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パメラは3人目の子どもを妊娠したばかり。パメラも、パメラの夫も、おそらくはこれが最後の子どもだと思っています—パメラのつわりがひどく、一日中吐き気が止まらないからです。こういうときの工夫は色々知っています。塩味のクラッカーを枕元に置く。ビタミンB6とB12を摂る。胃はムカムカしても食べる回数を増やす。生姜も食べたし、鍼灸も試したし、催眠療法を受けることも考えました。でもどれも効果はなく、さらに、まだまだ手がかかる上の子2人の世話のストレスが加わって、悲惨な妊娠生活なのです。3人目の子どもはとても欲しいのですが、近頃は、これほどの悪心と嘔吐を味わう価値があるのだろうかと、後ろめたい疑問を抱くことがあります。

主治医に相談したところ、薬を勧められました。ドロペリドール(抗精神病薬)、メトクロプラミド(眠気と目眩を引き起こす)、ジフェンヒドラミン(眠気を引き起こす)、またはゾフランです。副作用はないしお腹の子どもも心配ないと主治医は言いましたが、パメラはできることなら医薬品は使いたくありませんでした。

パメラは長年、折に触れて大麻を使ってきました。子どもがようやく寝付き、やっと自分の時間が取れた一日の終りに吸う大麻は、ストレスの解消に役立ちました。過去には疼痛緩和にも効き目がありましたし、短期間の不眠症に悩まされたときには安眠の助けにもなりました。大麻が吐き気、食欲増進、ストレスの解消に役立つことも知っていましたが、妊娠中に使っても安全かどうかは知りませんでした。そこでオンラインで情報を集めました。

インターネット上には相矛盾する情報がありました。妊娠中に大麻を使っても何の問題もないと書いてあるウェブサイトもありましたし、脳に障害が出たり、早産につながったり、子どもが健康で元気に育たなかったり、その他恐ろしい影響があると警告するウェブサイトもありました。論文もいくつかあるようでしたが、きちんと行われた研究なのでしょうか? 信頼できるでしょうか? 掘り下げて調べ、本当のことを知るにはどうすればいいのでしょう?

妊娠中の大麻使用

私はホームドクターとして、数百人の出産に立ち会ってきました。北カリフォルニアに住んでいるので、私の患者の多くは大麻を使っていますし、私には正直に話しても大丈夫だとわかると、出産前の大麻使用について多くのことがわかりました。

吐き気を抑えたりストレスを軽減するために大麻を使っている母親はたくさんいます。

吐き気を抑えたりストレスを軽減するために大麻を使っている母親はたくさんいます。大麻を使うことがライフスタイルの一部であるから使っている、という人もいます。私は診察中に患者と話し、正直なところ、科学的な研究からは結論が得られていないので、大麻の使用が胎児に有害かどうかわからない、と正直に言いました。

私の経験上、大麻が原因の問題が起きたことはありませんが、お酒やその他の薬物が原因の問題は見たことがありました。私は患者と、「使用する」と「乱用する」の違いについて話し合い、もしも大麻を使うつもりならば、きちんと考えて使うように言いました。つまり、必要な症状の緩和のためにマイクロドージングすることです。

けれども、私の私生活や医師としての経験だけでは、患者に提供する情報の源としては不足です。そこで私は色々調べることにし、文献を検証し、査読を経た医学誌の記事を読み、試験のデザインとその結果についての評価を始めました。

事実とリスク

この記事では、事実を検証していきます。研究の結果を精査し、その重要度を査定します。また妊娠中に大麻を使った人たちの子どもの現在の健康状態も調べます。ここでお伝えする情報は、あなたが妊娠中に大麻を使うかどうかを決めるのに役立つことと思います。

大切なのは、妊娠中に食べるもの、飲むもの、使う薬その他、体の外側からの影響に関するさまざまな助言は、どれも非常に慎重かつ恐ろしいものばかりであることを忘れないことです。もしも子どもに何かあったら誰の責任なのか? 誰かのせいにすれば、罪の意識や裁判沙汰、また一生の後悔につながります。そもそも、妊娠し、9か月間お腹に赤ん坊を抱えているというだけでも、母親と胎児に避けられないリスクは付き物ですが、中には、母親が生まれてくる子に与え得る害を際限なく考えてしまう人もいます。

