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Project CBD は最近、大麻草に含まれるテルペン(大麻草に独特の豊かな香りを与える化合物)が CB1 カンナビノイド受容体を活性化することを示す研究結果を紹介しました。それだけでなく、(同じくCB1 作動薬である)THC が存在すると、テルペンは多岐にわたる興味深い形でカンナビノイドの活性を調節するようです1, 2。この記事では、CB1 だけでなく、エンドカンナビノイド・システム全体に影響を与えるいくつかの標的にも作用する、大麻草に含まれる最も一般的なテルペン、ピリッとした辛味のある β-カリオフィレン(BCP)に注目します。

BCP は、黒胡椒、バジル、オレガノ、シナモン、ホップ、ローズマリー、クローブ、柑橘類、その他多くの葉物野菜にも含まれる成分です。米国食品医薬品局(FDA)から食品の着香料として認可されているこの強力なセスキテルペンは、医学的にもかなりの研究が行われています。最近の論文では、非アルコール性脂肪性肝疾患、慢性疼痛、薬物乱用など、さまざまな疾患の治療に対する BCP の治療効果を探っています。

食物性カンナビノイド

β-カリオフィレンは、CB1 受容体への作用は弱い一方、免疫機能や炎症の制御に重要な役割を果たすCB2 受容体に対しては「完全作動薬」と呼ばれます。多くの食品やスパイスに含まれ、CB2 に強い親和性を持つことから、BCP は「食物性カンナビノイド」として認識された初めてのものです。

β-カリオフィレンが、細胞核の表面にあるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)とも相互作用することを示す論文が複数あります。CBD もまたこの受容体を活性化し、代謝やエネルギーの恒常性を調節します。

PPAR とエンドカンナビノイド・システムが代謝というプロセスの調節に関与していることから、イタリアのトリノに拠点を置く研究グループは、世界で最も一般的な慢性肝疾患3 である非アルコール性脂肪性肝臓病の細胞モデルで BCP が有効かどうかを検証しました。

β-カリオフィレンは、多くの食品やスパイスに含まれ、CB2に強い親和性を持つことから、「食物性カンナビノイド」と呼ばれています。

2023年 3月に『International Journal of Molecular Sciences』誌に掲載された論文4 は、病変した肝細胞に改善がみられただけでなく、特定の受容体拮抗薬を用いて、これらの変化が実際に CB2 および2種類の PPAR 受容体—— PPAR-α と PPAR-β ——に媒介されていることを確認したと述べています。

(興味深いのは、2023年5月に『PLoS One』誌に掲載された論文6 を含む複数の大規模疫学研究5 が、大麻の使用と脂肪性肝疾患のリスク低減を結びつけていることです。イタリア発のこの新しいエビデンスは、CB2 および PPAR 受容体の活性化が、少なくともその理由の一つである可能性を示唆しています。)

アルツハイマー病と薬物乱用

他にも、近年行われた研究によって、β-カリオフィレンが持つ数々の健康効果と複数の作用機序についての理解が深まっています。たとえば、2014年には重慶医科大学の中国人研究者らが、アルツハイマー病のマウスモデルにおいて、BCP が認知障害を予防することを報告しました。認知能力に対するこのポジティブな作用は、「海馬と大脳皮質の両方におけるベータアミロイド蓄積の減少と関連している」と、『Pharmacology』誌に掲載された彼らの論文7 は述べており、BCP の神経保護作用が CB2 受容体の活性化と PPAR-γ 経路を介するものであることを特定しています。

もっと最近では、イランの研究者らが 2022年 7月に『BioFactors』誌上で発表した論文8 で、β-カリオフィレンの抗酸化作用と免疫調節作用を調べ、β-カリオフィレンは炎症性サイトカインを減らす一方、抗炎症性サイトカインを増やすことが示されたとしています。さまざまな細胞経路のうち、CB2 および PPAR-γ が主要な作用機序として挙げられています。

また、ブラジルの研究者らが 2022年 12月の『Current Neuropharmacology』誌で発表した論文9 では、「物質使用障害治療のための新薬としての」BCP の可能性が検討されています。著者らは、コカイン、ニコチン、アルコール、メタンフェタミンに対する依存症の動物モデルを用いた過去の前臨床研究をレビューし、その結果、β-カリオフィレンは「驚くべきことに、薬物曝露による行動の変化を防止または逆転させた」と結論し、ここでも CB2 と PPAR-γ の両受容体が関与しているエビデンスがあるとしています。

