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キラリティー(対掌性)という言葉を聞いたことがない方も多いかもしれません。これは、大麻という植物に含まれるさまざまなカンナビノイドやテルペンの医療効果に関係する概念であり、これまでは知られてこなかった、大麻が品種ごとに異なる作用を持つ理由の一つかもしれません。キラリティーはまた、THCCBD の医療効果をさらに高める重要な鍵となるかもしれませんし、あるいは、隠れた危険性がこれによって生じる可能性もあります。

キラリティーとは何か?

キラリティーというのは、シンプルな幾何学的性質を語根とする有機化学の概念です。幾何学的概念というものは、マクロからミクロまで、物事の大きさにかかわらずあてはまるものです。そのため、キラリティーとはどういうもので、秘められた化学の世界で極小の物質に何が起こっているのかを理解するのを助けてくれる、現実世界に見られる事例が多数あります。

たとえば、あなたの両手を前にかざしてみてください。二つの手は同一ですか? 大きさも、形も、各部分の相対的な比率も同じに見えますね。ところが、左手の手袋を右手にはめようとするうまくはまりません。右手と左手のどこがどう違うのか、あなたは説明できますか?

人間の両手は、最も広く知られたキラリティーの一例です。実際、「キラル」という言葉の語源は、ギリシャ語で「手」を意味する cheir という言葉なのです。人間の両手はほとんど同一に見えますが、重ね合わせることができません。右手をどんな角度、どんな方向に動かしてみても、それを左手と完全に重ね合わせることはできないのです。右手と左手は、それぞれの鏡像だからです。

あなたの右手は、その鏡像とは本質的に異なっています。これがキラリティーです。ある物体とその鏡像とが差別化できるものは「キラル(chiral)」である、と言います。キラルである物体とその鏡像は「鏡像異性体(エナンチオマー)」と呼ばれます。あなたの左手はあなたの右手のエナンチオマーです。

すべての物質がキラリティーという性質を持っているのでしょうか? いいえ、違います。たとえばバスケットボールやフットボール、ティーカップ、鉛筆などを思い浮かべてください——それらの鏡像の型から作られたものは、もともとの物と区別がつきません。これらはすべて、対掌性のない(キラルではない、アキラルな)物質です。

ねじ釘はキラル:ねじ釘の鏡像を作ると、「左に回すと緩み、右に回すと締まる」ねじ釘が「右に回すと緩み、左に回すと締まる」ねじ釘になります。どんな向きにそれを使っても、元のねじ釘のように左に回しても緩みません。この、左に回すと緩むねじ釘と右に回すと緩むねじ釘はエナンチオマーです。

釘はアキラル:ハンマーにとっては、ある釘もその鏡像も同じです。この二つは区別がつきません。釘にはエナンチオマーは存在しません。

キラルの化学特性

私たちが目にするもののほとんどは分子からなっています。分子というのはとてつもなく小さな物質ですが、それでもそれが三次元の空間に存在することは確かです。分子には形があり、実体を持っています。釘とねじ釘と同様に、分子の中にはキラルのものがありますが、それと形や大きさ、機能が似ていてもキラルではないものもあります。

新薬を開発する科学者は、キラリティーについて十分に考慮する必要があります。ほとんどの医薬品やそれ以外の薬物は、活性成分の分子が、身体のどこかにある特定の受容体に正確に「はまる」ことで効果を発揮します。キラリティーは、薬の作用に影響を与える場合も与えない場合もあります。図1はそのことを示しています。

黒い手袋は右手にしか快適にフィットしませんが、白い手袋はどちらの手にも同じようにフィットします。

図1の黒い手袋は、片方の手にしかうまくはまらないように形成されていますし、白い手袋の方はどちらの手にもはめられるような形をしています。左手を黒い手袋に無理やり押し込めることはできますが、はめ心地は悪いですし、親指が親指用の穴にぴったりはまらないので機能性も劣るでしょう。これと同じことは物質が極小の場合にも当てはまり、キラルな薬物分子(片方の手)が標的とする細胞受容体(手袋)にはまったりはまらなかったりするのです。