注意:この記事で検討される大麻の使用とは、きちんと検討され、明らかに必要な場合の使用に限られます。たとえば、吐き気、痛み、睡眠、あるいはストレスの軽減など、医療的な目的のために使う場合です。大麻を使用する場合は常に、薬としての力を理解し、よく考えて使うことをお勧めします。

内因性カンナビノイドは必須の成分

妊婦による植物性カンナビノイドの使用を検討する前に、まずエンドカンナビノイド・システムと、それが新しい生命を生み出すのに果たす重要な役割について考えてみましょう。実は、人間の体が自ら作る内因性カンナビノイドは、受精、胎児の発達、そして新生児の生存には欠かせないものなのです。[1]

  • 受精卵が子宮内に着床するためには、人間の脳内に存在する最も一般的な内因性カンナビノイドであるアナンダミドが、一時的かつ局所的に減少する必要があります。
  • エンドカンナビノイド・システムは、幹細胞のニューロンへの分化を調節し、軸索誘導とシナプス形成(正しく結合させる)を導くことで神経回路を形成します。
  • アナンダミドは、発達中の脳を、自然に起こる外傷性の神経細胞脱落から護ります。
  • 新生児の生存に欠かせない、乳を吸うという行為は、新生児の脳内のCB1受容体が活性化されることによって引き起こされます。

胎児、および新生児の成長とエンドカンナビノイド・システムの間にある根本的な関係を知れば、エンドカンナビノイド・システムが果たす役割の重要性を改めて認識することになりますが、同時に、そこに植物性カンナビノイドを取り入れることについての懸念もまた強まるかもしれません。

出生時体重の低下・早期陣痛・新生児集中治療室の需要の増大が起きる?

大麻を使うことで私たちが懸念するのは、赤ん坊の脳の配線がおかしくなったり、妊娠中あるいは出産時の問題や新生児集中治療室での治療の必要性が増えたり、子供の成長後に精神状態が起きたり、学業成績が劣ったり、依存症が増えたりすることです。大麻を使うことが子どもに害を及ぼすかもしれないというのは、多くの妊婦、医師、助産婦などにとって恐ろしい可能性です。

私の仲間の間で最もしばしば引用される記事は、2011年にHayatbakhsh博士のチームが発表したもので、オーストラリアでの7年間にわたる観察の結果です。25,000人近い妊婦に面談による質問を行い、そのうち2,400人以上が大麻使用の経験があることを認め、637人は面談当時、つまり妊娠中に大麻を使用していました。論文の結論には次のように書かれていました。

「妊娠中に大麻を使用した場合、出生時体重が低い(375グラムの差)、早産、妊娠期間に対して胎児が小さい、新生児集中治療室に入室する新生児の増加その他、出生にネガティブな影響を及ぼすということが強く、また顕著に予測された」[2]

私自身の経験上はこのようなことはありませんでしたから、私はこの研究を慎重に精査しました。研究では、社会経済的な状況、他の薬物との併用、アルコール、煙草、その他不法薬物の使用なども考慮していましたが、これらの影響を差し引いても統計的に有意な結果が出ることに変わりはありませんでした。

調査によれば、8%から29%の女性が妊娠中に大麻を使用しています。

私はさらに検証を続け、Hayatbakhsh博士のデータには問題があることがわかりました。まず、データ取得の方法が問題でした。妊婦の面談は、妊娠中期に行われる一般的な定期検診の一環として、私立ではなく公立の産科病院で行われていたのです。データをコンピューターに入力したのは助産師で、現在大麻を使用していると答えた人は、病院のアルコールと薬物の専門家による指導の対象となりました。過去に使用したことがあると答えた人は続けて現在の使用について質問されました。

