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カリフォルニア州に拠点を置く非営利団体 Project CBD は、医療従事者、患者、政策立案者に向けて、大麻と薬物の相互関係に関する詳細な手引きを発表しました。全33ページの冊子の中身を要約すると以下のとおりです。

現代医学において、薬物間相互作用を考慮することは重要です。アメリカ人の半数以上が普段から処方薬を摂っており、75% の人は少なくとも1種類の市販薬を使っています。大麻の利用者が最も急速に増えている高齢者層のほとんどを含む多くの人が、複数の薬を使っており、それらの中には相互作用があり互いの代謝に影響するものがあります。

大麻はアメリカで、また世界中で最も汎用されている薬物であり、膨大な数の大麻使用者が、同時に医薬品も使っています。治療法の選択肢の一つとして大麻が広く受け入れられ、入手しやすくなるにつれて、医師や患者は、カンナビジオール(CBD)やテトラヒドロカンナビノール(THC)という主要なカンナビノイドをはじめとするさまざまな大麻の成分が、一般的に使用されている医薬品とどのような相互作用を持ち得るかについて理解することが重要です。

ところが、大麻が規制物質であり、臨床的に意味のある研究が制限されているために、カンナビノイドと医薬品の相互作用に関する正しい情報はなかなか手に入りません。そこで Project CBD は、医療従事者や患者のためにこの手引書を書きました。薬物間相互作用をあらかじめ予測して問題を回避するだけでなく、大麻と医薬品が良い意味で相乗的に働く場合にはそれを利用するためです。

問題の複雑さ

この手引き書を書いたエイドリアン・デヴィット-リー(Adrian Devitt-Lee)によれば、これは非常に複雑な問題です。「ある薬がまったく使えないほど危険な薬物間相互作用があることは稀ですが、患者の治療や健康状態に深刻な影響を与える場合もあります」

Project CBD による手引き書は、あらゆる薬剤の60〜80%の代謝に関連する非特異性酵素、シトクロムP450ファミリーが分解する基質(薬)について解説しています。シトクロムP450ファミリーに属する酵素の働きは、CBDTHC、その他の植物性カンナビノイドによって阻害されたり増強されたりします。その結果、他の薬剤の作用が弱まったり作用時間が長くなったりすることがあります。

CBDやTHCは、特定のシトクロムP450の働きを抑制したり誘導したりすることで、人がさまざまな物質をどのように代謝するかに影響を与えます。その際に重要なのは、薬物間相互作用にどんな基質が関連しているかです。たとえば「プロドラッグ」と呼ばれる医薬品は、代謝されて活性成分になるまでは薬効を持ちません。もしもCBDまたはTHCがプロドラッグの分解を阻害すれば、プロドラッグは非活性のままです。一方、通常の薬剤の分解が阻害されれば、その有効成分の血中濃度が高まることになります。

さまざまな要素が関わっているため、薬物感相互作用を正確に予測するのはベテランの医師であっても困難です。「薬物相互作用が起こる可能性がある、と判断するのは、その作用を正確に予測することよりもはるかに容易である」とProject CBDの手引き書には書かれています。

CBDのパラドックス

未加工の大麻草の花穂やフルスペクトラムのカンナビス・オイルが広く使用されている様子を見ていると、現在のところ、カンナビノイドと薬剤の相互作用が原因で多くの問題が起きているようには見えません。サティベックス(CBDTHCが1:1の割合で含まれる舌下投与型ティンクチャー)とマリノール(純粋な合成THC)が臨床で使われた場合も、薬剤との相互作用が原因とされる有害事象はほとんど報告されていません。

有害な薬物相互作用が起きた場合について言えば、それはほぼ100%純粋のCBDアイソレートを高用量で使用した場合に限られ、大麻全般に当てはまるわけではありません。陶酔作用があるTHCとは違ってCBDには陶酔作用がないとは言え、純粋なCBDの場合には高用量が用いられる傾向があるため、薬物間相互作用が代謝に影響を及ぼすリスクはずっと高くなるのです。