キラリティーが与える影響は状況によって異なり、薬物と受容体の具体的な作用の仕方によって変化します。

エナンチオマーの片方が、もう片方よりも良く機能する場合:
反対の手を手袋に押し込めることはできますが、機能性が劣ります。

エナンチオマーの片方しか機能しない場合:
逆の手には手袋をはめることがまったくできません。

エナンチオマーがどちらでも関係ない場合:
どちらの手にも同じように手袋がフィットします。

エナンチオマーを混合させた方が効果的な場合:
ADHD の治療薬 Adderall(アメリカで販売されているアンフェタミンの商品名)には、右向きのアンフェタミンと左向きのアンフェタミンが 3:1 の割合で含まれています。右向きと左向きのアンフェタミンは身体に異なった作用を及ぼし、多くの患者は、この二つを一緒に使った方がよく効きます。

エナンチオマーを混ぜると悲惨な結果を引き起こす場合:
左向きのエナンチオマーと右向きのエナンチオマーの毒性に関する評価が不十分だったために、何千人もの新生児に先天異常を引き起こすという悲劇を生んだのが、つわりの薬として使われたサリドマイドです。サリドマイドのエナンチオマーの片方はまったくの無害ですが、もう片方のエナンチオマーは子宮内で成長中の胎児に損傷を与えるのです。

大麻はキラル

カンナビノイドはキラルです。THCCBD の分子は鏡像と重ね合わせることができません。つまりカンナビノイドの分子には「掌性」があるわけですが、人間の手と違って二通りの鏡映があり、結果として二対のエナンチオマーができます。たとえば THC には、「右向きと左向き」があり、さらにそのそれぞれが「上向きまたは下向き」であると考えてください。二対のエナンチオマーがあるということはつまり、キラリティーを考慮すると、THC には4種類の形状が存在し得るということです(図2を参照のこと)。

大麻草に含まれる THC が「Δ9-テトラヒドロカンナビノール」であることはご存知でしょうが、実はそれで全部ではありません。THC の正式な化学名は、「 (-)-trans-Δ9-テトラヒドロカンナビノール」と言います。この (-) と trans にあたる部分がキラリティーの空間特徴を表します。THC の分子は、(+) または (-)、そして cis または trans のいずれかになり得るのです。ただし事実上は、「THC」と言うだけで事足ります——地球上の THC のほぼすべてのキラリティーは同一だからです。大麻草は、ほぼすべての THC を (-)-trans-Δ9-テトラヒドロカンナビノールという形で産生します。同様に、植物性の CBD も4つの形をとる可能性がありますが、ほぼすべてが (-)-trans-カンナビジオールです。

ところが、キラリティーが一種類に限られるカンナビノイドばかりではありません。たとえば自然界に存在するカンナビクロメン(CBC)は、左向きのものと右向きのものが 3:1 の割合で混在しています12。さらに、ここ何年かで複数の研究チームが、ヘンプから少量の (+)-cis と (-)-cis の THC を検出しています。大麻草のうちヘンプに分類されない品種からは、今のところ、cis の THC は検出されていません34

指摘しておかなければならないのは、大麻草の効能を査定するために通常行われる検査ラボの試験はキラリティーを識別しない、という点です。ですから、珍しいキラリティーを持つカンナビノイドの検出はこれまで、大学などの学術研究所や、ニッチな研究分野を専門とする科学者しか行ってきませんでした。

キラルな分子の薬物学的特性

カンナビノイドのエナンチオマーは実験室で合成することが可能で、それが研究を可能にします。過去数十年間に散発的に行われてきたキラリティーの研究によって、キラリティーは、体内でカンナビノイドがどのように作用するかに影響する重要な要素であることが明らかになっています。

THC は、人間の脳内にある CB1 受容体に「ぴったりフィット」することによって向精神作用を発揮します。私たちが CBD を摂取してもあからさまにハイにならないのは、CBD の分子は CB1 受容体にぴったりフィットせず、私たちが感知できるほどには受容体を活性化させないからです。ところが、著名なカンナビノイド研究者であるイスラエルのラファエル・ミシューラム博士と彼のチームが、自然界には存在しない CBD のエナンチオマー、(+)-CBD を作ったところ、抗けいれん作用がある点は通常の CBD と変わりませんでしたが、驚くほどの強さで CB1 受容体を活性化させるという点が違っていたのです!5,6,7