想像してみていただきたいのですが、仮にあなたが、妊娠中という弱い立場にあるあなたを助けてくれている助産師と机を挟んで座っているとします。助産婦さんに薬物の使用について尋ねられたら、あなたは本当のことを言いますか? これを言ったら薬物乱用者のための特別な制度の利用を勧められることになる、という内容を、あなたは認めますか? 「はい」と答えた人は少数派でしょう。このような自己申請による集団からは正確なデータは得られません。若い女性のいったい何人が、自分の大麻利用について正直に答えることができるか、ということによって、エビデンスが偏るからです。

別の場所で行われた調査もまた、データ取得の方法についての私の懸念を裏付けています。「妊娠中の女性のうち、面談の2か月から12か月前に大麻を使用したと自己申告するのは7% [3] だが、大麻の使用を自己申告または尿検査によって測っている調査では、大麻の使用率は8%から29%と幅広い [4]」のです。

さらに、大麻を使用していると答えた母親とその子どもについて、長期的な追跡調査は一切行われていません。これらの欠点を見ると、この研究のデータには疑問の余地があると思わざるを得ません。私は続いて懸念事項を調べました。

神経発達異常

脳の神経回路がおかしくなる、と考えるのは、極端、過激、かつ恐ろしいことです。赤ん坊の脳に有害なことに自分が手を貸しているとは誰も思いたがりません。これはまさに重大な懸念です。

2011年に発表されたある論文によれば、THCは、胎児の脳内で内因性カンナビノイドによって自然に起きる、非常に効率の良い信号伝達を阻害します。脳にあるCB1受容体は、成長中の胎児の神経経路の発達に欠かせません。この研究では、THCがそこにあると、CB1受容体には内因性カンナビノイドではなくTHCが結合することがわかりました。

THCのテスト結果が陽性だった脳をこの論文の著者らが解剖したところ、そうした脳には、自然に存在しニューロン生成を司るSCG10というタンパク質が少ないことがわかりました。そこで著者らは、このようにSCG10が減少した結果、ニューロンの構造と方向性が異常な形で発達するのではないかという仮説を立てています。[5]

著者らは、ある一つの観察結果に基づいてある一つの仮説を立てたわけです。ですが、同じ観察から、THCは内因性カンナビノイドと同等の効果を持つ、という仮説を立てることもできますし、THCはSCG10よりも効果的であるという仮説を立てることさえできます。正直なところわからないのです。この論文からわかることは、THCが「カンナビノイド受容体ファミリーに属するさまざまな受容体と結合する」ということだけです。

胎内で大麻に暴露し、アルコールには暴露しなかった子どもは、脳の機能を示す行動測定において、対照群と比べて50%近く優れていました。

失読症、自閉症スペクトラム障害、胎児性アルコール症候群などの診断のために、神経発達異常を測る一般的な方法があります。大域的運動知覚(GMP)という、神経発達に異常があると特に問題が起こりやすいと考えられる脳の働きを示す行動を測るという方法ですGMPというのは、バラバラの部分にフォーカスするのではなく全体像を認識する能力です。たとえば、アメリカンフットボールのハーフタイム・ショーを見ているときに、チューバを吹いている楽隊員の一人にしか目が行かず、楽隊の動きがフィールド上に描くパターンの素晴らしさがわからないとしたらどうでしょう。GMPに問題がある人には、そのチューバ奏者しか目に入らず、全体像を見ることができないのです。

2015年に発表されたある論文は、妊娠中にさまざまな組み合わせでメタンフェタミン、アルコール、ニコチン、大麻に暴露された4歳半の子ども145人のGMPを測定し、薬物暴露がなかった子ども25人と比較しました。その結果は驚くべきものでした。[6]

予想された通り、胎内でアルコールに暴露した子どものGMPには問題がありました。ところが、大麻に暴露した子どもではそれが非常に優れていたのです! また、影響の傾向と強さも意外でした。アルコールには暴露せず大麻にのみ暴露した子どもは、大麻に暴露しなかった子どもに比べ、GMPを測るための課題で50%近く高いスコアを示しましたが、大麻とアルコールの両方に暴露した子どものスコアは、何の薬物にも暴露しなかった子どものスコアと差がなかったのです。複数薬物への暴露、言語性IQ、民族性、視力、性別の影響を調整した後にGMPに単独の影響を与えたのはアルコールと大麻のみでした。アルコールはGMPを低下させ、大麻はGMPを上昇させたのです。