実際の数字で考えてみましょう。大麻製品にTHCが10mg含まれていれば、医療大麻に慣れていない患者にとってはかなりの高用量ですし、ときどき嗜好大麻を使う程度のユーザーにとってもハイになるには十分です。10mgのTHCと、同量のCBDを組み合わせたサティベックスは、臨床試験では鎮痛薬として高い効果がありました。これに対し、てんかんの子どもに臨床試験で投与された単一分子CBDの用量は、最大で体重1キロあたり50mgでした。オンラインショップその他、政府の監督のない販路からCBDアイソレートを入手する患者の中には、多ければ一日に2,000mg摂っている人も珍しくありません。

THCには、いわばガードレールが備わっています—摂りすぎれば自ずと限界はわかるものです。ところがCBDにはこのガードレールがありません。摂りすぎた、と知らせてくれる不快な症状のフィードバックがないのです。CBDは本質的に安全ですが、大麻から抽出されたものが精製されてアイソレートになると、治療効果が現われるためには高用量が必要になります。一方CBDを豊富に含む大麻草全草からの抽出物は、治療域が広く、単一分子CBDに比べて低用量で効果を発揮します。

単一分子CBDを高用量で摂取した場合、他の形で大麻を摂取したときよりも薬物間相互作用が起きる可能性が高くなります。医師や患者はこの点について注意が必要です。現行の規制制度が、品質に拘って大麻草から抽出され、さまざまな成分を含む製剤よりも、CBDアイソレートに甘い、ということを考えるとなおさらです。

摂取の方法と順序

カンナビノイドの摂取の方法(喫煙、経口摂取その他)もまた、薬物相互作用の有無に大きく影響します。二つの薬をともに経口摂取し、それらが肝臓で代謝されてから全身に分布される場合の方が薬物相互作用が起きる可能性はずっと高くなります。カンナビノイドは、満腹のときに経口摂取すると吸収率が高まります。また、吸入したカンナビノイドよりも経口摂取の方が肝臓中の最大濃度が高くなりますので、薬物相互作用も強くなります。

Project CBDの手引き書は、摂取方法だけでなく摂取の順序も薬物の代謝に影響すると指摘しています。ある研究によれば、CBDを別の薬を摂取する20分前に摂ると、特定のシトクロムP450に対してより強い阻害作用があることがわかっています。

CBDはTHCとも相互作用があります。CBDとTHCを一緒に摂ると、THCの陶酔作用は弱まりますが持続時間はちょっと長くなるように感じるかもしれません。THCの活性代謝物である 11-OHTHC は、精神作用の媒介となるCB1受容体により強く働くことがわかっています。これとは別のTHCの代謝物、11-COOHTHCは、陶酔作用を引き起こすことなく抗炎症作用を発揮します。

中にはTHCをまったく受け付けない人もいます。高THCの大麻に対する反応が人によって大きな幅があるのは、遺伝的要素が関連しているのかもしれません。特定のシトクロムP450をコードする遺伝子の一般的な多型(変異型)は、その人のTHCの代謝の仕方を変化させ、その結果THCの分解が遅くなり、活性が長時間続くこととなって、THCの精神作用に対する感受性が過敏になるのです。

THC含有量の多い大麻をリラックスするために吸っている人の数は膨大ですが、中にはそれを不愉快に感じる人がいるのは、このことが一因かもしれません。この遺伝的変異は、ヨーロッパと中近東の人々の20%に見られます。つまり、白色人種の5人に1人はTHCが苦手である可能性があります。アフリカ系の人では10%、アジア人では5%未満の人にしかこの変異は見られません。