CB1 受容体に対する (+)-CBD の作用は通常の CBD よりもはるかに強いものの、それでも THC に比べれば 30分の 1 です。さらにこの研究チームが、予期される代謝物(人体が (+)-CBD を代謝したときにできるであろう物質)の人工エナンチオマーを作ったところ、左向きの代謝物 (+)-7-ヒドロキシ CBD がカンナビノイド受容体に緊密に結合し、それは THC とカンナビノイド受容体の結合よりも強いことがわかりました8。これはつまり、(+)-CBD が向精神作用を発揮する可能性があるということを意味しています。ただし、やや高用量の (+)-CBD をマウスに与えても THC のような作用は見られませんでした。とは言え、マウスと人間は代謝の仕方が異なりますし、投与の方法も違いますから、(+)-CBD が人間に陶酔作用を引き起こすと考える根拠はあります。

それとは逆に、THC の非標準型のエナンチオマーは、自然界に存在する圧倒的多数の THC である (-)-trans-THC と比べ、CB1 受容体を活性化する力ははるかに低くなっています。最近の研究によれば、(-)-cis-THCCB1 受容体に対する作用は、一般的な THC の 10分の 1、(+)-cis-THC は 100分の 1 でした。これは、半世紀前にミシューラム博士らが行った動物実験で、それぞれを与えた動物の行動を観察した結果、(+)-cis-THC は天然の THC と比べて効能がおよそ 100分の 1 と推定されたのと一致しています910

テルペンのキラリティー

大麻草に含まれる成分でキラリティーを持つのはカンナビノイドだけではありません。ほとんどのテルペンもまたキラルな物質なのです。もちろん、テルペンは大麻草だけに含まれるものではありませんが、大麻草の花穂に見られるテルペンは、産生量においてもその種類の豊富さにおいても植物界全体でも際立っています。

植物が作るテルペンの中には、一種類のキラル型しかないものもありますが、左向きと右向きの形が特定の比率で両方存在するものの方が多くなっています。あるテルペンの「エナンチオマー比」は、それが含まれている植物が異なっても似ている場合が多いのですが、必ずしもそうとは限りません111213。キラリティーが異なると、植物の味、香り、あるいは作用に影響を与えることがあります。たとえば、(+)-リモネンはオレンジのような香りがしますが、そのエナンチオマーである (-)-リモネンはレモンの香りがします。「〜のような香り」と言いましたが、それが香りそのものであると言うこともできます——このテルペンこそが文字通り、あなたの鼻が検知し、脳が柑橘類の香りであると解釈するものなのです。

大麻にその独特の香りを与えているのがテルペンであり、テルペンはアントラージュ効果という複雑なパズルを解く重要な鍵であると考えられています。大麻の愛好家や医療大麻を使う患者は、ラボ検査でわかったテルペンのプロフィールを見て、ディスペンサリーで製品を選ぶ際の参考にします。ただし、大麻に含まれる天然のテルペンの多くは複数のキラル型がありますが、ラボ検査ではエナンチオマーの違いは識別されません。

最近行われた、9種類の大麻品種に含まれるテルペンのキラリティーに関する研究では、調べたテルペンのほとんどは大麻品種が違っても「エナンチオマー比」はほぼ同じでした。ただし、中には非常に興味深い違いがあるものも見つかりました。たとえば (+)-リナロールと (-)-リナロール、(+)-β−ピネンと (-)-β-ピネンの比率は品種によって大きく違っていたのです14。テルペンのキラリティーが異なれば、当然、異なった作用が生まれます15。それによって、大麻のテルペンプロフィールにはまた一つ複雑さが加わり、大麻品種による作用の違いを生む要素にはキラリティーも含まれるという可能性が生まれます。

キラリティーの安全性

大麻草と、その主要なカンナビノイド(THCCBD)が非常に安全性の高いものであるということについては、圧倒的な数の事例証拠と客観的エビデンスがあります。ただし、地球上の THCCBD は、その 99.9% 以上が一種類のキラル型で存在しています。人間と大麻のこれまでの関係は、ほぼそのすべてが、(-)-trans というキラル型の植物性カンナビノイドとの関係だったのです。

ある分子のキラリティーが、人体に対する作用に大きな影響を与える可能性がある、ということはわかっていますが、現時点では、自然界に存在しないキラリティーのカンナビノイドに関するデータはごくわずかしかありません。異なったキラリティーが人体に与える影響の違い、あるいは毒性を持つ可能性についてはまだわからないことが多いのです。中には、独特の有益な性質を持つものもあるかもしれません。もしかすると、左向きの THC は、通常の THC と同様に安全性が高く、嘔吐作用や鎮痛作用もあり、かつ医療大麻患者の多くが避けたがる精神作用は持たない可能性もあります。何とも言えないのです。一方、こうした左向きのカンナビノイドが深刻な副作用を引き起こす可能性は低いように思われるものの、その可能性は無視するべきではありません。実際のところ、それについてはまだわかっていないのです。