学力

神経発達に関する調査の結果に安心して、私は次なる懸念事項についての調査に移りました。子どもが成長してからの学業成績についてです。ゴールドシュミット博士のチームは、2011年に発表された論文の中で「妊娠第1期の大麻への暴露と、14歳時点での学業成績の低下には有意な関連があった」と結論しました[7]。これは重要な長期的追跡調査です。

この調査の結果を評価するのはより困難でした。妊娠中の母親の飲酒、煙草、不法薬物の使用など、あらゆる変数が考慮されているようでした。それでもやはり、永年にわたって子どもを取り上げ、彼らの成長を見てきた私自身の経験では、大麻がそのような影響を与えているようには見えなかったのです。いったいなぜこの違いがあるのでしょうか?

私は統計学者に意見を求めました。論文を読んだ後、彼は「中間因子」について教えてくれました。中間因子というのは、原因と結果の関係に影響をもたらす要因のことです。この場合の中間因子は4つあり、重要度の順に並べると次のようになります。

  • 10歳時のうつの有無
  • 6歳時のIQテスト結果の異常
  • 10歳時の不注意の有無
  • 14歳未満での大麻の早期使用の有無

学業成績の影響が出るためには、その子どもが胎内で大麻に暴露し、かつ上記4つのうち最低1つの中間因子が存在しなくてはなりません。学業成績の不振の原因となるのは、単に母親が妊娠中に大麻を使用したかどうかではなく、複数の要因の組み合わせなのです。

重篤な精神疾患

次の懸念事項は、妊娠中に大麻に暴露した子ども—特に精神疾患の家族歴がある子どもの場合—に、重篤な精神疾患に罹る確率が高まる可能性についてでした。これは大麻が脳の機能を損なうという仮説とも重なっています。もしもTHCが脳の機能を損なうとしたら、それは統合失調症を引き起こす原因となるでしょうか? もしも十代の若者が大麻を使ったら、統合失調症を発症する確率が高まるのでしょうか?

この可能性について、ハーバード大学とボストンVA研究所が行った調査があります。彼らが答えようとした問いとは、「統合失調症に関する家系的な危険要因は、十代に見られる大麻喫煙と統合失調症発症の関連性の根底にある決定的要因か?」というものでした。

調査の対象は、ニューヨークとボストンの都市部に住む282人でした。また、対象者の一等親血縁者1,168人を含む合計4,291人の血縁者の情報も収集されました。大麻の使用歴と、統合失調症、双極性障害、うつ病、薬物乱用の家族歴が収集されました。その結果わかったのは、うつ病および双極性障害を発症する傾向の有無は、それらの家族歴があるかどうかに依存しているということでした。論文の結論には、「これらの抽出標本においては、統合失調症発症のリスクの高い家系であるかどうかが統合失調症発症の根本原因であって、大麻の使用は原因ではない」[8]と書かれています。

大規模調査

それでもまだ完全には安心できなかった私は、さらに論文を探し続け、カナダのオタワ州にあるカールトン大学による論文を見つけました。心理学者であるピーター・フリード博士のチームが、Ottawa Prenatal Prospective Study(OPPS)の一環として、妊娠中の大麻暴露について1978年から集め続けた時系列データです。研究チームは、約145人の子どもを対象に、22年間にわたって何百ものテストを行い、身体発育、精神運動能、感情的・情動的適応性、認知機能、知的能力、行動について評価しました。

この本格的な長期研究を終えてみると、胎内で大麻に暴露した子供と暴露しなかった子どもの間にはほとんど違いがないことがわかりました。わかっている交絡因子による影響を除外した後、フリード博士は、胎内でのアルコール、煙草、大麻への暴露を合計すると、子どもたちの発達および認知テストのスコアへの影響は8%以下であると推定しています。[9]

