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『Journal of Natural Products』に先週掲載された論文がさまざまなマスコミに取り上げられ、大麻で COVID が予防できる、あるいは治せると書き立てています。たとえばこの Yahoo! Finance の記事の見出しはこうです——「大麻が COVID を予防するとわかった今、どうしたらそれを投資に生かせるでしょうか?」。Project CBD は、カンナビノイドの生化学について博士号取得・ポスドク研究を行ったマット・エルムス博士に、人間も動物も対象としていないこの論文の重要性について伺いました。

Project CBDオレゴン州立大学とオレゴン健康科学大学の研究チームが発表した新しい論文についてどう思われますか? カンナビジオール酸(CBDの前駆体である CBDA)やその他の酸性カンナビノイド(CBGATHCA)が、コロナウイルスが人間の細胞に感染するのを防ぐと書かれていますが?

エルムス博士:この論文についてはマスコミも SNS も大騒ぎですが、これは本当に騒ぎすぎだと思いますね。この論文のデータはすべて、培養細胞を使って試験管やペトリ皿の中で行った実験からのものです。私たちは常に、安易にこういう基礎研究の結果から臨床的な結論を導き出さないよう、慎重でなくてはなりません。基礎研究の結果を実際の状況に当てはめようとすると、大きな「但し書き」がある場合がほとんどですからね。

Project CBDイン・ビトロの実験であるということはさておいて、この実験はどんな内容なんでしょうか?

エルムス博士:正直なところ私は、このデータは別に興奮するようなものだとは思いません。酸性カンナビノイドがウイルスのスパイク蛋白質に対してマイクロモル親和性を持っている、と論文には書かれています。これは人体で実現させるには極度に高い濃度ですよ! 人間のほとんどの細胞では、ナノモル単位の濃度を超えることさえ難しいんです。このことは、この論文が実際に臨床に応用できる可能性にさらに疑問を投げかけます。ただし、「試験管内」での発見という意味では興味深い結果ではあり、カンナビノイドが、免疫調節効果があるという以外にも COVID に対する効果があるのかどうかをさらに研究すべき理由にはなると思います。

Project CBD 酸性カンナビノイドを高濃度で人体内に存在させるのは難しいとおっしゃいましたが、それはどういう意味でしょうか?

エルムス博士:この研究の重要点は、CBDACOVID のスパイクタンパク質にくっつく(親和性がある)ということと、概念実証実験で、このカンナビノイドがウイルス粒子にくっついていると新しい細胞に感染しにくくなる可能性がある、と示されたことです。科学者が言うところの「リガンドと受容体の相互作用」が弱ければ弱いほど、そのリガンドが作用を発揮するのに必要なリガンドの数は多くなります。そのために科学者は、リガンドと受容体の相互作用の強さを濃度として数値化します。つまり、受容体との相互作用が十分に発揮されるために必要なリガンドの濃度です。

Project CBD「マイクロモル親和性」とは?

エルムス博士:「マイクロモル親和性」(「モル濃度」とも言う)というのは単に、ある化合物の粒子が1リットルあたりに何個入っているかを示します。この研究チームは、実験に基づいて、CBDA がウイルスのスパイクタンパク質にくっついたことが検知できるためにはマイクロモルレベルの濃度が必要であることを発見したわけです。私たちが大麻を摂取すると、カンナビノイドは全身の血液と脂肪細胞に拡散します。同様に、組織内に届くカンナビノイドの量もモル濃度で表します。この論文のデータによれば、組織の体積に対し、「マイクロモル単位の濃度」のCBDA 粒子が蓄積しなければ作用は起きません。人体細胞のほとんどは、たとえ日常的に高用量のカンナビノイドを摂取したとしても、濃度がナノモル単位(ナノモルはマイクロモルの 1/1000)を超えることはありません!

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