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そう遠くない将来、あなたが口にするカンナビノイド入りの食品やティンクチャーに含まれる CBDTHC の原材料は、大麻草とはまったく関係がなくなるかもしれません。あなたが毎日摂取するカンナビノイドは、温室で栽培されるのではなく、工場で製造されているかもしれないのです。

ヒヤシンス・バイオ(Hyasynth Bio)社の共同設立者であり CEO であるケビン・チャン(Kevin Chen)は、モントリオールを拠点とする自分たちのスタートアップ企業は「酵母菌の株を操作して、大麻草を栽培せずに大麻の活性成分を酵母から作ることに集中している」と語ります。

ヒヤシンスは、カンナビノイドの「生合成(バイオシンセシス)」に期待を寄せる複数の企業の一つです。2014年の創業以来、ヒヤシンスは 1,200万ドルの資本を集め、その大部分は、ニューブランズウィック州にあり、カナダの大麻生産ライセンスを持つ大手企業の一つ、オーガニグラム(Organigram)社が出資しています。

「今はまだ研究開発の段階ですが、CBD を市場に出している企業に販売したいと思っています」とチャンは言います。「食品飲料会社が乗ってくると思うんです。工業的な規模での発酵にはいくつかの利点があって、特に大規模な生産での効率の向上もその一つです。大量に生産するにはこの方が早いし楽なんですよ」

乳酸菌、アスコルビン酸(ビタミンC)、それにさまざまな抗生物質が、すでにこの方法で製造されている、とチャンは指摘します。

遺伝子組み換え技術

チャンによれば、アメリカ、中国、その他世界中の国々で、「DNA のサブユニットである核酸の一個から遺伝子が合成」されています。

この技術はもともと 1970年代に、サンフランシスコにある Genenntech 社によって、インスリンを製造するために開発されました。インスリンはそれまでは豚の膵臓から抽出されており、現在の基準から考えれば非常に効率の悪い方法でした。現在は、インスリン製造のプロセスにはまず遺伝子組み換え技術があります — ヒトの DNA を採取して細菌の中に置き、そこからインスリンを生成するのです。

「それと同じように私たちは、大麻草の遺伝子を酵母菌に植えるわけです」とチャンは説明します。「この 20年、大麻草のゲノムをマッピングする中で、カンナビノイドの産生に関与する遺伝子の解明が行われてきました。その研究結果は公表されていますから、私たち自身が大麻草に触れる必要はないんです。私たちは、カンナビノイドを生成する酵素の遺伝子を入手し、酵母菌のゲノムに加えます。こうした遺伝子は合成されたもので、小さな瓶に入った透明の液体が郵便で送られてきます」

たとえば、CBDA シンターゼと THCA シンターゼとは、生の大麻草に含まれる CBDTHC前駆体CBDA および THCA の生成を刺激する酵素のことです。すでに、これらの酵素を実験室で合成したものを酵母菌に加えて CBDA その他のカンナビノイド酸が培養されています。

チャンは、「私たちが生産する CBD は大麻草から抽出されたものと変わりません。操作された酵母菌を使ってはいますが、最終的な生成物には手を加えていません」と強調します。

ユニークなのはその工程です。「私たちは特許ポートフォリオを蓄積しようとしていて、すでにいくつかの特許を出願しています。うち2つは出願公開されています」とチャンは言います。「私たちは、カンナビノイド合成のための独自の方法を開発しています。私たちの知的財産には、その方法を構成するさまざまな要素が含まれることになり、私たちが開発した酵母株だけが持つ特徴もその一部です」

酵母菌が作る CBD

間もなくカナダで解禁されようとしているエディブル製品の市場に、酵母菌から作られる CBD の需要があることは明らかです。エディブル製品は、カナダの医療大麻制度のもとでは 2015年の最高裁の決定を受けて合法になりましたが、2019年に発効したカナダ保健省の規制により、嗜好大麻市場でも合法化されました。アメリカでは未だに、CBD をエディブル製品や健康食品に使用することを FDA が許可するのが待たれている状態ですが、カナダではこの市場が急成長しています。