地球上のほとんどのカンナビノイドが同じキラル型で存在するのなら、いったいなぜこんなことを考える必要があるのでしょうか? なぜなら、今、カンナビノイド業界は、合成カンナビノイドの普及率が高まっていく方向に向かいつつあるからです。バイオ医薬品企業が人工カンナビノイドの製造を精力的に進めるなか、通常とは異なるキラル型のカンナビノイドとそれらが持つ意外な効果は、大麻草製剤の未来に重要な意味を持つ可能性があるのです。

ここで一つ明確にしなければならないことがあります。「合成カンナビノイド」と「合成的に製造されたカンナビノイド」は意味が大きく異るということです。

  • 合成カンナビノイドとは、たとえば悪名高い K2 やスパイスのような、自然界には存在しないもののことです。これらは CB1 受容体に正確にフィットする「形」を持つように開発された化合物で、CB1 受容体をすさまじい強さで活性化させます。その結果、THC による向精神作用に似た作用が生まれますが、THC と違って合成カンナビノイドの多くは予想できない副作用を生じ、非常に危険です。
  • 合成的に製造されたカンナビノイドとは、通常、大麻草が産生するのと完全に同一のカンナビノイド分子を作ることを意味し、大麻草の化学的性質によってそれを産生するのではなく試験管の中で THCCBD を製造します。自然界に存在する化合物の複製を製造すること自体は、製造過程が清潔であること、最終製品の純度が十分であることを確認する適切な検査が行われる限り、本質的には何の問題もありません。

天然化合物を合成的に製造する、というのは、すでにさまざまな現代産業で非常に広く行われていることです。たとえばカフェインはもともとは植物性の化合物ですが、コカコーラに含まれているカフェインはほぼ間違いなく、工場で合成的に製造されたものです。

カンナビノイドを合成的に製造することには数々のプラス面がありますが、とりわけ、従来の農法では十分な量を産生することが困難あるいは不可能であるマイナー・カンナビノイドを生産できることは大きな利点です。乾燥大麻あるいはフルスペクトラムの大麻草抽出オイルではなく、単一のカンナビノイド(アイソレートと呼ばれます)さえ手に入ればよいのなら、合成的に製造されたカンナビノイドは、農業につきものの問題のほとんどを回避しつつ需要を満たしてくれるでしょう。天候不順の心配もなければ季節も関係なく、広大な面積も必要ありませんし、害虫がいなければ殺虫剤を使う必要もありません。

1986年以来、抗がん剤治療に伴う吐き気の治療のために医師が処方するようになった医薬品としての THC(マリノールとドロナビノール)は、合成的に製造されたものです。(FDA に承認された医薬品としての THC は、大麻草に含まれる THC と同じキラル型になるよう慎重に合成されています。)最近では、Δ8THCCBN といった特定のマイナー・カンナビノイドを半合成(あるカンナビノイドを別のカンナビノイドに変換すること)するのが、主に政府の監督のないヘンプ市場で一般的に行われるようになっています。酵母に遺伝子操作を加え、糖を発酵させて、アルコールではなくカンナビノイドを作る技術も、サイエンス・フィクションの中の話ではなくすでに存在します!16 そして現在、複数のバイオテクノロジー企業が、産業用「カンナビノイド醸造所」を作るのに必要な研究開発を積極的に押し進めており、こうしたカンナビノイドは今後ますます普及していくことでしょう。

キラリティーの抱える課題

農業とは異なる手法でカンナビノイドを製造しようとする企業にとって、キラリティーは大きな課題です。ある分子を合成的に製造する際には、考えられ得るあらゆるキラル型が同一比率で生産されることが多く、これを化学の用語でラセミ混合物と言います。つまり、合成的に製造されたカンナビノイドのかなりの部分は、自然界とは異なるキラル型のものなのです。

ラセミ混合物を精製して一種類のキラリティーのみにすることは可能ですが、それはお金のかかる大変な作業です。ちょっとしたコツを使って一種類のエナンチオマーのみを合成させることができる場合もありますが、必ずこれが可能なわけではありませんし、単一キラリティーの化合物の合成は通常、複雑でお金のかかる作業です。

規制当局には本当に、CBD をはじめとするカンナビノイドの合成的な製造を監督することができるのでしょうか?

