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品揃え豊富な医療大麻ディスペンサリーに足を踏み入れるとまず、さまざまな大麻の品種が棚に並んでいるのに気づくでしょう。綺麗に整えられたピカピカのバッズ(花穂)が入っている数十個のガラス瓶。人それぞれ、お気に入りの品種があるはずです。OG クッシュ、ヘッドバンド、サワーディーゼル、フロー、レモンタイ、スーパーシルバーヘイズ…..。活動的にしてくれる品種もあれば、落ち着かせてくれるものもあります。痛みの緩和に効くものもあれば、インスピレーションを与えてくれるものもあります。

名前が何であれ、高THCの品種をほんの数回吸うだけであなたはハイになれるはずです。でも、それぞれの品種が持っている、その品種に固有の性質を決定づけるのは、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量ではありません。わずかに含まれるカンナビジオール(CBD)や、100種類ほどもある微量カンナビノイドが一番重要なのでもありません。医療大麻が合法な州で大麻栽培農家やディスペンサリーの依頼により製品サンプルを検査するラボによれば、わずかな例外を除くほとんどの品種にTHCはたっぷり含まれていますし、それ以外のカンナビノイドはほとんど検出できないほどの微量です。

テルペンと大麻が持つそれぞれの効果

品種にかかわらず、一般に大麻はTHCの含有量が多く、それ以外のカンナビノイドはほんの微量しか含まれていないのだとしたら、何がそれぞれの品種にそれぞれの特徴を与えているのでしょう? また、それぞれの品種にそれぞれ違った精神作用があるのは何故なのでしょう? 大麻を吸ったときの「ハイ」の感覚をそれぞれ違ったものにしている何かがあるはずです。

さまざまなハイブリッド種の基盤であるスカンク #1を作った育種の達人デヴィッド・ワトソン(David Watson)は、芳香成分であるテルペンが THC の作用に与える影響の重要さを最初に強調した人の一人です。テルペン(テルペノイドとも言います)とは、大麻草に含まれ、独特の香りを与えている成分のことです。THC その他のカンナビノイドには香りはありませんから、大麻のあの特徴的な香りは、どんなテルペンが多いかによって決まります。そして、テルペンと THC がどんなふうに組み合わさっているかによって、どんな精神作用を起こすかが異なるのです。

ワトソンと彼のビジネスパートナーであるロバート・コネル・クラーク(Robert Connell Clarke)は、1989年、大麻の植物学的側面と医療大麻の研究を専門とする HortaPharm というオランダ法人を設立しました。アムステルダムを拠点に、この2人のアメリカ人は、数千におよぶ大麻の品種の交配を繰り返し、大麻という植物の薬理学的研究に新たな境地を開きました。交配でできた品種の多くが破棄され、さらに開発するために選ばれたのは少数でした。

彼らはどうやって、残すべき品種を選んだのでしょうか? 「香りだよ」とワトソンは言います。

ワトソンはずっと以前から、大麻草の樹脂に含まれるテルペンが THC の効果を強めているのではないかと考えていました。HortaPharm 設立の10年後、彼はこの仮説を検証するための実験として、100% 純粋な THC と、THC の含有率は低いけれどテルペンが含まれる樹脂を吸ったときの感覚を比較しました。ワトソンほか数名の同僚たちの意見は一致していました—テルペンを含む、THC 含有率が乾燥重量で 50% の樹脂の方が、同量の THC のみの場合よりも強力だったのです。

テルペンの博物学

通常テルペンは、揮発性の高い微粒子で、非常に蒸発しやすく、良い香りがします。実はテルペンは、植物にとっても人間にとっても健康に良いものなのです。人気の代替医療の一つであるアロマセラピーは、これをベースにしたものです。香りのないカンナビノイドと同様、テルペンは油性の化合物で、大麻草の腺毛状突起(トリコーム)の中で分泌されます。テルペンと THC の先駆体は共通しており、ゲラニル・ピロリン酸からカンナビノイドとテルペノイドが生合成されて大麻草の花穂を満たします。

ただし、大麻草以外には存在しない THC その他の植物性カンナビノイドと違い、テルペンは自然界の随所に見られます。テルペンを生成する植物種は無数にあり、果物、野菜、ハーブ、スパイスその他、幅広い植物に含まれています。テルペンは人間の食べ物に含まれていることも多く、食品医薬品局によって、基本的に食べても安全であると認められています。

これまでの研究で、およそ2万種類のテルペンの分子構造が特定されており、これは植物化学物質の中では最大のカテゴリーです。テルペンはさらに、すべてのテルペノイドの構造的特徴である、炭素数が5のイソプレンと呼ばれる単位がいくつ繰り返されているかによって、モノテルペン、ジテルペン、セスキテルペンに分かれます。

