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樹脂が豊富な大麻草の花穂(バッズ)に薬効のある成分がたっぷり含まれていることは昔から知られていますが、大麻草は他の部位にも薬理活性のある成分が含まれており、大麻草の持つ健康効果を語る上で無視することはできません。

大麻の医療利用に関する最古の記録は、「桑と麻の国」と呼ばれた紀元前 2700年の古代中国に遡ります。麻はやがて、炎帝神農による世界で初めての薬局方『神農本草経』に収蔵されました。伝統中国医学の父とされる伝説的な神農は、お茶を飲むという習慣を人々に知らしめたことでも知られています。神農本草経が大麻の使用を勧めている病気は100を超え、痛風、リウマチ、マラリア、便秘、脚気、放心などが含まれます。

神農本草経の中で麻蕡(大麻)は、「不死をもたらす至上の薬」の一つとして長命と健康をもたらし、長期にわたって服用すれば「霊と通じ、体が軽くなる(久服スレバ神明トナリ、身ヲ軽クス)」。主に中心を補填し気を強め、長期に服用すれば肉付きよく、頑健となり、呆けることがない」と書かれています1

ただしあまり大量に摂りすぎると「鬼が見える」(多食スレバ人ヲシテ鬼ヲ見セ)とも書かれています。

健康の種

伝統的な中国医学では、タンパク質が豊富な大麻の種子が、食品として、また薬として重要な位置を占めていました。どうも、それらの方が花穂よりももっと重要だったようです。種子には CBD や THC その他のカンナビノイドは含まれませんが、現代科学によれば、大麻の種子は、健康なエンドカンナビ                                                             ノイド・システムを作る生化学的成分として欠くことのできない、オメガ3脂肪酸の原料として優れていることがわかっています。

『Nature Neuroscience』に 2011年に掲載された論文によれば、「オメガ3の欠乏は、内因性カンナビノイドが媒介する神経機能を破壊2」します。体内のオメガ3脂肪酸量の不足は、神経精神疾患や情動行動障害と関連があるとされています。

オメガ3の欠乏は、内因性カンナビノイドが媒介する神経機能を破壊します

私たちの内因性カンナビノイド——人間の脳や身体にある、カンナビノイド受容体 CB1 と CB2 およびその他の受容体に結合する、「マリファナ様の」化合物——は、実はオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の派生物または副産物です。これらは、人体には十分な量が産生できず、したがって体外から摂取する必要があるため、「必須」脂肪酸と呼ばれます。

ところが、典型的な欧米型の食事は、トウモロコシ、小麦、その他の穀物に非常に偏っていて、それらはオメガ6脂肪酸を豊富に含む一方、魚、木の実、葉物野菜といったオメガ3脂肪酸が豊富な食物はあまり食べません。この栄養学的な偏りが、さまざまな慢性病の大きな要因となっています。大麻の種子(ヘンプシードオイル、ヘンプシードナッツ、ヘンプシード・プロテインパウダーなどとして販売されています)には、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸が非常にバランス良く含まれています。

問題の根っこ

中国の伝統医療の医師たちはまた、大麻草の根からの抽出物を、感染症の治療や出産中の女性を助けるのに使っていました。根を煮て作る煎じ薬は、ティンクチャーやジュースとして経口摂取したり、湿布薬として局所に使うこともできました。

中国だけでなく、世界の他の地域でも、さまざまな疾患の治療のために、ハーバリストやヒーラーが大麻草の根から作った製剤を使っていました。西欧医学において大麻草の根の治療効果に最初に言及したのは、ガイウス・プリニウス・セクンドゥスの著作『Natural Histories(プリニウス博物誌)』(西暦77年)でした。そこには、「大麻草の根を煮たものは、関節のけいれんや痛風、その他の類似した激しい痛みをやわらげる」と書かれています。

大麻草の根には、抗炎症作用と鎮痛作用のある成分が含まれています。

種子と同様、大麻草の根には、THC と CBD の他、いわゆるマイナー・カンナビノイドはいずれも含まれていませんし、(大麻の花穂の生き生きとした香りの源である)芳香精油も含まれません。その代わりに大麻の根には、鎮痛作用と抗炎症作用を持つそれ以外の成分が含まれているのです。大麻草の根に特有の、さまざまなアルカロイドやステロールは、特筆すべき抗酸化物質です。大麻草の根のほか海藻や地衣類にも含まれている、フリーデリンというトリテルペノイドには、解熱作用があることがわかっています。