ただし、政府の監督を受けない CBD 製品がそこら中にあるアメリカと違い、カナダでは、CBD 製品は認可された大麻ディスペンサリーでしか買えません。アメリカの大麻合法州では数年前から、ライセンスを取得した店舗で高 CBD または高 THC のエディブル製品が販売されていますが、連邦レベルで大麻が合法化されたカナダでは、大麻の成分を含むエディブル製品はやっとこれから市場に出回ろうとしているところです。

「それぞれの国の市場を分析する必要があります」とチャンは言います。「技術に追いつく政府機関が増えています。カナダでは、すべてのカンナビノイドは、それがどんな方法で製造されたものであれ、法のもとでは平等に扱われます。これがアメリカでも合法かどうか、今まさに分析しているところです

2018年にカナダで制定された Cannabis Act によれば、すべてのカンナビノイドは、各州政府によって、カナダ保健省の「規制物質・大麻局」による監督のもとに規制され、連邦政府の「規制物質庁」は、それまで規制薬物・物質法のもとで行使していた監督権を放棄しています。

カンナビノイドの生成に使われる酵素についてチャンは、アメリカでもカナダでも法的に禁じられていないプロセスにおける、「小さな一歩」であると言います。「遺伝子は規制物質ではありませんからね」

法的な複雑さはあるものの、酵母菌から作られた CBD 製品は、アメリカでもカナダでも近い将来に販売されるようになるかもしれません。

大企業が見据える大麻の先の可能性

2018年のオーガニグラム社によるヒヤシンス社への 1,000万ドルの投資は、カナダ、アメリカ、ヨーロッパで最近報告された複数の投資の一つにすぎません。

2018年にはまた、トロントの大麻企業の大手クロノス・グループ(Cronos Group)が、ボストンに拠点を置き、やはり発酵過程を使ったカンナビノイドの製造を目指しているギンコ・バイオワークス(Ginkgo Bioworks)社と戦略的パートナーシップを結んだことを発表しました。カナダの報道機関はこの契約を 2,200万ドルと見積もっています。クロノス・グループの CEO マイケル・ゴレンシュタイン(Michael Gorenstein)によれば、この提携が重点を置くのは、「従来の方法による栽培・抽出」を大規模に行うのが「経済的に非実用的」である「希少なカンナビノイド」です。

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この製造方法を開発中の他の企業には、バンクーバーの InMed Pharmaceuticals や、カリフォルニア州バークレーに近いエメリーヴィルにある Amyris 社などがあります。Ginkgo Bioworks と Amyris はともに、酵母菌からカンナビノイドを産生する製法の特許をアメリカで取得しています。

カリフォルニア州立大学で最も権威あるバークレー校に近い、という事実が、イーストベイ地域をこの分野の研究の拠点にしています。TechCrunch の記事によれば、カリフォルニア州立大学バークレー校の研究者 Jay Keasling が創設し、元 Amyris 社の取締役である Jeff Ubersax が率いる デメトリックス(Demetrix)社は、香港の不動産長者 Li Ka-shing が後援する Horizon Venturesと、マンハッタンに拠点を置いて合法大麻業界に投資を行うファンド会社 Tuatara Capital から、5,000万ドルの出資を獲得しています。

ヨーロッパにも、この方法を開発中の企業が少なくとも一社あります。フランクフルトにある Farmako 社は昨年、欧州特許庁に対し、同社が開発した、砂糖からカンナビノイドを生成する微生物の世界特許を出願しています。Zymomonas cannabinoidis と名付けられたこの人工微生物は、テキーラの醸造に使われる Zymomonas mobilis という酵母菌に手を加えたものです。Digital Journal 誌の記事によれば、アルコールを生成する遺伝子を排除し、代わりに大麻草と、こともあろうにマラリア原虫から採った遺伝子が加えられたということです。