大麻に暴露した子どもとそうでない子どもの間に違いはほとんどありませんでした。

さらに、この問題の検証には、1994年に『Pediatrics』誌に掲載された小児科医メラニー・ドレーアー(Melanie Dreher)の研究が欠かせません。彼女の調査対象はジャマイカで大麻に暴露した子どもたちでした。調査規模は比較的小さく、妊娠中に大麻に暴露した24人の新生児と暴露しなかった新生児20人を比較しています。その結果、生後3日目には、暴露した子どもとしなかった子どもの間に差は認められませんでしたが、生後1か月では、大麻に暴露した子どもの方が生理学的により安定していることがわかりました。大麻のヘビーユーザーである母親から生まれた新生児は、自律神経、注意力、刺激に対する反応性、自己調節能力のテストスコアが高く、ケアギバーにより大きな喜びをもたらすと評価されたのです。[10]

これは妊娠中に大麻を使用している私の患者についての安心材料となりましたが、私には他にもう一つ検証したい情報がありました。

カウンターカルチャーの子どもたち

1970年代前半、一群の若者が「世界を救う」という高遠な目標を掲げ、精神性に根ざしたコミュニティを作ろうとサンフランシスコを離れました。彼らはテネシー州に180万坪の土地を買ってコミュニティを作り始めました。それは、皆が互いに調和して生きられる、世界の手本となるべきコミュニティであり、彼らはまた自分たちのコミュニティのみならず、広く人々を助けようとしていました。若い彼らは、町を形成するとともに家族を作り、テネシー州の森の中で自宅出産しました。出産に立ち会った助産師らは、アイナ・メイ・ガスキン(Ina May Gaskin)に指導された一般人で、大変に優れた技術を持っていました。彼らはこのコミュニティを「ザ・ファーム」と名付けました。

ここでは大麻が使われていました。大麻は彼らのカルチャーの一部であり、神聖なものとされていました。唯一、「草断ち」と呼ばれた2年間を除き、ザ・ファームに暮らして大麻が手に入る人のほとんどが日常的に大麻を喫煙していました。女性たちは妊娠中も大麻を使用し、中には分娩の際に使う人もいましたし、ほとんどの人が授乳中にも使っていました。つまり彼女たちは、40年前に、お腹の中の子どもを大麻に暴露させた集団なのです。ですから、その子どもたちが今どうしているかを調べれば、大麻への暴露が成長にどんな影響を与えたかを知る良い機会になると思いました。

Spiritual Midwifery』という本の第4版の中に、1970年から1994年の間にザ・ファームで生まれた1900人を超える子どもの公式統計があります。「在胎不当過小児」または「胎盤機能不全」の発生率は0.002%(4例)、また早産は0.01%(22例)でした。[11] 私はこれらの子どもたちが今どうしているか調べることにしました。

ザ・ファームに住んでいた家族の多くは、その高邁な目標を他の土地で追い求めるためにテネシー州を後にしましたが、彼らは今でも、ソーシャルメディアや、「部族」として過ごした共通の歴史を通してつながっています。私はザ・ファームで妊娠していた母親たちに連絡を取り、アンケートへの協力を求めました。みな興味を持ち、喜んで協力してくれました。

申し上げておきますが、これはアンケートであって科学的な調査ではありません。質問の多くは記入式になっており、チェックマークを付けるものではありません。ですから寄せられた回答は、統計的に報告するのが容易ではありません。けれども、すべてのデータや回答を読むと、いくつかの有益な情報が明らかになりました。

統計データ:

  • この報告には71人からの回答が含まれています。
  • 回答者の平均年は66歳でした。
  • この71人の回答は、ザ・ファーム在住中に生まれた子ども178人に関するものです。
  • ザ・ファームで暮らした平均年数は12年でした。
  • 子どもが生まれたのは1971年から1991年の間でした。このことが重要なのは、この時期、大麻のTHC含有量は現在と比べて概して少なかったからです。
  • 生まれた子供の54%が男の子、46%が女の子で、比率にすると男の子が女の子の1.2倍です。この数字は、アメリカの平均1.07に比べて若干男の子が多くなっています。
  • 回答者のうち、11%は大麻不使用、89%が使用していました。

