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社会が大きな危機に直面している今、私たちは、医療科学と、公衆衛生の向上に人生を捧げた優れた研究者たちの存在がいかに重要であるかを考えずにはいられません。そこで私たちは、女性史月間を記念し、カンナビノイド科学の発展に大きく貢献した 10人の女性の功績を称えたいと思います。

アリーン・ハウレット(Allyn Howlett)博士は、1988年、人体に CB1 カンナビノイド受容体が存在するという画期的な発見をしたことで知られる先駆的な神経薬理学者です。ハウレット博士と、彼女が指導する修士課程の学生だったウィリアム・デヴェイン(William Devane)がセントルイス大学医学部で最初に発見した CB1 受容体は、哺乳動物の脳に最も多数存在するGタンパク共役受容体です。この発見によって、エンドカンナビノイド・システムに関する研究が次々と行われるようになり、ほとんどすべての医療科学分野に多大な影響を及ぼしました。ハウレット博士は現在、ノースカロライナ州ウィンストン・セーラムにあるウェイクフォレスト大学医学部の生理学および薬学部の教授であり、博士の研究室 Hawlett Lab では、新しいカンナビノイド医薬品の開発を進めるため、カンナビノイド受容体の活動を調節するタンパク質相互作用の研究を行っています。より詳しくはこちらから。


セシリア・ヒラード(Cecilia Hillard)博士は、ミルウォーキーにあるウィスコンシン大学医学部の研究担当副学部長であり、神経科学研究センターのディレクターとして、カンナビノイドと内因性カンナビノイドについての薬理学的・生化学的研究を行っています。ヒラード博士の研究は、カンナビノイドがどのように免疫機能を調節するか、また内因性カンナビノイドによる信号伝達が気分の調節やストレスに対する反応に果たす役割を理解するために大きな貢献を果たしました。医学生や若い科学者にとって素晴らしい師であるヒラード博士は、International Cannabis Research Society(ICRS)の特別功労賞をはじめとする数々の賞を送られています。現在、ICRS のエグゼクティブ・ディレクターを務めています。


ヘザー・ブラッドショー(Heather Bradshaw)博士は、インディアナ大学ブルーミントン校の心理学・脳科学部の准教授として、Bradshaw Lab of Lipid Neuroscience を率いています。ブラッドショー博士の研究は、内因性カンナビノイドとそれに関連する脂質分子が女性生殖器にどのような神経生理学的影響を及ぼすかということにフォーカスしたものです。子宮内膜症、慢性疼痛、神経炎症の動物モデルと、エンドカンナビノイド・システム内の脂質シグナル伝達の異常との関連性について研究しています。International Cannabinoid Research Society の代表を務めたこともあり、ジャーナルに掲載された論文は 60本を超え、また世界各地の大学やカンファレンスでの講義も頻繁に行っています。


アンドレア・ホーマン(Andrea Hohmann)博士はインディアナ大学ブルーミントン校の Gill Center for Biomolecular Science の代表です。神経因性疼痛およびエンドカンナビノイド・システムに関する世界屈指の研究者として、乱用の危険と有害な副作用のない新しい治療法の開発を目指しています。ホーマン博士の研究室は、非オピオイド性のストレス誘発鎮痛が内因性カンナビノイドの分泌によって媒介されることを示してみせました。疼痛伝達経路内にあるカンナビノイド受容体のマッピングのほか、カンナビノイドとオピオイド系鎮痛薬の併用がもたらす効果の可能性についても研究しています。博士のチームの研究によれば、CB2 カンナビノイド受容体を活性化することで、オピオイド耐性がつくのを防ぎ、離脱症状を軽減させることができます。


クリスティーナ・サンチェス(Christina Sánchez)博士はスペインの分子生物学者で、カンナビスをがんの治療のために使用する研究の最前線にいます。マドリッドにあるコンプルテンセ大学で博士が行っている先駆的な研究では、テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)が持つ抗腫瘍作用と抗増殖作用が実証されています。サンチェス博士は、カンナビノイドが健康な細胞を傷つけることなくがん細胞を破壊することをいち早く報告した最初の科学者の一人です。THC と乳がんに焦点を当てた最近の研究は、全草抽出の大麻オイルが持つ治療効果について蓄積されつつある多数の研究の一つです。


メアリー・アブード(Mary Abood)博士は、フィラデルフィアのテンプル大学で解剖学と細胞生物学の教鞭を執っています。博士の研究所は、CB1 受容体と CB2 受容体のクローンを作り、カンナビノイド受容体による信号伝達の分子レベルのメカニズムを解明しました。博士のチームは、カンナビノイドが興奮毒性と神経変性疾患(たとえば ALS)の治療に果たす役割について、多数の論文を発表しています。最近は、新たなカンナビノイド受容体のサブタイプの特定に力を注いでいます。そしてそうした研究が、炎症、代謝、細胞恒常性を調節する、GPR18、GPR35、GPR55 その他、一連の「オーファン受容体」の発見につながったのです。CBD、THC、そして内因性カンナビノイドは、これらのオーファン受容体に結合します。


パトリシア・レッジョ(Patricia Reggio)博士は、計算化学とコンピュータ援用薬品設計の分野の第一人者です。レッジョ博士が率いるノースカロライナ大学グリーンズボロ校の研究チームは、受容体のシグナリングを変化させる「アロステリック」結合部位を含む、カンナビノイド受容体の活動の構造的基盤解明の最前線にいます。博士のチームはこれまでに、新たに発見されたオーファン受容体に作用する内因性リガンドを特定しています。レッジョ博士の研究の主要なフォーカスは、薬品設計を目標とした、計算化学を用いた生物分子モデリングです。


リンダ・パーカー(Linda Parker)博士は、オンタリオ州にあるグエルフ大学の心理学部と Collaborative Neuroscience プログラムで教鞭を執り、また行動神経学の Canada Research Chair(訳注:カナダ政府直属の研究専門の教授ポスト)でもあります。『Cannabinoids and the Brain』(2017年、MIT Press 刊)の著者であり、International Cannabinoid Research Society の特別功労賞も授与されています。パーカー博士の研究所では、医薬品の薬理学的特性の変化に関わる神経作用の研究が、人間の悪心と嘔吐の制御への活用を目指して行われています。博士のカンナビノイド研究は、心理学、薬学、神経生物学という従来の境界を超越して、学習、感情、疾病、依存症の過程を明らかにしようとするものです。


ミシェル・グラス(Michelle Glass)博士は、ニュージーランド、オタゴ大学の薬学・毒物学部長です。グラス博士の研究は、カンナビノイド受容体の発現、機能、分子薬理学的側面と、神経変性疾患の治療に果たし得る役割にフォーカスしています。グラス博士のチームは、合成カンナビノイドが毒性を持ち、ときには使用者を死に至らしめるその作用機序を明らかにしています。ICRS の代表を務めたことがあり、ニュージーランド政府が医療大麻製品に関する規格を制定し施行するのを助ける Medical Cannabis Research Collaborative の会員でもあります。


シアーシャ・オサリバン(Saoirse O’Sullivan)博士は、カンナビノイドの薬理学と、大麻由来製剤の治療能を専門に研究しています。以前はイギリスのノッティンガム大学で准教授として、細胞モデルと動物モデルを使った研究、またボランティアを対象とした研究や初期段階の臨床試験も行っていました。オサリバン博士が特に詳しいのは、CBDその他のカンナビノイドが心臓血管系と消化器系に与える作用です。2016年、ICRS によりその年の最優秀若手研究者に選ばれ、2017 年には CanPharmConsultingという自身の会社を創業しています。


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