大麻草に含まれるテルペンは 200種類以上あることがわかっています。

大麻草に含まれるテルペンは 200種類以上あることがわかっていますが、これらの香り高い油性の物質のうち、注目に値するほどの量が含まれているものはごく一部です。また、テルペンのプロファイル(何がどれくらい含まれているか)は品種によって大きく異なります。「大麻草のフレーバーの多様さは驚異的だ。大麻草が持つ香りや味のバラエティには、地球上のどんな植物も及ばない」。昔から伝わる在来種数種からトゥルー・ブルーベリーという品種を魔法のように作り出した育種の達人 DJ Short はそう言っています。

大麻草に含まれるテルペンは昔から、大麻草の進化に役立ってきました。この香りの強いテルペノイドが、昆虫や草食動物から、あるいは菌類から大麻草を護ってきたのです。鼻にツンとくるような刺激臭のあるものは昆虫や草食動物を寄せ付けませんし、真菌の繁殖を抑えるものもあります。大麻をオーガニック栽培している人は、病気や虫から大麻を護るため、テルペンをたっぷり含むニームやローズマリーのエッセンシャルオイルを吹きかけます。またテルペンは、実は人間の健康にも役立つものであることがわかっています。2011年9月にイーサン・ルッソ(Ethan Russo)博士が『British Journal of Pharmacology』誌に発表した研究は、特に大麻に多く含まれる数種類を含め、テルペノイドが持つ多様な治療効果について論じています。

大麻によく含まれているテルペン

  • α-ピネン(松の精油)は植物界で最もありふれたテルペンで、大麻草の多くの品種にも含まれています。気管支拡張作用があり、ぜんそく患者の役に立つ可能性があります。ピネンはまた、覚醒や記憶維持などの認識作用を促進する脳内神経伝達物質アセチルコリンエステラーゼの代謝を阻害することで、その効果を高めます。
  • ミルセンも、大麻の品種の多くに含まれています。鎮静作用、筋肉弛緩作用、催眠作用、鎮痛作用、そして抗炎症作用があります。ルッソ博士によれば、いわゆる「カウチロック[訳注:ハイになりすぎてソファーから動けない状態]」の大きな原因はこの、麝香のような香りがするテルペンです。
  • リモネンは大麻草のほか柑橘類に多く含まれるテルペンで、胆石を溶かしたり、気分を改善したり、胸焼けや胃食道逆流症の症状を緩和させるなど、医療の現場で以前から使われています。リモネンには抗けいれん作用があり、基礎実験では乳がん細胞を破壊したほか、強力な抗菌作用があり、病原菌を殺します。
  • リナロールは、いくつかの大麻の品種やラベンダーに多く含まれています。抗不安作用があり、不安感を打ち消しストレスを軽減します。さらに、リナロールには強力な抗けいれん作用があるほか、セロトニン受容体の信号伝達を増強して、抗うつ作用を発揮します。皮膚に塗ればニキビややけどを痕を残さずに治してくれます。
  • β-カリオフィレンは、ブラックペッパー、オレガノその他の食用ハーブや、大麻草、また多くの葉物野菜に含まれています。胃腸を護る働きがあり、ある種の潰瘍の治療に役立つほか、CB2と呼ばれる抹消カンナビノイド受容体と直接結合するので、炎症性疾患や自己免疫疾患の治療に有望です。

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Β-カリオフィレンと CB2受容体

THCは、免疫機能と末梢神経系を制御するCB2受容体にも作用しますが、大麻を吸ってハイになるのはそれが理由ではありません。ハイになるのは、THCが、脳と中枢神経系に集中しているCB1受容体と結合するからです。

CB2受容体は免疫機能や末梢神経系を調節します。

CB2受容体を刺激しても精神作用は起こりません。なぜならCB2受容体は主に、脳や中枢神経系でないところに発現しているからです。CB2受容体は、胃腸、脾臓、肝臓、心臓、膵臓、骨、血管、リンパ球、内分泌腺、生殖器官にもあります。大麻が非常に幅広い医療効果を持つのは、脳だけでなく、体のあらゆるところに作用するからです。

2008年にはスイスの科学者 Jürg Gertsch が、β-カリオフィレンと CB2受容体の親和性を実証し、「食べるカンナビノイド」と呼びました。β-カリオフィレンは、カンナビノイド受容体に直接結合する唯一のテルペンです(これが、葉物野菜が健康に良い理由の一つです)。テルペンであると同時に CB2受容体の作動薬でもある、という β-カリオフィレンの2つの顔は、大麻草に含まれるさまざまな成分の間には相乗効果があるということを浮き彫りにしています。大麻草には、カンナビノイド、テルペン、フラボノイドその他、400種類を超える化学化合物が含まれており、それぞれがある特定の医療効果を持っています。それらが組み合わさって全体としての「アントラージュ効果」を生むために、大麻草全草がもつ医療効果は、それぞれの成分の効果を足し合わせたよりも大きくなるのです。