法律の抜け穴

THC はすでに、アメリカでは合成され、医薬品として流通しています。市場には、マリノールシンドロスという2つの商品があり、ドロナビノールと呼ばれる合成 THC が使われています。1985年に FDA によって、主に消耗症候群のエイズ患者の食欲を刺激したり、抗がん剤治療に伴う吐き気の軽減に使われる医薬品として承認されたものです。FDA に承認された3つ目の医薬品セサメットは、同じく抗がん剤治療を受けている患者に処方され、ナビロンと呼ばれる合成 THC アナログを含んでいます。ただしこれらの医薬品が化学的に合成されたものであるのに対し、新しく進む研究はバイオシンセシス(生合成)がその焦点です

これは魅力的な可能性です — 実際の大麻草に含まれるカンナビノイドの作用とそっくりに作用し、それでいて特許を申請できるだけの独自性を持つ新しい生体化合物を作るというのですから。ケビン・チャンによれば、この可能性は大麻業界の将来にとって特に明るいものであり、ヒヤシンス社はすでに、「大麻草には含まれない、新しいカンナビノイド」を合成したと言います。

同様に、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の Cannabis Research Initiative を統括するジェフ・チャン(ケビンとは縁戚関係はありません)は昨年、Green Entrepreneur に、「これらの新しい化合物は特許の取得が可能であり、さまざまな疾患に合わせて手を加えることができる」と語っています。そして、生合成された化合物にとっては、それが特許取得が可能な「新しい」化合物であると主張する方が、特定の大麻の品種に特許を取得しようとするよりもずっとわかりやすいのです。

デンバーにある AgriScience Labs の微生物研究チームでアナリストを務めるカーリー・ベイダー(Carly Bader)は、遺伝子組み換えカンナビノイドの開発は、実は大麻草に加えられた規制がその動機となっていると言います。

ベイダーによれば、「これらの化学物質には、作用自体は変化せず、たとえば大麻成分と同じ鎮痛作用があるけれども分子構造的にはリングが一つ多い、というふうに手を加えることができます。この、一つ多いリングは不活性なのですが、それがあることでこの分子は THC でも CBD でもありません。大麻草とは無関係なので、法律による規制を逃れることができるのです」

純度と効果

けれどもベイダーはまた、「フルスペクトラム」の効果を発揮するのは大麻草に含まれるさまざまなカンナビノイドの相乗効果がある場合だけだとも指摘します。「カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)などをそれぞれ単離することはできます。でも、これらは一緒になって初めて効果を発揮する、という考え方があるのです。ですから、自分の望むような効果を得るためには、純粋な化合物であることが最良とは言えないかもしれません

その一方で生合成技術は、前述の3つを含む希少なカンナビノイドの需要が拡大すれば、重要なニーズを満たせる可能性を持っています — そしてそれらのマイナーカンナビノイドには、今はまだ明らかになっていない医療効果がある可能性があるのです。

「大麻草が、臨床的に意味のある医療効果を発揮できるほど大量のマイナーカンナビノイドを産生することは決してありません」とベイダーは言います。「私たちの顧客である企業の一つは、1グラムにつき 500ミリグラムの CBN が入った局所薬を製造しています。大麻草から採れる CBN を使っているんですが、原料もたくさん必要だし、製造には非常に手間がかかります」

ベイダーはまた、CBN が法的立場のはっきりしない成分であることも指摘します。「規制物質のリストにはありませんが、THC のアナログとみなすことも可能です」

「特定の分子構造を持つ化学化合物が合法であるかどうかは必ずしも明らかではありませんし、正確でもありません」とベイダーは続けます。「禁止されている期間が長かったので、大麻についてはやり方が逆になっています。つまり、先に一部の州で大麻草を合法化した後で、今度はその他に何が合法なのかを決めなければならないのです。私がコレラ毒素を研究していたときは、誰も私がそれを手に入れるのを邪魔したりしませんでした。ところが大麻草の場合、連邦政府からは一切資金の援助がなく、大麻草が完全に違法だった状態から、大麻を取り締まる法律を排除して研究ができるようにしようとしているわけです」

「法律や大麻に対するネガティブなイメージは、この分野に参入する障害になります。この仕事を引き受けるのは勇気が要りました — この仕事をすることで、自分に特定の色がつくことがわかっていたからです。でも今では、この仕事をしていること、科学と公衆衛生の前進に役立っていることを誇らしく思っています」

フランケン・カンナビノイドは登場するか?