鎮痛作用

最後に、黒胡椒の種からの抽出物である Viphyllin という製品を製造しているインドの Vidya Herbs 社に勤める科学者による論文は、β-カリオフィレンが主に CB2、PPAR-α、そしてカンナビジオールと共通する第三の経路、TRPV1 イオンチャネルの活性化によって、マウスの痛みを軽減できることを示唆しています。

2022年 2月に『Journal of Pain Research』誌に掲載されたこの論文10 では、90%の純度の β-カリオフィレンと、少なくとも 30%の β-カリオフィレンと、それより少量のリモネン、β-ピネン、サビネン(さまざまな大麻品種にも含まれるテルペン 3種)を含む黒故障抽出物 Viphyllin の両方を投与しました。

医学者は、非アルコール性脂肪肝疾患、慢性疼痛、薬物乱用の治療薬としてβ-カリオフィレンを研究しています。

Viphyllin を純粋な BCP の約3倍の用量で投与したところ、この 2つは、使用された4つの行動モデルのすべてにおいて、同程度の疼痛軽減作用があることが証明されました。

また、これらの試験のうち3つでは、CB1、CB2、TRPV1、PPARα の遮断薬を使って、Viphyllin が分子レベルでどのように作用するかを調べました。その結果、CB2、PPARα、TRPV1 がその鎮痛作用に最も大きな役割を果たすことがわかりましたが、一般的なテルペンの作用標的である CB1 受容体もまたそこに一役買っている可能性があります。


Project CBD の寄稿者 Nate Seltenrich は、Bridging the Gap というコラムの筆者であり、サンフランシスコのベイエリアに住むフリーランスの科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。

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参照文献

  1. Raz, Noa et al. “Selected cannabis terpenes synergize with THC to produce increased CB1 receptor activation.” Biochemical pharmacology vol. 212 (2023): 115548. doi:10.1016/j.bcp.2023.115548
  2. LaVigne, Justin E et al. “Cannabis sativa terpenes are cannabimimetic and selectively enhance cannabinoid activity.” Scientific reports vol. 11,1 8232. 15 Apr. 2021, doi:10.1038/s41598-021-87740-8
  3. Younossi, Zobair M et al. “The global epidemiology of nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) and nonalcoholic steatohepatitis (NASH): a systematic review.” Hepatology (Baltimore, Md.) vol. 77,4 (2023): 1335-1347. doi:10.1097/HEP.0000000000000004
  4. Scandiffio, Rosaria et al. “Beta-Caryophyllene Modifies Intracellular Lipid Composition in a Cell Model of Hepatic Steatosis by Acting through CB2 and PPAR Receptors.” International journal of molecular sciences vol. 24,7 6060. 23 Mar. 2023, doi:10.3390/ijms24076060
  5. Kim, Donghee et al. “Inverse association of marijuana use with nonalcoholic fatty liver disease among adults in the United States.” PloS one vol. 12,10 e0186702. 19 Oct. 2017, doi:10.1371/journal.pone.0186702
  6. Du, Rui et al. “Marijuana use is inversely associated with liver steatosis detected by transient elastography in the general United States population in NHANES 2017-2018: A cross-sectional study.” PloS one vol. 18,5 e0284859. 18 May. 2023, doi:10.1371/journal.pone.0284859
  7. Cheng, Yujie et al. “β-Caryophyllene ameliorates the Alzheimer-like phenotype in APP/PS1 Mice through CB2 receptor activation and the PPARγ pathway.” Pharmacology vol. 94,1-2 (2014): 1-12. doi:10.1159/000362689
  8. Baradaran Rahimi, Vafa, and Vahid Reza Askari. “A mechanistic review on immunomodulatory effects of selective type two cannabinoid receptor β-caryophyllene.” BioFactors (Oxford, England) vol. 48,4 (2022): 857-882. doi:10.1002/biof.1869
  9. Asth, Laila et al. “Effects of β -caryophyllene, A Dietary Cannabinoid, in Animal Models of Drug Addiction.” Current neuropharmacology vol. 21,2 (2023): 213-218. doi:10.2174/1570159X20666220927115811
  10. Venkatakrishna, Karempudi et al. “ViphyllinTM, a Standardized Black Pepper Seed Extract Exerts Antinociceptive Effects in Murine Pain Models via Activation of Cannabinoid Receptor CB2, Peroxisome Proliferator-Activated Receptor-Alpha and TRPV1 Ion Channels.” Journal of pain research vol. 15 355-366. 5 Feb. 2022, doi:10.2147/JPR.S351513

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