興味深いことに、大麻は別に好きではなかったけれど、回ってくるジョイントを吸う方が、なぜ吸いたくないのかを説明するよりずっと簡単だったから吸った、とコメントした人が数名いました。大麻を吸うことに強い圧力があるカルチャーだったのです。

陣痛と分娩

私が驚いたのは、分娩時の大麻使用についてです。現在は普通はできないことですが、これは時代も場所も違うところでの話です。回答はきれいに2つに分かれ、50%の女性が分娩時に大麻で楽になったと答えています。コメントのほとんどはポジティブなものでしたが、少なくとも1人、大麻を吸ったら陣痛が途絶えてしまい、効果が消えるとまた始まったと答えた人がいました。これもまた、大麻の効果には個人差があるという例の一つです。

精神疾患と依存症

次に、重篤な精神疾患と依存症について訊いてみました。回答者の27%が、双極性障害あるいは統合失調症と診断された者、または自殺した者が家族にいると答えました。アンケートのうち、このセクションの回答は非常に重要でした。研究と、実際に子どもたちが成長してどうなるかは別問題だからです。もちろんその他の要因もあります。食生活、ライフスタイル、どんな人間関係に身を置いているか、家族の病歴についての記憶のあやふやさ、若いときからの大麻の使用(若い人は7歳から使っていました)などです。それでも、アンケートの結果からは、次のようなことがわかりました。

「草断ち」

私は「草断ち」(コミュニティ全体で大麻の使用をやめた2年間のこと)についても質問しましたが、回答からわかったことはありませんでした。この期間に生まれた子どもは胎内で大麻に暴露していないので、「対照群」として使えるのではないかと思ったのですが、集まった情報は曖昧すぎて何も明確にはならなかったのです。

アンケートの最後に、妊娠中に大麻を使ったことについてのコメントを求めたところ、回答は「今だったら使わない」から「大麻はこの世で最強、最高の見方だし、私の子どもたちはそのおかげでスーパースターよ!」というものまでさまざまでした(この通り書かれていたわけではありません、念のため)。

子どもたち

このアンケートで得られた情報で一番感心したのは、これらの子どもたちが今何をしているかについてでした。彼らはきちんと社会に参加しているでしょうか? 認知・思考に問題が起きたり、社会的な問題を抱えてはいないでしょうか?

以下は、これらの子どもたちが成人して何をしているかのリストです。彼らの中に、精神的疾患や依存症の問題を抱える人がいることは認めますが、ほとんどの場合、彼らは立派にやっています。そして、繰り返しになりますが、大麻以外の要因が絡んでいることも否めません。食生活、そもそも彼らをザ・ファームに導いた性格、大麻以外の薬物の使用の有無、ライフスタイル、家族の病歴などです。

ザ・ファームで生まれた子どもたちの職業、業績、学業成績:

  • 看護師(数名)
  • 上級看護師—女性の健康および医療看護
  • 作業療法士
  • 塗装業者
  • 平和部隊—持続可能な開発および国際関係の修士号
  • フォトジャーナリスト
  • 医師 (MD)
  • 俳優
  • プロの総合格闘技選手—過去11年間にわたって上位10位以内
  • 大手IT企業のプロジェクトマネージャー
  • 劇団セカンド・シティの即興パフォーマー
  • アイアンガー・ヨガの上級指導者
  • シリコンバレーのテクノロジー企業の重役
  • ソフトウェア・エンジニア/システムアドミニストレーター
  • ソフトウェアデザイナー
  • 教師—幼稚園、英語教師、国際、二ヶ国語、その他
  • ウェブ・デベロッパー
  • 木工製品の職人
  • 海洋生物学者
  • アーティスト(数名)
  • 弁護士(数名)
  • 銀行の副頭取—金融アナリスト
  • バイオテック企業の重役
  • 大工
  • アメリカ陸軍工兵司令部の土木技師
  • 建築請負人
  • 国防総省の電子航法機器開発
  • 人間工学者
  • 検察庁の殺人捜査官、7つの言語を話し、警察および暴力団を相手に仕事
  • フランスのためのリバース911マッピング
  • 熟練配管工
  • 古典言語修士
  • 修士
  • 機械工兼アンゴラ飼育
  • 助産師
  • モティベーショナル・スピーカー
  • ミュージシャン(数名)