でも、大麻業界の誰もがこうした理想主義を掲げているわけではありません。単一分子薬品よりも昔ながらの大麻草を好む活動家たちの間には、生合成技術に対する深い懐疑感が存在します。

農作物や料理に見られる遺伝子組換え生物(GMO)は往々にして、危険な「フランケンフード」と揶揄されます。私たちは今、もしかしたら危険で社会的に無責任な、酵母菌から生合成された「フランケン・カンナビス」の出現を目撃しているのでしょうか? 発酵が、医薬品としての CBD やカンナビミメティック医薬品の未来を作るのでしょうか?

東南アジア諸国の、生まれたばかりの大麻業界の発展に尽力する Thai Cannabis Corporation のウェブサイトには、実験室で培養されるカンナビノイドの台頭が、特に開発途上国の昔ながらの大麻栽培家たちにとって何を意味するかについての同社の懸念が述べられています。

筆者はその中で、カンナビノイドを、バニラの風味のもとである有機化合物バニリンに喩えています。バニリンがバニラという植物の一番大切な成分であるのはもちろんですが、現在全世界に流通するバニラフレーバーの 99% 以上は工場で合成されたバニリンが使われており、栽培されたバニラの実から抽出されたものは1%に足りません。そしてその1%のほとんどがマダガスカル産ですが、バニラの栽培は厳しい仕事であり、「先日マダガスカルを襲ったサイクロンと干ばつによって、栽培されたバニラの抽出液の価格は跳ね上がったが、マダガスカル島の農民たちは貧しいままである」と書かれています。

バニラと同じことが起こるのか?

Thai Cannabis Corporation は、これと似たことが大麻にも起きると予測します。「バニリンと同じく、合成 THCCBDCBG などは、世界の需要の 99% を満足させるのには『十分』になるでしょう。そして世界中の栽培農家たちが残った1%を奪い合い、世界でも最も貧しい国の、世界最高の農家だけが生き残るでしょう — 極度の貧困を「生きる」と呼べば、の話ですが」

Thai Cannabis Corporation は、生合成技術はいずれ、大麻草のフルスペクトラムのアントラージュ効果を再現するところまで進化するのではないかと言います。「化学者たちは、合成されたカンナビノイド、テルペン、フラボノイドをブレンドして、ゴリラ・グルー、ジャック・ヘラー、シャーロッツ・ウェブ、その他さまざまな大麻品種からの抽出物とそっくりで見分けがつかず、同等の効果がある類似品を作ることがおそらく可能でしょう。

そしてそれが最終的に、大麻栽培家を破滅させかねません。

ただし、天然の大麻草が持つ複雑な強壮効果を人間の手によって再現することが可能かどうかはわかりません。あるいは合成カンナビノイドが、文字のない頃から人間とともにあった驚くほど多用途な大麻草に対して世界中でどんどん大きくなる需要を満足させられるのかどうか、それもわかりません。

バイオファーミング(生物医薬生産)が大麻栽培に与える影響について尋ねられたヒヤシンス社のケビン・チャンは、「カンナビノイドには医薬品としての大きな可能性がありますが、バニラにはありません。医薬品のサプライチェーンを検討する際には、規模と安定性が重要です。インスリンの生産が非常にうまくいったのはそのためです….. ほとんどの人は、大麻は特別だし、品質が良くて価格が低い医薬品があるのは良いことだと思っていると思います」

分かりきったことではありますが、技術は往々にして諸刃の剣であり、可能性を生みもしますが同時に危険性も伴います。だからこそ私たちは、モントリオール、フランクフルトからイーストベイまで、企業のバイオテック工場で何が開発されているのか、注視していかなくてはなりません。


ビル・ワインバーグ(Bill Weinberg)は、人権問題、環境、薬物政策の分野で 30年の実績と受賞歴を持つジャーナリスト。High Times 誌のニュースエディターを務めたこともあり、現在は CounterVortex.org と Global Ganja Report というウェブサイトを運営している。


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