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カリフォルニア州が、ヘンプ由来 CBD をめぐる規制のあやふやさと矛盾を解決するための大きな一歩を踏み出しました。食品医薬品局(FDA)が依然として無為無策のままである状況が続くなか、カリフォルニア州の決定は事実上、アメリカの全国標準となるかもしれません。

ヘンプ由来 CBD 製品の扱いについてカリフォルニア州政府が近ごろ制定した法律は、製造企業、販売業者、消費者すべてにとって、法的なグレーゾーンだったこれまでの状況を、ようやくある程度明確にするものです。

これまでは、混乱した規制状況により、カリフォルニア州の CBD市場を「無法地帯」と呼ぶ人もいました。

10月 6日、カリフォルニアのギャビン・ニューサム州知事は、ヘンプおよびヘンプ由来カンナビノイドを食品・飲料・化粧品・ペット用製品にカリフォルニア州内で使用することを認める議会法案45(AB 45) に署名。同時に製造者には、州に認可されたディスペンサリーで販売される、THC 含有量の高い大麻製品と同様の、厳格な検査とラベル表記のガイドラインに従うことが義務付けられます。

カリフォルニア州ではすでにヘンプ由来 CBD 製品市場が非常な活況を呈しており、2019年の売上高は 7 億 3,000万ドルにのぼります。これは他州と比べて 2.5倍の数字です。ただし AB 45 は、ヘンプ由来 CBD 製品を大麻製品のディスペンサリーで販売することは許可していません。少なくとも当面は、ヘンプ由来 CBD 製品と大麻由来 CBD 製品の市場は現在のまま区別されることになります。

カリフォルニア州カンナビス産業協会(CCIAはこの新法を歓迎していますが、いくつかの点については注意を促しています。CCIA の代表、リンゼイ・ロビンソンは声明の中で、この法案を起草したアギアル・カリー下院議員について、「大麻とヘンプを公平に扱いながら、カリフォルニア州の全住民の健康と安全を護る確固としたアプローチをとった」と称賛しています。

ただしロビンソンは、暗にこの法律の欠点も指摘し、次のように述べています——「AB 45は、カリフォルニア州におけるヘンプ製品の製造と販売について、長年の懸案だった包括的なフレームワークを提供するものではありますが、これで問題がすべて解決したわけではありません。今後、ヘンプを大麻製品のサプライチェーンに組み込む方法を確立するための法律の制定に向けて、議員と協力して尽力していきたいと思います」

混乱が遺したもの

CBD に関するカリフォルニア州の政策は、長い間混乱が続きました。2018年 7月、カリフォルニア州公衆衛生局(CDPHは、ヘンプ由来の CBD 抽出物をカリフォルニア州で「食品」に使うのは非合法である、という政策覚書を公布。使用が明確に許されるのは THC を 0.3% 以上含む大麻草から抽出されたものだけで、認可されたディスペンサリーのみで販売されるヘンプ由来ではない高 CBD 製品は、CDPH大麻製品安全部門(Manufactured Cannabis Safety Branch)の監督下に置かれていました。

この覚書は混乱を悪化させるだけで、そのことはその文言からも明らかでした。CDPH は「ヘンプ」由来の CBD と「大麻」由来の CBD を区別していますが、実際には、ヘンプというのは単に、連邦政府が定義した、THC 含有量が 0.3% 以下の大麻草のことなのです。(高 THC の大麻に「精神作用」がある、という言い方にも異を唱える人がいます——人を酩酊させはしませんが、CBD にもまた気分を大きく変容させる作用があるからです。)

ただし、覚書は法律ではありません。この覚書は単に、現行の規制をより明確にすること意図した「よくある質問」に述べられているだけです。またこの覚書は、禁じられるのが食品に使用される CBD だけなのか、それともヘンプ由来の CBD 全般なのかが明らかではありませんでした。

カリフォルニア州カンナビス産業協会のためにロビー活動を行うと同時にサクラメントに拠点を置くプレシジョン・アドボカシー(Precision Advocacy)社の代表であるエイミー・オゴーマン・ジェンキンスはこう言います——「その点は曖昧なままで、特に食品と飲料については、規制の施行は散発的で一貫性がありませんでした」