アメリカの多くの州で大麻が合法化されていく一方で、連邦政府による大麻業界の管理監督はほとんど行われておらず、その中には、FDA の監督が不在のまま急速に増大するヘンプ由来 CBD とその派生物の製造も含まれます。危険である可能性もある香味料をベープ製品に加えたり、THC-O アセテートのような新手の人工カンナビノイドを加えて効きを強めたり、規制されていない化学触媒を使って CBD から Δ8THC を半合成したいと考える製造業者がいれば、それは可能ですし、実際に行われています。しかも、各州が義務付けている標準的な検査ではこれらの物質は検出されません。キラリティーの違いも、自然界には存在しないカンナビノイドもこの検査では見つかりません。

(+) または cis 型の CBD や、その他自然界に存在しないキラリティーのカンナビノイドが市場に登場するのは時間の問題です。非植物由来のカンナビノイドを作ろうとする人にとって、ラセミ混合物を作る方が、鏡像異性的に純粋な化合物を作るよりも安い、というだけでそれをする理由は十分だからです。人工カンナビノイドが特に気になる副作用を持たないことを願いますし、もしかしたらそうしたカンナビノイドの中には実際に有益なものもあるかもしれません。でも、今はまだ何とも言えません。予防的規制と製造工程の監督が必要であることは明らかです。

大麻草の栽培はおそらく、大麻業界の主流のままであり続けるでしょう。でも近い将来、合成的に製造されたカンナビノイドが市場でかなりのシェアを占めるようになるのは必至です。人工的に製造されたカンナビノイドは、企業にとっても消費者にとっても、事実上あらゆるカンナビノイドを幅広く入手可能にし、それがなければ実現不可能なフォーミュレーションによる新しい製品が生まれる原動力となるでしょう。ただし、栽培された大麻草から作られるのではないカンナビノイドを製造する企業は、それが自然界が生み出すのと 100% 同一のキラリティーであることの証明を義務付けられるべきです。

新しい製造過程が誕生し、採用されていく今、カンナビノイドのキラリティーという問題が史上初めて浮上しています。大麻に関する、この非常に興味深い一面について研究していくにあたっては、他のキラルな薬物の歴史から学んだこと——THC を今以上に優れた制吐薬にできるかもしれないという素晴らしい可能性と同時に、もう一つの制吐薬、サリドマイドが引き起こした悲劇に象徴される危険性について——を心に留めなくてはなりません。


マット・エルメス博士はカンナビノイドの研究者であり大の大麻愛好家。博士課程およびポスドクの研究はカンナビノイドの生化学にフォーカスしたもので、重要な研究結果によってこの分野に多大な貢献をした後、現在は研究者としてのキャリアを離れ、カリフォルニア州の大麻業界での実業に携わっている。

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脚注

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  2. Filer, C. N. Chirality in Cannabinoid Research. Cannabis Cannabinoid Res 6, 1-4, doi:10.1089/can.2020.0027 (2021).
  3. Schafroth, M. A. et al. Delta(9)-cis-Tetrahydrocannabinol: Natural Occurrence, Chirality, and Pharmacology. J Nat Prod 84, 2502-2510, doi:10.1021/acs.jnatprod.1c00513 (2021).
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  8. Hanus, L. O. et al. Enantiomeric cannabidiol derivatives: synthesis and binding to cannabinoid receptors. Org Biomol Chem 3, 1116-1123, doi:10.1039/b416943c (2005).
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  11. Ozek, T., Tabanca, N., Demirci, F., Wedge, D. E., & Baser, K. . Enantiomeric distribution of some linalool containing essential oils and their biological activities. Rec. Nat. Prod., 180-192 (2010).
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  14. Mazzara, E. et al. A Comprehensive Phytochemical Analysis of Terpenes, Polyphenols and Cannabinoids, and Micromorphological Characterization of 9 Commercial Varieties of Cannabis sativa L. Plants (Basel) 11, doi:10.3390/plants11070891 (2022).
  15. de Sousa, D. P., Nobrega, F. F., Santos, C. C. & de Almeida, R. N. Anticonvulsant activity of the linalool enantiomers and racemate: investigation of chiral influence. Nat Prod Commun 5, 1847-1851 (2010).
  16. Luo, X. et al. Complete biosynthesis of cannabinoids and their unnatural analogues in yeast. Nature 567, 123-126, doi:10.1038/s41586-019-0978-9 (2019).

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