系統的レビュー

この結果に励まされた私は、妊娠中の大麻使用の安全性を示す価値ある情報を探し続けました。ニューヨーク市立大学のクイーンズカレッジで社会学の准教授を務めるリン・ジマー(Lynn Zimer)博士と、同大学シティカレッジ医学部の薬学教授ジョン・P・モルガン(John P. Morgan)博士は、1997年にDrug Policy Allianceのために記事を執筆しています。[12] 当時読むことのできたすべての文献を検証した二人が出した結論は次のようなものでした。

  • 大麻による悪影響を示す結果は、調査によって異なり、一貫性がない
  • 大麻はアルコールまたは煙草よりも胎児への影響が少ない
  • 大麻への暴露の時期やその程度は、胎児への害と一貫した関連を見せない
  • 現存する科学的エビデンスは、大麻が直接的に人間の胎児に害を及ぼすことはないことを示唆している

また、アリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学の周産期医学部研究員である医学士メグ・ヒル(Meg Hill)と、同大学産婦人科学部長であるキャサリン・リード(Katheryn Reed)医師もまた、同様のレビューを2013年に行っています。[13]

ジマー博士のレビューの16年後に行われたこのレビューの結論は次のとおりでした。

  • 年長の子どもには若干の影響が見られる可能性がある
  • こうした影響が、大麻の軽度・中程度あるいは散発的な使用によって起こるとすれば、それは十分に軽度な、複数の調査に一貫して現れるには及ばない程度である。
  • こうした結果に基づき、妊娠中の大麻使用の報告を義務付けること、また妊娠中あるいは授乳中の大麻使用に対して懲罰を科すことには医学的根拠があるとは思われない。

2016年には『British Medical Journal』誌が、存在する文献の系統的レビューとメタ解析を掲載しました。検証されたのは24の研究でした。[14] 結果は次のとおりです。

  • 母親の貧血が増えた
  • 出生時体重の減少と新生児集中治療室での治療の増加
  • 煙草とアルコールが含まれる調査が多すぎる
  • 大麻の使用に関しては自己申告に依存している
  • 相矛盾する結果が見られ、確定的な結論は引き出せない
  • 結論:さらなる調査が必要

最も最近では、全米医学アカデミーによる2017年1月の報告書「The Health Effects of Cannabis and Cannabinoids(カンナビスとカンナビノイドによる健康への影響)」があります。高名な科学者16名からなる委員会が報告書の草稿を準備し、15名の専門家による査読を経た後に出版されたものです。468ページに及ぶ報告書の中には、出生前、周産期、新生児期の大麻暴露に関するセクションがありますが、大麻の喫煙と統計的関連性があることを実際に示す証拠があるのは、出生時の体重が低いということだけでした。妊娠合併症と新生児集中治療室での治療についてエビデンスは限られており、また乳幼児突然死症候群、学業成績不振、成長してからの薬物使用を含め、新生児期以降に与える影響についてのエビデンスも不十分でした。[15]

一貫して懸念される出生時体重の低さは、発育障害、乳を吸えないといった他の問題とは関連がないようです。ホームドクターとして、また一人の母親として言えるのは、子どもを生んだことのある女性なら誰しも、完全に健康で元気ならば、生まれるときに赤ん坊が小さめであることに感謝するだろうということです。

患者に何と言うか

多くの資料を読み、検証し、調査をした後で、私から患者に言えるのは次のようなことです。

  • 大麻の乱用は可能です。乱用しないようにしましょう。
  • 煙は気道を刺激します。吸入したいならばベポライザーを使うか、他の方法で摂取しましょう。
  • 連邦法では大麻は違法です。
  • 病院、医師、社会福祉関係の職員は、THC検査の結果が陽性である親には懲罰を科すことがあります。
  • 妊娠中に大麻に暴露した赤ん坊は、暴露しなかった赤ん坊と比べて出生時体重が低い可能性があります。