法の施行における一貫性の欠如

2018年 12月には連邦政府の農業法によって、THC を 0.3% 以上含む大麻草から抽出される CBD は禁じられたままヘンプ由来の CBD が合法化されましたが、カリフォルニア州政府による規制には変更が加えられませんでした。つまり、「ヘンプ」由来の CBD 製品は非合法、「大麻」由来の CBD 製品は合法、というカリフォルニア州の規制は、見たところ連邦政府による規制と対立していたのです。

「大麻」由来の CBD が、州によって認可されたディスペンサリーで引き続き販売されている(Headset社によれば 2019年の売上高は 2億 1,700万ドル)一方、法的規制のないヘンプ由来の CBD は、他の州と同じように、コンビニ、食料品店、ガソリンスタンドなどに置かれていました。ただしヘンプ由来の CBD 製品は一般に、州外で製造され、事実上野放しの状態で販売されていたのです。

バンナイズにある大麻製品の試験ラボ CannaSafe Laboratories が 2019年に行った調査によれば、検査した 20製品のうち、表示された通りの CBD の量が含まれていた製品は 15% にすぎず、多くの製品に混入物が認められました。特に目立ったのはベープ製品に含まれる溶剤でした。州当局の警告に従って、カリフォルニア州の小売店の多くがそうした製品の販売を取りやめました。

カリフォルニア・ヘンプ審議会(California Hemp Council)の議長であり、Ojai Energetics というCBD 業者の CEO でもあるウィル・クレイドンは、この規制状況の混乱ぶりを指摘します。南カリフォルニアのニューエイジカルチャーの中心地であるオーハイを拠点とする会社ではありますが、Ojai Energetics の製品は実際にはネバダ州で製造され、原料の多くはコロラドの栽培農家から調達されていました。

クレイドンは、カリフォルニア州の販売業者が直面してきた一貫性のない取り締まりを嘆きます。「結局は、それぞれの郡の当局が『よくある質問』をどう解釈するかにかかっているんですよ。CDPH が規則を作ることさえしなかったからです。法律をまったく施行しないところから全力で施工するところまで、バラバラなんです。小売店には郡当局の担当者が検査に来ます。うちとの取引を一切やめた店もあるし、うちの製品の販売をストップしたカフェもある。カリフォルニア州のどこからでもまだオンラインでは買えますが、扱いがなくなった小売店はあります」

AB 45 が制定された今、クレイドンの会社は、来季から、カリフォルニア州ベンチューラ郡で特別なヘンプの品種の栽培を開始するつもりです。ヘンプ市場に関するカリフォルニア州の新法についての懸念はいくつかありますが、AB 45 については良いところがたくさんあるとクレイドンは言います。「完璧を求めて進歩を妨げるわけにはいきません。全体として、ヘンプ製品がカリフォルニア州内で販売しやすくなるのなら、それは大きな前進ですよ」

Project CBD の問い合わせに対して CDPH は、当局の CBD 製品取り締まりは、「消費者からの苦情に対処することに主眼が置かれて」いると答えました。AB 45 の制定後に「CDPH がこの法律で取り締まった CBD 製品はない」そうです。CDPH は、「利害関係者と綿密に連携」し、この新法の内容を理解してもらって、「ライセンスの申請と認可の準備が整い次第、うまく制度を利用できるようにしたい」と述べています。

完璧ではないが進歩ではある

AB 45 が9月にニューサム知事による署名の段階になったとき、アギアル・カリー下院議員は Cannabis Wire に対し、自分が何年も前からこの法案を作ろうとしてきたのは、「カリフォルニア州で販売される、違法な、法規制による監督を受けていない CBD 製品が公衆衛生を脅かす危険についての懸念が高まった」ためであり、「知らないうちにこうした製品を長い間使ってきている有権者に、きちんと規制され検査された製品と、この新法がもたらす雇用や経済活動を届けたかった」からだと語っています。