12世紀に書かれたペルシャの医学書には、大麻草の根の解熱作用について書かれています。また 1542年には、ドイツの医師レオンハルト・フックスが、ヘンプの根の抽出物で作ったパップ剤の、肌の炎症をやわらげる作用について、「生の根を叩き潰して巻くとやけどによい」と書いています。それから 100年ほど後には、イギリスの植物学者、ジョン・パーキンソンが、頭をはじめあらゆる場所の炎症を鎮めるためにヘンプの根の煎じ薬を使うことを勧めています。1653年に出版されたニコラス・カルペパーの『Compleat Herbal』にもまた、炎症の薬としてヘンプの根が言及されています3

ただし、大麻がバイオアキュミュレーターである、つまりその根が土壌から重金属その他の有毒物質を吸収できるということは忘れてはなりません。汚染された生態系をきれいにするためには素晴らしい性質ですが、人間が身体に取り入れる薬草を育てるのには相応しくありません。有害物質への暴露を防ぎ、健康効果を最大限にするためには、その大麻草がどこでどのように栽培されたものであるかが非常に重要であり、留意されなければなりません。

フラワーパワー

良質の大麻を栽培するのはものすごく難しいというわけではありませんが、ディテールにはよく注意を払う必要があります。丈夫で適応性が高く、ほとんど誰でも育てることができる大麻草は、ハイテクな栽培手法や、ある望ましい性質を突出させたりハイの性質を微調整したりするための洗練された育種技術を用いるのに適しています。適応促進であると同時に陶酔薬でもあり、驚くほど多様な香り・味・精神作用のニュアンスを持つ高品質な大麻の複雑さは、ワイン業界にも肩を並べるほどの芸術的な領域に達しています。

何よりも人に優しいバッズを育てられるかどうかは、最終的には「植物の性別分け」として知られる、古くからある園芸のやり方にかかっています。これはつまり、成長の早い段階で雄株と雌株を分け、授粉するのを防ぐということです。「シンセミラ(スペイン語で『種無し』という意味)」と呼ばれる、授粉していない雌株の花穂には、THC、CBD、万華鏡のように多彩な精油が溢れ、大麻は何よりもこれが特徴です。授粉ができない雌株は、無駄であるとも知らずなんとか花粉を惹き寄せようとして、ネバネバした香り高い樹脂をより多く含む大きなバッズをつけるのです。

近代植物学の父であるカール・フォン・リンネは、1753年の論文『Dissertation on the Sexes of Plants(植物の生物について)』の中でこのことに触れています。この著名なスウェーデン人学者は、自宅の窓辺での大麻の栽培を大変楽しみ、こう書いています——「4月にヘンプ(大麻)の種を2つの植木鉢に植えたところ、たくさんの芽が出た。植木鉢はどちらも窓辺、ただし別々の、離れた部屋に置いた。片方の植木鉢では、花が咲いて実がなるまで雄株と雌株を一緒に育てたところ、7月に種が成熟した。もう一方の植木鉢からは、雄株と雌株の区別ができるまで成長すると同時に、すべての雄株を排除した。残った雌株は良く育ち、長い雌しべをたくさんつけ、まるで結婚相手を期待しているかのように長い間咲いていた。授粉していない雌株が、雄の花粉を手に入れようとして、その長い雌しべを元気に伸ばしたまま長い間保っているのは、大変に美しく、壮観な眺めだった」4

大麻は「薬理的効果の宝庫」と呼ばれています。CBD と THC はこの宝庫でもいちばん大切な宝であり、医療大麻界のパワーカップルです。ただしその他にも、この輝くような雌株には、数十種類のカンナビノイド、テルペン、フラボノイドが含まれ、そのそれぞれに特定の癒やしの効果があって、それらが相乗的に作用しあいます。その結果、大麻草全草が持つ医療効果は、各部分の効果を足し合わせたよりもさらに強力なものになります。根っこから花穂まで、種をつけようがつけまいが、医療大麻で最も重要なのは、大麻草全草を使うことなのです。

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