もしも大麻を使用するという選択をするならば:

  • なぜ大麻を使用するのかをはっきりさせ、その理由を、使用のたびに確認しましょう
  • 喫煙は避けましょう—ベポライザーを使うか、信頼できる人から入手した、喫煙以外の方法で摂取する製品を使いましょう
  • 有機栽培された、農薬や殺虫剤不使用の大麻やコンセントレートを使用しましょう
  • カンナビノイドの含有量を知り、効果の出る最小の量を摂りましょう
  • 子どもが誤って大麻を摂ったり、受動喫煙することのないようにしましょう
  • 成分が不明のダブ、オイル、エディブルなどは避けてください

医師であるStacey Kerrは、北カリフォルニア在住の教師、医師、著述家。著述と教育に専念するため開業医を辞め、数年間にわたってSociety of Cannabis Cliniciansと協働し、初めての、医療大麻に関する包括的なオンライン・コースを開発した。現在は、ハワイ島で科学エビデンスに基づいた大麻製品メーカー、Hawaiian Ethos のメディカルディレクターを務めている。


この記事は当初、Hawaiian Ethosで発表されたものです。著作権者の許可なく複製・転載を禁じます。


脚注

  1. E Fride, Multiple Roles for the Endocannabinoid System During the Earliest Stages of Life: Pre- and Postnatal Development, ‎J Neuroendocrinol. 2008 May;20 Suppl 1:75-81. doi: 10.1111/j.1365-2826.2008.01670.x
  2. R. Hayatbakhsh, etal, Birth outcomes associated with cannabis use before and during pregnancy, Mohammad Pediatr Res 71: 215-219, December 21, 2011; doi:10.1038/pr.2011.2
  3. Ko JY, Farr SL, Tong VT, Creanga AA, Callaghan WM. Prevalence and Patterns of Marijuana Use among Pregnant and Non-Pregnant Women of Reproductive Age. Am J Obstet Gynecol. 2015
  4. Chang J, Holland C, Tarr J, Rodriguez K, Kraemer K, Rubio D, Arnold R. Direct observation of screening for and disclosure of illicit drug use in pregnancy visits. American Journal of Health Promotion. 2015 In Press
  5. E. Keimpema, Molecular model of cannabis sensitivity in developing neuronal circuits, Trends Pharmacol Sci. 2011 Sep;32(9):551-61. doi: 10.1016/j.tips.2011.05.004.
  6. Arijit Chakraborty, etal. Prenatal exposure to recreational drugs affects global motion perception in preschool children. Scientific Reports, 2015; 5: 16921 DOI: 10.1038/srep16921
  7. Goldschmidt L, et al, School achievement in 14-year-old youths prenatally exposed to marijuana, Neurotoxicol Teratol,(2011), doi:10.1016/j.ntt.2011.08.009
  8. AC Proal, et al, A controlled family study of cannabis users with and without psychosis, Schizophrenia Research, Volume 152, Issue 1, January 2014, Pages 283–288 doi:10.1016/j.schres.2013.11.014
  9. Fried, P.A., Prenatal exposure to tobacco and marijuana: effects during pregnancy, infancy, and early childhood. Clinical Obstetrics and Gynecology 36:319-337, 1993.
  10. Melanie C. Dreher, etal, Prenatal Marijuana Exposure and Neonatal Outcomes in Jamaica: An Ethnographic Study, Pediatrics, Feb 1994, 93 (2) 254-260
  11. Spiritual Midwifery Third Edition, Ina May Gaskin, The Book Publishing Company, Summertown, TN
  12. Use of Marijuana during Pregnancy, Article excerpted from Marijuana Myths, Marijuana Facts: A Review of the Scientific Evidence by Lynn Zimmer, PhD, and John P. Morgan, MD (New York: Drug Policy Alliance, 1997)
  13. Meg Hill, MBBS, and Kathryn Reed, MD, Pregnancy, Breast-feeding, and Marijuana: A Review Article, CME Review Article, Volume 68, Number 10, Obstetrical and Gynecological Survey, Copyright 2013
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