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大麻を大麻たらしめるものとは何なのでしょうか。大麻草の香りと、それを摂取したときの生理作用は主に2つの要因で決まります——含有される各種カンナビノイドの比率と、テルペンの内容です。ある製品に特有の使用感をもたらし、無数にある選択肢の中からある製品を選択するために、この2つの要因は非常に重要です。でも、大きな違いも微細な違いも含め、こういった違いはいったいどこから来るのでしょうか? 最新の研究は、見過ごされがちなある要素の重要性を示しています——栽培方法です。

テルペンとカンナビノイドのプロファイル(含有されている種類とその量)の違いは通常、遺伝子によるものと考えられています。親にあたる品種からの特徴を受け継ぐ個々の栽培品種は、遺伝性の素因によって決まる主要なテルペンの種類にしたがって、大きなカテゴリーに分類されます。たとえば、カリオフィレンとリモネンが優位な品種なら「デザート」、オシメンが優位なら「トロピカル/フローラル」、テルピノレンが優位なら「ジャック/ヘイズ」というように。あるいは、カンナビノイドのプロファイルによって、「高 THC」「高 CBD」または「THC-CBD 均衡」と分類することもできます。

参考にはなりますが、このような、品種や遺伝的性質に基づいた分類方法は、ある大切なことを見過ごしています。その大麻草が実際に栽培された環境です。『Molecules』誌に掲載された最新の論文は、同一の遺伝子を持つクローンが、「自然な環境」で栽培された場合と「人工的な環境」で栽培された場合とで、テルペンおよびカンナビノイドの両方の産生量が有意に異なったと述べています。また、屋内栽培の場合の照明の違いによっても同様の結果になることを報告した論文もあります。

合法市場において大麻の栽培がどんどん商業化していくなか、大麻「通」の人たちが昔から主張してきたことが、科学によって証明されようとしています——素質だけではなく、どうやって育てるかも重要なのです。

栽培実験

2023年 1月に『Molecules』誌で発表された研究 は、ニューヨークのコロンビア大学の研究チームが、北カリフォルニアの3つの大麻企業の代表者——ハンボルトにある Huckleberry Hill Farms の John Casali、Moon Made Farms の Tina Gordon、そしてノバートにある Cosmic View の Christine Skibola ——と協力して行ったものです。

著者らは、レッド・ベルベットとチータ・ピスという2種類の品種から、遺伝学的に同一である大麻草を6本ずつ取り、それぞれ3本は屋外で、3本は室内で育てました。屋外栽培の株は、天然の「生きた」土壌と堆肥を混ぜてつくった揚床(土を盛り上げて周囲より高くしたもの)に植え、日当たりの良いところで育てました。一方屋内栽培の株は、特許を取った培養基に植え、人工照明で育てました。

収穫の際、筆者らは、形態と大きさが似ている株の、上から三分の一以内の花穂を選びました。次に、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)を使ってテルペンの含有量を、超高速液体クロマトグラフ質量分析(UPLC-MS)を使ってカンナビノイドの含有量を測定しました。

テルペンの多様性

その結果、思った通り、室内栽培と屋外栽培ではテルペンとカンナビノイドのどちらも大きな違いがありました。テルペンは、リモネン、β-ミルセン、β-カリオフィレン、α-フムレン、α-ベルガモテン、α-グアイエン、そしてゲルマクレンB の含有量が屋外栽培のものの方が多く、これは両品種とも同様でした。特にレッド・ベルベットでは、屋外栽培株で最も多く含まれていたのはセリナジエンと呼ばれるセスキテルペンで、これはカリフォルニア州で認証を受けた検査ラボでの検査が義務付けられているテルペンの中には含まれていません。

屋外で栽培された大麻は、同じ遺伝子を持ち室内栽培された大麻と比べ、より多様なテルペンを含んでいた。

「この調査結果で重要なのは、屋外栽培株の方が、同じ遺伝子を持つ室内栽培された株と比べ、より多様なテルペンを含み、また含まれるテルペンの量も多かったということである」「さらに屋外栽培株は、室内栽培株よりもセスキテルペンが多かった」と論文の結論には書かれています。

