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大麻をめぐる、リーファー・マッドネスというヒステリー、ゲートウェイドラッグという作り話、おバカなストーナーというマンガじみたイメージ….。2022年のアメリカ社会にこうしたものが全く無いとは言えませんが、これらは少なくとも徐々に過去のものとなり、その代わりに今、大麻に対する新しい考え方が生まれつつあります。それはもっと微妙で洗練されたもので、有害性だけでなくそのベネフィットを、ユーザーには色々な人がいることを、大麻禁止政策が失敗であることを認めるものです。

これからの 10年間、アメリカをはじめ世界各地で、社会における大麻の立ち位置は大きく変わるでしょう。これは、1996年にカリフォルニア州で医療大麻が合法化されたことによって始まった変化です。大麻とその化合物をめぐる規制は急速に変化しています。嗜好目的の使用と医療目的の使用のパターンも変わりつつあり、ある意味でその二つが融合しつつあるとも言えます。大麻ユーザーのイメージ——どんな風貌で、どんなふうに行動し、なぜ大麻を使うのか——も刷新されています。

この変化に興味深い役割を果たしたのが COVID-19 の流行です。コロナ禍は、他の業種の小売店が休業を余儀なくされる一方でディスペンサリーが「必要不可欠なビジネス」とみなされる環境を生み出し、CBD 製品の販売者には、CBDCOVID-19 に効くという根拠のない主張をする好機となりました。さらに、最新のアンケート結果が示すとおり、大人の間でも若者の間でも、大麻の使い方に重要な、ときに驚くような変化がありました。

アメリカの若者の間では大麻ユーザーが減少

2021年 12月中旬、国立薬物乱用研究所(NIDA)が派手な見出しの記事を発信しました。曰く、「COVID-19 の流行が続くなか、2021年には薬物を使用したと報告する若者の割合が低下」というものです。2

2020年、ストレスの溜まった社会人や子どもを持つ親たちが、騒然とした時代を乗り切るために薬物や酒に手を出している、というのは誰でも知っている事実、少なくともジョークとして人気があったのではないでしょうか? でも、酒も薬物も禁じられ、ロックダウンで家から出られず友人とも会えなくなった思春期の若者は違ったようです。知り合いで集まってジョイントを回すということができなくなってしまったのですから。

NIDA の報告によれば、年に一度、中学2年生、高校1年生、高校3年生を対象に行われるアンケート調査で、過去1年にマリファナ(NIDA は頑なにそう呼びます)、アルコール、ニコチン入りベイプを使用したという回答がいずれの学年でも大きく減少しました。特に大麻の使用率は高校3年生で約 5%、高校1年生で 11%、中学2年生では 4% 低下していました。調査は 2021年 2月から 6月まで行われ、32,000人を超える生徒が過去1年間の薬物使用について回答しています。

NIDA の所長ノラ・ヴォルコウはプレスリリースの中で、「1年という期間に、10代の若者の薬物使用がこれほど急激に減少したことはかつてありません」と述べています。「このような結果は前例がなく、思春期の子どもの日常生活に劇的な変化をもたらした COVID-19 の流行の意外な影響の一つを示すものです」

このような傾向となった原因は正確にはわからない、としながら、大麻が手に入りにくくなったこと、家族と過ごす時間が長くなったこと、仲間からのプレッシャーのかかり方が変わったことなどをヴォルコウは考えられる原因の一部として挙げています。社会活動がやや正常に向かった 2021年後半に未成年の薬物使用が再び増えたかどうかは、2022年のアンケート調査の結果を待たなければわかりません。

コロナ禍の1年目、成人では大麻ユーザーが増加

12月後半、『Cannabis and Cannabinoid Research』誌に、 2021年 2月までに発表された 76本の論文をトロント大学社会福祉学部の4名の研究者が検証したレビュー論文が掲載されました。総体的に、COVID-19 流行の1年目には、成人の大麻使用が世界中で増加したと著者らは結論しています。

コロナ禍の前後で大麻の使用率を比較した 33本の論文を検証したところ、使用量が増えた人の方が減った人よりも多く、使用頻度が高いヘビーユーザーの方が、頻度も量も少ないユーザーよりも増加の幅が大きかった、と論文には書かれています。

この傾向が、社会的に弱い立場に置かれた子どもやホームレスの若者にもあてはまるケースもありましたが、著者らは「COVID-19 が流行している間、両親と同居していた若者の中には、大麻が手に入りにくく、自宅での待機規制のために使用する機会も減ったと答えた者もいる」と述べ、NIDA のアンケート調査結果を裏付けています。

このレビュー論文は、成人による大麻使用が増加した原因をいくつか特定しています。最も強く影響していたのは不安感と生活環境の変化であるように見えましたが、大麻以外の薬物が手に入りにくくなったこと、またカナダやアメリカの一部の州のような合法地域では大麻が手に入りやすくなったこと(「社会インフラを支えるのに必要不可欠な事業」であるディスペンサリーでは売り上げが増加)も要因の一つでした。大麻が COVID-19 の治療や予防に、あるいは COVID-19 が原因の不安感やストレスに効く、という誇大な期待もおそらく一役買っているでしょう。

成人の使用率は一時急上昇、その後元通りに

トロント大学によるレビュー論文で評価された 76本の論文は、調査デザイン、対象者数、調査期間、場所、データソースなどが多種多様でした。COVID-19 流行中のアメリカの成人における大麻使用についてさらに知るため、私たちはさらに、アメリカの人口統計学に基づいた 1,761名を対象として行われたばかりの調査を参照しました。

ジョンズホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院の研究者によって行われたこの最新の調査(『International Journal of Drug Policy』誌 2022 年 2月号掲載4)は、成人の大麻ユーザーでは 2020年の 3月と比較すると、4月と 5月は使用率が大幅に上昇し、6月から 11月には 3月のレベルに近いところに戻りました。

この調査の対象者は、Understanding America Study(UAS の登録者から抽出されました。UAS は、カリフォルニア大学がインターネット上で管理している、アメリカ全国の人口統計を代表する成人解答者の集団です。UAS による調査「Understanding Coronavirus in America」の一部として、対象者には、先週一週間のうち何日間大麻を使ったかを訊きました(調査結果の全文はインターネット上で公開されています)。

UAS に登録された回答者の中から大麻を使ったことがない人を除いた、ジョンズホプキンス大学の調査対象者全体では、この基準値は 2.39日でした(2020年 3月 11日)。それが 4月 1日には一気に 2.5日に増え、5月 1日には 2.6日に、6月 1日には 2.55日になりました。その後使用率は、2.42日(7月 1日)、2.41 日(8月 1日)2.46日(9月 1日)、2.43日(10月 1日)、2.35日(11月 11日)と下がっています。

それぞれの州の大麻政策が大麻の使用状況に大きく影響しているようでした。大麻が一切禁じられている州では、6月から 11月まで使用率は急激に低下しています。これはおそらく大麻を容易に手に入れることができなくなったためでしょう。医療大麻のみ合法の州では、9月と 10月に使用率が若干増加していますが、これは不安神経症の対処に大麻が使われたことによるものではないかと著者らは推測しています。

医療大麻と嗜好大麻がともに合法な州では、調査期間全体を通じて使用率が上昇しており、11月には 3月に比べて約 10% ほど増えているように見えます。これは COVID-19 流行によるストレスが要因である可能性もありますが、あるいはこれもまた、法律の改正と人々の考え方の変化を示す数字の一つにすぎないのかもしれません。


Nate Seltenrich は、サンフランシスコのベイエリアに住む科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。


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