その他にテルペンにできること

テルペンの中には、肺の毛細血管を拡張させて、喫煙あるいはベーピングした THC が血液中に入りやすくするものがあります。たとえば鎮静作用のあるネロリドールは、皮脂浸透剤として働き、痛みの緩和や皮膚の疾患のために局所的に塗ったカンナビノイド製品の吸収率を高める可能性を持っています。テルペノイドとカンナビノイドはともに血流を増やし、皮質活動を促進し、近年何万人ものアメリカ人の命を奪った MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)を含む呼吸器病原体を殺します。ルッソ博士の記事には、カンナビノイドとテルペンには「疼痛、炎症、うつ病、不安神経症、依存症、てんかん、がん、真菌および細菌による感染症の治療において相乗効果を発揮する可能性がある」と書かれています。

カンナビノイドとテルペンの相互作用は、大麻草の有益な効果を強めながら、同時に THC が引き起こす不安感をやわらげてくれます。

詩人(であり、ハシシの使用者でもあった)アルチュール・ランボーが「香気の散乱」と呼んだ、大麻草に含まれるさまざまなテルペンにはまた、もう一つ別の大切な役割があります。テルペンと CBD は、THC が持つ厄介な精神活性作用を弱めるのです。カンナビノイドとテルペンの相互作用は、大麻草の有益な効果を強めながら、同時に THC が引き起こす不安感をやわらげてくれます。

THC が優位の品種は使えない、という人もいますし、大麻によるハイな状態の、ゆったりとした高揚感を楽しむ人もいます。けれども、自宅の庭でオーガニックに栽培した、カンナビノイド、テルペン、フラボノイドがたっぷり混ざりあった大麻草の、香り豊かで抗酸化作用に優れた大麻草よりも、純粋な合成 THC であるマリノールの錠剤を自ら進んで選ぶ人はいないでしょう。

スケジュール IIIの規制物質として合法的に使えるマリノールの精神作用は強烈で、相当の大麻経験者でさえ少々頭がフラフラします。両方試した人はほぼ全員が、THC のみを服用する場合とテルペンその他の成分を一緒に服用する場合とでは後者の方が良いと言います。

テルペンの検査

2011年の夏、ロサンゼルスの Werc Shop が、大麻に含まれるテルペンの検査をする最初のラボになりました。Werc Shop が医療大麻を使う人々のコミュニティに向けてこのサービスを提供し始めてから今日までに、2万を超える検体でテルペン含有量の検査が行われています。分析の結果、名前が違う2つの品種がまったく同種・同量のテルペンを含有していることもありました。

Werc Shop の代表、ジェフ・レイバー(Jeff Raber)は、「テルペンの分析結果は指紋のようなものです。名前が違っても、同じ品種であればわかります。名前が違っていてもまったく同じテルペン・プロファイルを持っていれば、その2つは同じものであるとわかるわけです」と説明します。

またテルペンの検査によって、ある品種の名前が間違っている場合もわかります。「たとえば、トレインレック(Trainwreck)という品種を10回以上テストして、どれも同じテルペン・プロファイルを持っているとしますよね。それから、やはりトレインレックであるはずの検体を検査したら、他の検体とはかなり違うテルペンが含まれていた、ということがあるんです。テルペンを検査すれば、その品種が本当に、生産者が言っている通りのものであるかどうかがわかります」

テルペンとカンナビノイドの分析によって、さまざまな品種の遺伝系統を調べることも可能かもしれません。膨大な調査が必要ではありますが、大麻の家系図のようなものを作ることもできるかもしれません。

Werc Shop はまた、多数の大麻抽出物のテルペン含有量も検査しています。ただしレイバーによれば、大麻オイルを抽出する工程で原料に熱を加えると、テルペンは普通は破壊されてしまいます。テルペンは THC よりもかなり低い温度で蒸発してしまうからです。

さまざまな抽出方法には、それぞれに長所と短所があります。ヘキサンその他の有害な溶剤を使って抽出した大麻オイルには、有毒な残留物が残ってしまうことがありますし、超臨界 CO2 を使った抽出はクリーンではありますが、高価で複雑な機械と専門的な技術を必要とします。どちらの場合でも、大麻の医療効果を最大限に引き出すためには、製造メーカーが後からテルペンを追加する必要があるかもしれません。

将来、全米で大麻が合法になったときには、特定の品種から作られた大麻オイルや、ユーザー一人ひとりのニーズや要望に合わせてさまざまなテルペンを巧みに調合したオーダーメードの大麻オイルが手に入るようになるかもしれません。


Martin A. Lee は Project CBD のディレクターであり、『Smoke Signals』『Acid Dreams』『CBDエッセンシャルガイド』を含む数冊の著書がある。

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