介護をしていない限り、下腿潰瘍について深く考えたことがある人はいないでしょう。下腿潰瘍とは、治癒するのに 12週間以上かかる傷のことです。

実際に私も、私と同様に若い頃から脚にたくさん静脈瘤を持つ兄に、傷口がどうしてもふさがらない下腿潰瘍ができるようになるまで、それについて考えたことはありませんでした。

座っていることが多いライフスタイルであったため、そもそも問題のあった兄の静脈還流は、なんということのない腫れや擦り傷が癒えるために十分ではなく、それが開放創になってしまいました。

下腿潰瘍の標準的な治療は、『創面環境調整(WBP)』と呼ばれるもの(マイダ医師が言うところの「馬鹿げた包帯」)と、静脈還流を助けて治癒を早める圧縮包帯です。併発する感染があれば抗生物質の処方も一般的ですが、マイダ医師によれば、必要以上に処方される傾向があるそうです。

兄の場合、包帯交換のために週に二度の通院を3か月続けて傷口が閉じました。でもマイダ医師によれば、兄は 12週間以下で潰瘍が治った幸運な4割の人の一人だったのです。残る6割の人は、脚に何年も開放創を抱えたままのこともあり、最悪の場合は脚の切断、敗血症、ときには死につながることもあるのです。

治癒を遅らせるオピオイド薬

潰瘍はまた一般的に非常な痛みを伴い、約7割の患者が痛みを抑えるためにオピオイド薬を処方される、とマイダ医師は言います。

痛みは身体の治癒能力を弱めるだけでなく、オピオイド薬そのものが慢性的な創傷の治癒を遅らせるということも今ではわかっています。北米全土では現在もオピオイド危機による大きな被害が続くなか、創傷による疼痛を管理し総合的に治癒するための、これまでとは違うアプローチを見つける必要があることは明らかです。

そこで再びマイダ医師の閃きの話に戻ります。

現在使われている MBP プロトコルに代わる、より効果的な治療法を見つけると堅く決意したマイダ医師は、トロントにあるダライ・ラマ公衆衛生大学で修士課程を履修しました。

「カナダのように、医療大麻合法化への道筋ができつつあった国で働いていて、あるとき閃いたんですよ、大麻や大麻の成分が皮膚と創傷の治療に役立つのではないか、とね」

こうしてマイダ医師は、大麻に含まれる化合物の創傷治癒効果についての基礎研究のデータを分析し始めたのです。

大麻と閃き

指摘しておきたいのは、ここで話題にしているのは THCCBD といったカンナビノイドだけでなく、βカリオフィレンなどのテルペンや、ケルセチン、ジオスミン、ヘスペリジンというフラボノイドも含んでいるということです。実際にアメリカでは、FDA に承認されたダフロンという医薬品がすでに静脈循環障害の治療薬として販売されていますが、これはジオスミンとヘスペリジンが含まれています。

とは言え、大麻に含まれる化合物がこれほど潰瘍の治療に適している理由は、創傷を通して直接その下にあるカンナビノイド受容体に届くからです。

「人間の皮膚の表面は比較的外からのものが侵入しにくいんです」とマイダ医師は説明します。「傷のない肌はあまりものを吸収しません。ところが創傷部位には表皮がなく、さまざまな種類の分子が、開いた傷口を通してはるかに速やかに浸透できるのです」

「ここからが面白いんですよ。なぜかと言うと、エンドカンナビノイド・システム(ECS)は頭から爪先まで全身に存在していることがわかっています。恒常性維持という観点から見ると、皮膚は身体の中で最も重要な化学信号伝達システムです。細胞の表面に発現しているだけでなく、最近の研究は、ECS は細胞内レベルでも非常に影響力があることを示しており、そこからさまざまな遺伝子調節能力が考えられるようになるんです、後成的機構その他のね」

つまり、大麻入りの外用薬が、どうやって表皮から吸収させるかという点で苦労することが多いのと違い、少なくとも創傷管理にとっては、大麻入り外用薬はまさに理想的な治療薬なのです。

有望な初期の研究結果

そしてマイダ医師の患者の反応はこのことを裏付けているように見えます。

データを体系的にレビューした結果に基づいて独自にブレンドした大麻成分を使って、マイダ医師は自分のクリニックで恐る恐る患者の治療を始めました。

「私の創傷クリニックは、不満足な現状を改善できる可能性がある新しい何かを試すにはピッタリの環境でした。そこで私は重篤な中でも最も重篤な患者に声をかけ、その患者を治すことができました。それで思ったんです — 最悪中の最悪な創傷を治すことができるなら、もっと一般的な創傷にはどれほど効果があるだろう、と」

高齢の患者2名の治療体験をまとめた暫定的な研究結果によれば、6か月以上にわたって開放創に苦しんでいたにもかかわらず、二人の創傷は大麻をベースにしたマイダ医師の治療によって平均 73日で完全に治癒しました。それだけでなく、疼痛も大幅に軽減し、63日目には他の鎮痛薬が要らなくなりました。

さらにマイダ医師が自費で行ったオープンラベル研究では、難治性下腿潰瘍の患者 14名を大麻入りの外用薬と圧縮包帯で治療したところ、79% の患者が、なんとわずか 34日で治癒したのです。

素晴らしい結果ではありますが、マイダ医師は、これが少数の患者を対象とした暫定的な結果に過ぎないことを誰よりもよく知っており、最終的には大麻をベースとした彼の外用薬の製品化に必要な治験を、国際的なバイオテクノロジー企業が行ってくれることを願っています。

でもそれまでは、マイダ医師は自分の使命を果たし続けるつもりです。

「私は第一走者なんですよ」と彼は言います。「トラックを全速力で走るつもりです。でもいずれは他の、マラソンを走り続けてくれる人にバトンを渡さなければならない。少なくともそれが私の役目なんです。私の使命なんですよ。そしてゴールしたら、創傷治療の世界には素晴らしい可能性が待っていると思います」

ヴィンセント・マイダ医師のインタビュー全編は、メアリー・バイルスがホストを務めるポッドキャスト Cannabis Voices で聴くことができます。


参考文献

  1. Victoria K. Shanmugam et al. Relationship between Opioid Treatment and Rate of Healing in Chronic Wounds. Wound Repair Regen. 2017 Jan; 25(1): 120–130.
  2. Sachiko Koyama et al. Beta-caryophyllene enhances wound healing through multiple routes. PLoS ONE 14(12): e0216104
  3. A Gopalakrishnan et al. Quercetin accelerated cutaneous wound healing in rats by increasing levels of VEGF and TGF-β1 Indian J Exp Biol  2016 Mar;54(3):187-95.
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  5. V Maida et al. Topical cannabis-based medicines – A novel paradigm and treatment for non-uremic calciphylaxis leg ulcers: An open label trial. Int Wound J 2020 Oct;17(5):1508-1516
  6. V Maida et al. Topical cannabis-based medicines – A novel adjuvant treatment for venous leg ulcers: An open-label trial. Experimental Dermatology. 2021 Sep;30(9):1258-1267.

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