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大麻草の花穂から伸びる特別な腺には、さまざまな独特の分子が含まれています——カンナビノイドと呼ばれる、大麻草に含まれる成分です。でも実は、それらと全く同一の分子が大麻草以外の植物にも含まれているのです。イスラエルのワイツマン科学研究所は先ごろ、カンナビゲロール酸(CBGA)その他の希少なカンナビノイドを Helichrysum umbraculigerum という植物から検出したと発表しました。俗にウーリー・アンブレラ(woolly umbrella)と呼ばれる多年草です1

原産は南アフリカ

ヘリクリサム(Helichrysum)属の化学組成について最初に研究を行なったのは、フェルディナンド・ボールマン(Ferdinand Bohlmann)とイブリン・ホフマン(Evelyn Hoffman)でした。二人が 1979年に『Phytochemistry』誌に発表した論文2 は、南アフリカ東部に自生し、伝統医療や燻蒸の儀式に使われてきた植物 Helichrysum umbraculigerum を分析しています。

ボールマンとホフマンは、この植物の頂上部(葉と花)が大麻草に特有の化合物を産生すると断言しています。2017年にイタリアの研究チームが行なった追跡研究では、Helichrysum umbraculigerum からは CBG もその前駆体も検出されませんでしたが、Heli-CBG として知られる CBG の類似体が特定されました。これは繊維用ヘンプ品種の一部にも含有され、CB2 カンナビノイド受容体と結合します3,4

2023年 5月に『Nature Plants』誌に発表された論文の中で、ワイツマン科学研究所の研究者らは、ウーリー・アンブレラはその葉にあるトライコームの中で CBGA を産生するが、花には CBGA はほとんど存在しなかった、と述べています。これは、CBGA をはじめとするカンナビノイドが花穂に集中している1 大麻草とは異なっている点です。

ブリティッシュコロンビア大学の研究者らが 2022年に『Current Biology』誌上で発表した論文によれば、大麻草の花序(花)にあるトライコームの細胞は特別な形をしています。球形をしたトライコームの頭の部分には浸透性のある細胞があって、酸性カンナビノイド(CBGA, CBDA, THCA その他)がトライコーム間を移動できるようになっているのです5 。ワイツマン科学研究所の研究チームは、Helichrysum umbraculigerum がこれと似たカンナビノイドの輸送ネットワークを葉の上に作ると報告しています。

大麻草以外の植物に由来するレア・カンナビノイド

イスラエルの研究チームはどうやってこのことを発見したのでしょうか? 彼らはウーリー・アンブレラに、大麻草の内部でカンナビノイドを生成する前駆体化合物を与えたのです。2種類の前駆体(ヘキサン酸とフェニルアラニン)を与えたウーリー・アンブレラは、通常の栄養を与えたものよりもカンナビノイドを多く産生しました。つまり、大麻草の花穂とウーリー・アンブレラの葉には、同一の生合成経路があるということです。

ウーリー・アンブレラは生来、葉に 4% を超えるカンナビゲロール酸その他のレア・カンナビノイドを産生します。その中には、大麻草には見られない水溶性のカンナビノイドも含まれています。

ウーリー・アンブレラは葉のトライコームで CBGA を産生しますが、花では産生しません。

つまり、2種類の異なった植物が、CBGA を産生する同じ機構を発達させたのです。ただし、ウーリー・アンブレラは大麻草とははっきりと異なった進化の道筋を辿っており、大麻草はウーリー・アンブレラと違って CBGA を THCA または CBDA(あるいはその両方)に変換する独特の2つの酵素を産生します。

新しい植物性カンナビノイドを使いこなすには

このように、植物の系統樹においては、カンナビノイドの生成には2つの方法があるわけです。脂溶性の大麻草の花穂にはテルペンやいくつかのフラボノイドが含まれる一方、Helichrysum umbraculigerum は複雑な一連のフラボンと水溶性カンナビノイドを産生します。この2つの共通点と違いを理解することで、それぞれの植物が持つ医療効果の可能性をよりよく評価することができます。

ウーリー・アンブレラに含まれるカンナビノイドは水に溶けやすく、たとえば腸の奥の方など、身体の特定の部位を標的にすることができます。ただし、水溶性カンナビノイドについてよく言われるバイオアベイラビリティの高さは、必ずしも有効性の高さを意味しません。身体に素早く吸収されるものはまた、身体から排出されて効き目がなくなるのも早く、またカンナビノイド受容体は、水溶性の作動薬と比べ、脂質が好きな化合物とより親和性が高いのです6,7


Travis Cesarone はフリーランス・ライターであり、主に医療大麻の科学について発信している。


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参照文献

  1. Berman, P., de Haro, L.A., Jozwiak, A. et al. Parallel evolution of cannabinoid biosynthesis. Nat. Plants (2023).
  2. Cannabigerol-ähnliche verbindungen aus Helichrysum umbraculigerum. Phytochemistry. 1979;18(8):1371-1374.
  3. Pollastro, F., De Petrocellis, L., Schiano-Moriello, A., Chianese, G., Heyman, H., Appendino, G., & Taglialatela-Scafati, O. (2017). Amorfrutin-type phytocannabinoids from Helichrysum umbraculigerum. Fitoterapia123, 13–17.
  4. Pollastro F, Taglialatela-Scafati O, Allarà M, Muñoz E, Di Marzo V, De Petrocellis L, Appendino G. Bioactive prenylogous cannabinoid from fiber hemp (Cannabis sativa). J Nat Prod. 2011 Sep 23;74(9):2019-22. doi: 10.1021/np200500p. Epub 2011 Sep 8. PMID: 21902175.
  5. Livingston, S. J., Rensing, K. H., Page, J. E., & Samuels, A. L. (2022). A polarized supercell produces specialized metabolites in cannabis trichomes. Current biology : CB32(18), 4040–4047.e4. https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.07.014
  6. Li, X., Chang, H., Bouma, J. et al. Structural basis of selective cannabinoid CB2 receptor activation. Nat Commun 14, 1447 (2023).
  7. Stadel, R., Ahn, K. H., & Kendall, D. A. (2011). The cannabinoid type-1 receptor carboxyl-terminus, more than just a tail. Journal of neurochemistry, 117(1), 1–18. https://doi.org/10.1111/j.1471-4159.2011.07186.x

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