ポジティブな相乗効果

Project CBDによる手引き書には他にも、以下のような重要点が述べられています。

  • THCと肺がん:大麻を喫煙すると、肺の中のシトクロムP450が、吸い込んだ灰を、非常に有毒な多環芳香族炭化水素化合物(PAH)を含む強力な発がん性物質に変換します。ところがそこにTHCがあると、PAHが誘導するこれと同じ代謝酵素を阻害することによって、肺がんを防ぐ可能性があります。
  • カンナビノイドとオピオイドの相互作用:オピオイド系鎮痛薬をベースにした疼痛管理を医療大麻で補完すると、十分に痛みが軽減されるのに必要な鎮痛剤の量も減らせる可能性があります。オピオイドの用量が減れば、過剰摂取による死亡も減少するでしょう。これは、カンナビノイドが他の薬物とポジティブな相互作用を発揮する一例です。
  • CBDTHCと抗がん剤:数は少ないですが、基礎研究の結果は、CBDまたはTHC、あるいはその両方を第一選択薬の抗がん剤と併用すると、抗がん剤の薬効が高まり、毒性の高い抗がん剤の用量を減らせる可能性を示唆しています。もしもこの結果が実際に人間にも当てはまるとしたら、その恩恵は大変大きいでしょう。ただし、純粋なCBDが抗がん剤の代謝を遅らせるとすれば、毒性のある薬の血中濃度が危険なほど高くなりかねませんので、抗がん剤の用量を減らして適切に管理する必要があります。カンナビノイドによって、放射線治療および化学療法のどちらも耐容性と効果が高まる、という事実は、さらなる研究に値する分野です。
  • 抗凝固薬:THCとCBDはどちらも、抗凝血剤として広く処方されているワーファリンの代謝を遅らせます。毎年、ワーファリンの用量を誤り、出血多量で救急室に運び込まれる人が後を絶ちません。Project CBDの手引き書では、ワーファリンとCBDアイソレートを併用している患者のために医師がワーファリンの用量を調整することに成功した最近の事例を検証します。

研究の障害

Project CBDの手引き書が提供する情報は、医師や患者に、大麻やカンナビノイドと他の薬物の相互作用がどんなときに起きる可能性が高いのかを理解していただくためのものです。「薬物相互作用に対する恐怖心を植え付けようとするものでも、何十年も続いている浅はかな反マリファナヒステリーに加担しようとするものでもありません」と著者は強調しています。

カンナビノイドの薬物相互作用の危険性はどの程度なのでしょうか? それは、その患者が使っている他の処方薬の用量を誤ったときと同程度であると言えます。問題は、本来なら害のないCBDアイソレートを、治療に有効な量と有害になる量の差が非常に少ない医薬品と併用し、高用量摂取したときに起こる可能性が高いでしょう。

GW製薬が、ほとんど純粋のCBDであるエピディオレックスについて行った臨床試験では、抗てんかん薬クロバザムとの間に危険な薬物相互作用が起こる可能性があり、クロバザムの用量を調節する必要がありました。それでも食品医薬品局(FDA)はエピディオレックスを難治性てんかんの子どもの治療薬として承認し、麻薬取締局(DEA)は2018年9月、エピディオレックスをスケジュールVに分類しています。

エピディオレックスは、その価格もさることながら、適応外処方の可能性が多大な注目を集めるに違いありません。同様に、ヘンプ由来のCBDアイソレートが、法的な規制が不十分なままに巨大な市場を形成するであろうことも確かです。CBD製品に対する消費者の需要はすでに巨大であり、疼痛、がん、自閉症、心臓病、その他数々の慢性疾患の治療薬とカンナビノイドの間にどんな薬物相互作用があるかについての臨床データが追いついていないのです。

必要な研究を昔から妨げているのが、スケジュールIという大麻の分類です。スケジュールIというのは、連邦法によれば、医療効果のない危険薬物であるということです。でも、大麻が規制物質であるために国が承認した臨床研究が不足している、ということを言い訳に、医師や患者が、人が死ぬ恐れがなく、さまざまな疾患の治療に役立つ可能性を見せている医療大麻を避けるべきではありません。

Project CBDは、「医療大麻による治療がより多くの医師や患者に受け入れられるようになっていくにつれて、CBDTHC、その他の植物性カンナビノイドと薬剤の相互作用に関する臨床研究に十分な資金が得られるようになることを願ってやみません」。


この手引き書を日本語で読みたい方はこちらからどうぞ。



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