CBD その他のヘンプ由来の成分あるいはヘンプの一部を、食品、飲料、化粧品に含ませることを認めるこの新法は、製造者が製品をカリフォルニア州公衆衛生局に登録することを明確に義務付けています。「ヘンプ由来の製品はこれまで通り一般の小売店で販売されますが、今後は検査と適切なラベル表示が行われ、厳格な広告基準に準ずることになり、消費者は自分が摂取しているものについてより正確な情報を得られるようになります」とエイミー・オゴーマン・ジェンキンスは語ります。

AB 45 は CDPH に、ヘンプ由来製品を押収し、販売停止し、回収させる権限と、検査を行う職権を与えています。経口摂取製品と皮膚に塗る製品は、この産業に関する主要なカリフォルニア州法である Sherman Food, Drug & Cosmetic Act の適用対象となります。AB 45 ではその他に、「大麻」に求められるのと同等の汚染レベル検査が義務付けられ、2017年に制定された Medicinal & Adult-Use Cannabis Regulatory Safety Act(MAUCRSAと同じ基準が適用されます。また、輸入されるヘンプ製品もカリフォルニア州の安全基準を満たすことが求められ、州外の施設には CDPH による立入検査を受けなければなりません。

MAUCRSA に含まれるオプトアウト条項により、カリフォルニア州内の地方自治体は大麻ディスペンサリーの営業を禁じることが可能で、現在、大部分の都市と郡(特に、住民の少ない農村地帯)は小売店での大麻の販売を禁じています。一方 AB 45 にはオプトアウト条項がなく、地方自治体が、州全土で合法なヘンプ由来 CBD 製品の販売を禁じることはできません。

頑ななファイアーウォール

AB 45 は、ヘンプ業界支持派や CBD 製品製造業者の望みのすべてを叶えたわけではなく、カリフォルニア州では依然として、ヘンプ市場と大麻市場の間には確固とした壁があります——少なくとも、今のところは。

業界で言うところの「混合使用」は今後も禁じられたままです。つまり、ヘンプ由来の成分は、高 THC 製品に使ってはいけないのです。そして、ヘンプ由来 CBD 製品は大麻のディスペンサリーでは販売できません。

ただし AB 45 は、カリフォルニア州の大麻管理局(Department of Cannabis Conntrol)に対し、2022年 7月までに、「ヘンプ由来のカンナビノイドを大麻のサプライチェーンに使えるようにすること」に関する報告書を、州知事と州議会に提出するよう要求しています。

オゴーマン・ジェンキンスによれば、アギアル・カリー議員は来年の早い時期までに、「ヘンプ由来カンナビノイドを大麻製品に使用することを許可し、ヘンプ由来製品を大麻ディスペンサリーで販売できるようにする」法案の制定に着手すると約束しています。

ただし、ヘンプ由来 CBD を認可制度による大麻製品の市場と統合させるためには、解決しなければならない難しい課題がたくさんあります。

  • ヘンプの栽培者と CBD製品の製造者は、大麻業界の足枷となっているのと同様の、厄介な税金や規制の対象になるのでしょうか?
  • 大麻製品の販売がカリフォルニア州内の多数の都市や郡で禁じられている一方、ヘンプ由来の CBD にはそうした制限がないとしたら、規制当局はどうやって、ヘンプ製品と大麻製品の生産者間の公平さを保つのでしょうか?
  • カリフォルニア州のヘンプ生産者が製品を州外でも販売できるのに対し、大麻製品の生産者にはそれができないとしたら、公平さは保たれるでしょうか?
  • ヘンプから抽出されたのではなく、工場で化学合成あるいは生合成された CBD にも規制は適用されるのでしょうか?