屋外で栽培された大麻は、同じ遺伝子を持ち室内栽培された大麻と比べ、より多様なテルペンを含んでいた。

大麻草に「固有の」カンナビノイド、つまり、環境に対する反応としてではなく大麻草の生物学的経路によって産生されるものについては、調査の結果はもう少し複雑でした。たとえば、カンナビゲロール酸(CBGA)やカンナビジオール酸(CBDA)の量は室内栽培と屋外栽培であまり差がなかった一方、カンナビクロメン酸(CBCA)は屋外栽培の方が若干多く、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)の場合は、特にレッド・ベルベットでは屋外栽培の方がわずかに少なかったのです。また屋外栽培された大麻草には、THCA の派生物で、精神作用があり、若干の不安感を引き起こす可能性があるテトラヒドロカンナビブトール酸(THCBA)もより多く含まれていました。

室内栽培と屋外栽培のより明確な違いは、4つの主要なカンナビノイドの酸化と劣化に関連するもので、カンナビノール(CBN)、カンナビエルソン酸(CBEA)、カンナビシトラン(CBT)異性体 1 その他の「付帯的な」カンナビノイドが、室内栽培株では大幅に多く含まれていました。著者らは、この理由は明らかではないとしながらも、テルペンの産生量が少ないことに起因するのではないかと推測しています。

「植物におけるテルペンの機能の一つは酸化を防ぐということである。室内の、管理された環境で栽培された大麻草では、テルペンの産生量は多くなく、したがって、花穂を酸化から護る働きが弱い。室内栽培された大麻草に、酸化・劣化の結果であるカンナビノイドが多く見られたのはこれが原因である可能性がある」と論文は述べています。

Related Story: テルペンの医療効果

太陽の光

そもそもこの研究は、大麻の栽培にまつわるすべての変数について解析するために設計されたものではありません。たとえば、「生きた土壌」と「人工の培養基」に含まれる養分や細菌の違いは計測されませんし、あたる光の質や時間が比較されているわけでもなく、「太陽光」であるか「人工光」であるかの違いがあるだけです(ただし、室内栽培について最近行われた別の研究から、光のスペクトラの違いだけでもテルペンとカンナビノイドの産生に影響することがわかっています)。しかも、この論文の著者のうち3名は、屋外栽培された大麻あるいはそれを原料とする製品を販売する会社の人です。

そうした限界はありますが、それでもこの研究は、屋外栽培に伴う特定の条件が、テルペンの産生に向いており、カンナビノイドの劣化を防ぎ、室内栽培の場合とはちょっと違うものの決して悪くない主要カンナビノイドのプロファイルを生む傾向にある、という、かなりしっかりした証拠を示しています。そしておそらくはそれだけで、大麻について、それがどんな遺伝的特徴を持つかだけでなく、どのように栽培されたかを知りたいと思うには十分なのです。


Nate Seltenrich は、サンフランシスコのベイエリアに住む科学ジャーナリスト。環境問題、神経科学、薬理学を含む幅広いテーマについて執筆している。


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脚注

  1. Zandkarimi, Fereshteh et al. “Comparison of the Cannabinoid and Terpene Profiles in Commercial Cannabis from Natural and Artificial Cultivation.” Molecules (Basel, Switzerland) vol. 28,2 833. 13 Jan. 2023, doi:10.3390/molecules28020833
  2. Morello, Victorio et al. “Light Quality Impacts Vertical Growth Rate, Phytochemical Yield and Cannabinoid Production Efficiency in Cannabis sativa.” Plants (Basel, Switzerland) vol. 11,21 2982. 4 Nov. 2022, doi:10.3390/plants11212982
  3. Reichel, Philipp et al. “Impacts of Different Light Spectra on CBD, CBDA and Terpene Concentrations in Relation to the Flower Positions of Different Cannabis Sativa L. Strains.” Plants (Basel, Switzerland) vol. 11,20 2695. 13 Oct. 2022, doi:10.3390/plants11202695

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