AB 45 はまた、喫煙できる CBD 製品(つまり、高 CBDTHC が少ない乾燥大麻)の販売を、そうした製品に課税する別の法律が議会で可決されるまでは禁じています。また、アルコール、タバコまたはニコチンを含む製品にヘンプ由来の成分を使用することも禁じている、と、National Law Journalに掲載されたこの法律の要約に書かれています。

Δ8 という抜け穴もなし

さらに AB 45 は、ヘンプの栽培を合法化した 2018年の農業法は有名な Δ9THC しか言及していないのだから Δ8 は精神作用はあっても合法である、と一部の CBD 業者が主張し、製品を販売する拠り所となっている「Δ8 という抜け穴」も塞ごうとしています。

AB 45 では、「THC またはそれに相当するカンナビノイド」という新しいカテゴリーを作っています。「原料が何であるかにかかわらず、Δ8-テトラヒドロカンナビノール、Δ9-テトラヒドロカンナビノール、Δ10-テトラヒドロカンナビノールを含むすべてのテトラヒドロカンナビノール」というのがその定義です。

今後また、いわゆる抜け穴を利用しようとする試みをあらかじめ防ごうと、CDPH には、この定義の中に、「カンナビジオール(CBD)を除き、CDPH が酩酊作用を有すると判断するすべてのカンナビノイド」を含める権限が与えられています。

これは、Δ8THC 製品を禁止した多くの州、そして Δ8 その他の合成 THC 類似体を非合法であるスケジュール I 物質に分類する連邦法とも一致する条項です。

2018年の農業法を金儲けのために曲解する無節操な業者が、合成 Δ8THC を通販で販売している状況で、そうした製品を禁止するという法律はどのように施行されるのでしょうか?

事実上の全国基準となるか?

カリフォルニア州がようやく、CBD をめぐる法的なグレーゾーンから脱却しつつある一方、残念ながら連邦レベルでは依然として混乱が続いています。2018年の農業法でヘンプ由来の CBD が合法化されたにもかかわらず、食品医薬品局(FDACBD 製品に関する規制の枠組みの公布を拒否し、CBD は肝臓に障害を起こすといった信憑性のない主張を繰り返しているのです。

FDA は 2020年に米下院歳出委員会に提出した報告書の中で、規制の枠組みのない CBD 製品市場にラベル表記が正しくない製品や汚染された製品が存在していること、またその他の危険性について警告していますが、FDA が批判の矛先としている CBD 市場を監督できずにいることこそが、そうした問題を存続させているのです。

2021年 8月、FDA は、自社の製品を健康補助食品として承認してほしいという CBD企業シャーロッツ・ウェブの要望を却下しました。その理由として FDA は、2018年にエピディオレックスが小児てんかんの発作を抑えるために処方される CBD 医薬品として承認されたことを挙げました。CBDFDA に承認された医薬品であるために、CBD を健康食品として販売することは許可できない、と FDA は主張するのです。

けれども CBD 製品は相変わらず全国的に販売され続けています。規制の枠組みは州レベルのものでしかなく、そうした枠組みがある州は(カリフォルニア州を含め)限られています。

とは言え、自動車の排出ガス基準の例に見られる通り、カリフォルニア州の市場規模の巨大さのゆえに、そこで制定された方針は事実上の全国的な方針となる可能性を持っています。カリフォルニア州が、連邦政府よりも厳しい排出ガス基準を行使する権利を主張したことで、州の権利をめぐる闘いが始まったのです——その相手は、トランプ政権を含む、連邦政府の権力を養護する偽善的な保守派の人々でした。

全米規模の活動組織である Vote Hemp の代表 エリック・スティーンストラは、AB 45 の制定を「カリフォルニア州のヘンプにとっての重要な瞬間」と呼び、「カリフォルニアで起こることは往々にして、他の州でも政策になる」と言っています。

この法律が制定されるまでの道程を振り返り、スティーンストラはこう述べています——「AB 45 を議会で審議させ、前進させるには3年かかりましたが、FDA は未だに手をこまねいています。カリフォルニア州の市場は全米最大であり、CBD 製品に関しては世界最大の市場です。ですから、FDA が何と言おうと、カリフォルニア州の市場を解放したというのは業界にとって非常に大きな勝利なのです」


ビル・ワインバーグ(Bill Weinberg)は、人権問題、環境、薬物政策の分野で30年の実績と受賞歴を持つジャーナリスト。High Times 誌のニュースエディターを務めたこともあり、現在は CounterVortex.orgGlobal Ganja Report というウェブサイトを運営している。


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